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第4話 機工師

ここはおそらくケラウノス国付近の郊外であろう。

辺りは荒れ果てた砂漠地帯となっており、今にも崩壊しそうな廃工場や廃墟、その跡地などが点在している。

そこでは人の姿も全く存在せず、正にゴーストタウンそのものである。




風は小さな砂嵐を巻き上げ、その真っ只中にリドレイはいた。

彼が着ている囚人服は元々白色であったはずだが血痕跡と砂ぼこりで赤黒くなっている。


リドレイは徐に歩き始めた。


「きゃああああっ!」


どこからか女性の叫ぶ声が聞こえた。

リドレイは急ぎ辺りを見渡すが女性の姿は見えない。


すると廃工場から一人の巨体な男が出てきた。


「大丈夫だ、誰もいないぜ」


すると次にもう一人の男が女性を連れて出てきた。


「ずっと探していたぜ、機工師さんよ」


そう言うと男は女性の首を片手で締め上げた。


「うっ!やめ…てっ!」


女性は悲痛な表情をし必死に抵抗しようとする。


「例の物さえ渡せば離してやるよ!おらっ!早く在処を言えってんだ」


「やめろっ!」


一喝したリドレイが彼らの間に現れた。

その姿を見て驚いた男は女性の首を離した。


「ごほっ!ごほっ」


女性は細い首を手で押さえると逃げようとした。


「待ちやがれっ!このアマっ!」


巨体の男がすぐさま女性の手を掴み抱き寄せる。

するともう一人の男が言った。


「まさかお前…あのメンタップの差し金か?」


「メンタップ?」


リドレイには男が何の事を言っているのか全く分からないでいた。

その事よりも彼は男の異様な容姿に目が留まっていた。

背丈はおよそ180cm程だろうか。

右手と左脚には義手義足なのか、精巧な機械のようなもので

造り上げられている。

それぞれは身体に繋がれており時折、小さな電子音が聞こえてくる。


巨体な男も似たような容姿でただ違う箇所と言えば右手に巨大な斧を持っているところだ。

男の左目には眼帯に突出レンズが取り付けられている。

男はそのレンズの先端に付いている調整機具を回すと言った。

「サヴァルタの囚人か?…メンタップの奴ぁ気でも狂ったか」


男はリドレイの姿を再確認するとリドレイへゆっくりと近づいていく。


「サヴァルタっていやぁ化け物の宝庫らしいじゃねえか!」


サヴァルタは人工創造種の名産地であり国家の間では有名である。

そう言い放つと男はリドレイを舐めるように見回す。


「お前はどんな化け物なんだよ?」


「俺は化け物なんかじゃない!」


男を睨みつけるリドレイ。

しかし男の表情は笑みを浮かべている。


「ほ~う、じゃあその血は何だ?見たところ怪我はしていないだろ?」


リドレイは自分の服に付着した血痕跡を見た。


「仮に…」


そう言うとリドレイは一気に男の目の前へ駆け寄る。


「仮に化け物だとしたら何だっていうんだ!!」


するとリドレイは男の1m付近で急に立ち止まった。

何故なら巨体の男が手にしている斧の刃がリドレイを寸前で捉えていたからである。


「おっと!迂闊にガラド様に近づくんじゃねぇ」


巨体の男は片手で軽々と斧を構えている。

背丈はおよそ2m半といったところか、彼と斧の長さにさほど変わり映えはない。

その巨斧は到底、常人が片手で持てる代物ではない。


「よせ、バリアン!まず確認しておきたい事が一つある」


「何だ?」


「メンタップの野郎をお前は本当に知らないんだな?」


「ああ、見た事も聞いた事もない奴だ」


ガラドと呼ばれた男はリドレイの表情を伺い始めた。

対するリドレイは表情を一切創る事なく敵意さえ感じるその顔でガラドを見ていた。


「ふっ…」


ガラドは軽く笑うと片手で巨斧を下へ退ける。

するとバリアンを横目で見て言う。


「サヴァルタの化け物は凶暴だと聞く。お前こそ迂闊に喧嘩を買うんじゃあない」


「悪ぃ悪ぃ」


やや困った顔をしたバリアンはその巨斧の柄頭を地面に突き刺した。


お互い戦う意志が無い事を確認したリドレイは言う。


「お前らこそ、何故そんな格好をしている?」


