Drama★Two Fall among Dramaclub.
彼を見つけた男の眼は、まるで標的を見つけた死神の様に恐ろしい眼光を放っていた。
そのまま彼に近付くなり、男は簡単に彼を左肩に担ぎ上げた。
「ちょっと付き合え!!」
「え??
ちょっとぉお!?!」
明らかに男は同意を求めていない。
命令している、と直感的に彼は悟った。
男は彼より少し背が低く(彼の背は177cm)、細身だった。
少なくとも簡単に彼を担ぎ上げるコトが出来るとは、その外見から想像しにくいだろう。
男が向かっていたのは、“演劇部”と表示のある部屋だった。
途中何人かの生徒や教師とすれ違ったが、全員が短い悲鳴を上げたり顔を青くしたりして、顔に恐怖を見せ男を避けた。
この反応から、男はこの高校の生徒で、この高校の人達全員が男の驚異的な身体能力を知っているのだと想像した。
しかし、何故男が演劇部部室に来るのかがわからなかった。
彼が、もしかすると男は演劇部に何か恨みを持っていて、昨日あの現場に居合わせた彼を実は喧嘩が強いと思い、演劇部潰しに付き合わせようと思っているのか、と恐ろしい想像をしたその時、
彼を担いだまま男が部室のドアを開け放った。
そこにいたのは、彼と同じく1年生で同じクラス、頭脳明晰、容姿端麗、学級委員長を務める、
湍 利恵歌
だった。
彼女は真面目で、生徒のみならず教師にも評判のいい生徒だ。
男には存在自体が気に入らないのかもしれない。
そう思っていた彼の想像を遥かに越えた言葉を、男は発した。
「おう、リエ。
部員候補見つけたぜ。」
ニヤリと悪魔の笑いを浮かべて、彼女に言い放つ。
「ありがと、イチ。
じゃあ入部届にサインしてもらわないとねv」
彼女もまた悪魔の様な笑いを浮かべながら、彼に入部届を差し出す。
「はい。」
彼は彼女がこんな笑いをするなんて、思いも寄らなかった。
あの優等生の彼女が、この男と繋がりがあるだんてコトも知らなかった。
「顔はイイから、入部させといて損はねーだろ。」
彼は、死神とか悪魔とかその類の者に好かれてんじゃないかと思った。
こんな男と関わっていたら、それこそ命がいくつあったって足りない気がする。
「さっさとサインしろ。
今すぐ出してくっから。」
ほとんど脅迫だと思うのだが、そんなコトを言ったり出来ない彼は、入部届にサインせざるを得なかった。
「じゃ、よろしくねイチ。」
彼のサインした入部届を男に差し出す彼女。
「ああ。
こいつまだどの部活にも入ってねーから、退部届出さねーで済むしな。」
彼女から入部届を受け取り、男は部室を出て行った。
直後、来た時と同じ様に短い悲鳴が聞こえた。
部室に彼女と二人きりの状態になる彼。
「よろしくね、颯中光次君v」
さっきの男もそうだが、どうして彼の情報が彼女に行っているのだろうか。
かくして、彼、颯中光次の部活は“演劇部”に決定したのである。