表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の狭間で ~between the Worlds~  作者: ANEKT
プロローグ
1/4

覚醒

 真っ白な世界。

 何処までも白く、何もない空間。

 全てが白く地と空の境界線すらわからないほど。


 そんな白一色しかないはずの世界に、一つの大きな闇が広がっていた。

 真っ白な半紙に墨汁をこれでもかというほど垂らしたかのような黒。


 ……そして一人の少女が膝を抱え俯いたまま、闇を前にただ座っている。

 一切の動きがない状態で。それこそ死んでいるかのように。


 真っ白なその空間に澄んだ音が響く。


「……時間か」


 少女は覚醒する。

 透き通るような肌を持ち、自らの存在している真っ白な世界に溶け込むかのような純白の衣を纏うその少女は、その世界には対照的な黒髪をたなびかせながら立ち上がる。


 少女の眼前には大きく、底の知れない漆黒の闇が広がっている。

 その場に佇む少女は、闇に向かって呟く。本当にこの少女から発せられたのかと疑いたくなるほど、とても普通の少女とは思えない、低く落ち着いた声で。


「あれから10年か……。我々にとって10年など、ほんの一瞬と同義でしかない。しかし、……」

 僅かばかりの沈黙が流れる。その先の言葉を続けるべきかどうか逡巡するかのように。

 しかし、言葉は紡がれる。

 ……闇の中に沈む、もう一人の少女へと。


「……しかし、この10年は長かった。今までに感じたことの無いほどに」

 声は闇に吸い込まれ、そして消えていく。


 少女の言葉は何かを決意したかのように、淀みなく続く。


「もはやこれ以上待つことに意味はなくなった。ついに賽は投げられたのだ……」


 少女が闇さえも打ち消さんばかりのまばゆい閃光に包まれる。そして、ふわりと宙に浮きあがった。

 闇に沈む少女、それに対して光に浮き上がる少女。

「私は本当に非力だ」

 自嘲めいた笑みを浮かべながらそう囁く。

「だが、必ず取り戻してみせる。それまで……」


 刹那、少女は真っ白な世界より消え去った。

 あとに漆黒の闇と、のまれる少女を残して。

4/4.2012 改題(サブタイトル)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