ガラドはまたも笑みを浮かべながら言う。


「ははっ!俺らの事知らないのか?」


リドレイは真剣な表情で頷く。

すると彼はバリアンの片手に抱き寄せられている彼女を見て言った。


「何故彼女を狙っているんだ?」


再びバリアンが巨斧を構えだした。


「質問の多い野郎だ!」

またかと呆れたガラドが間に入る。


「止せと言ったろ、バリアン」


「す、すまねぇ」


ガラドは頭を2度軽く掻きリドレイに言う。


「ま、メンタップ知らずのサヴァルタ民なら説明してやってもいいか…」


突然、憎しみの表情をしたガラドが彼女に指を差しながら言った。


「こいつらのせいなんだよ!俺らがこんな姿になったのはな!」


彼女が声を上げ言い返した。


「違うわっ!私達は只あなた達を助けようと」


バリアンは彼女が喋れないように口を手で覆った。


「黙って聞いといた方がいいぜ、姉ちゃん」

ガラドは気を取り直してリドレイを見て言った。


「少し前までここら辺は盛況な街並みだったんだよ…丁度あんたの住んでる所みたいにな」


今や名前さえ呼ばれなくなっていたこの街はかつてナハートと呼ばれていた。

ケラウノス国の中でも上位に入る程に鉄工業が盛んで有名な街であった。


「それをお前ら鉄工師が全て奪い去りやがった…資源も家族も何もかもな!!」


ガラドはそう言うと鉄工師と呼んだ彼女を睨みつけ語り出した。




確かにガラドの言う通りだった。


数年前…。

ナハートという街は鉄工師と呼ばれる集団に荒らされた。鉄や鋼とありとあらゆる資源は鉄工師に強奪され街は再生不可能なまでに達した。

ナハートの住民達は町長らに助けを求めたが一切聞き入れられてこなかった。

町長はケラウノス政府が鉄工師と裏でつながっていた事を知っていた。

しかし住民を助け彼らの邪魔さえすれば自分の命が危うくなると重々承知していたのである。

鉄工師はやがてナハートの住民までも拉致しだした。

住民らは一度殺された後、鉄工師によって強奪した鉄や鋼で改造され"メタルアシスター"と呼ばれる局地型戦闘用兵器として生まれ変わってしまうのだった。

次第に鉄工師自体は街を荒らす事なくメタルアシスターが彼らの手足となって働きだした。

一人襲われメタルアシスターに姿を変えまた一人、また一人と…。

結局、資源も人も底を着いたナハートは廃墟の街と化したのだった。




ガラドはリドレイの方へ振り返り半ば呆れ笑いで言った。


「驚きだろっ!これでも俺らは一度死んでるんだぜっ!それをこの女は…」


ガラドは再び彼女の首を締め出した。


「うううぅぅっ!!」


彼女の目はいきなりの苦しみのあまり上を向いた。


「この鉄工師様々の大した腕前で蘇らせてもらったってわけなんだよ!」


「やめろっ!!」


リドレイが彼女の首を締めているガラドの片手を強く握り締めた。


「ぐっ!…大した力じゃないか化け物!!」


ガラドの義手でない方の手がリドレイの剛力によってミシミシと骨の軋む音を立てた。


「ぐあああっ!」


鋭い痛みがガラドを襲うと同時に彼女の首から手を離した。


「ガラド様っ!!」


バリアンは驚きのあまり彼女を抱き締めていた片手の力を緩めた。


その一瞬の隙に痛みと苦しみを耐えながら彼女は廃工場へと全力で走り出した。

「待ちやがれ!女っ!!」

ガラドは廃工場へと逃げ出した彼女を追い、その後を続くようにリドレイもガラドの後を追う。


しかし…。


「待ちな…」


「!!」


「お前はここでお留守番だぜ」


リドレイの目の前に山の如く立ちはだかったのはバリアンである。

やっと両手が解放されこれでもかと言わんばかりに巨斧を頭上で振り回す。


「お前は気に食わねぇ!ここでくたばれ」


そう言うとバリアンは巨斧を構えると同時に彼の全身に装着している機械の電子音が高鳴る。

相反するリドレイも武器を持たずに構えるとバリアンは笑う。


「武器無しか!手加減してやるからかかってこい」


しかしまだバリアンは知らない…リドレイの奥深くに眠る"ノスフェラトゥ"の姿を…。


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