Drama★One Devil
時は1日前、午後9時30分。
光次は友人の家から帰る途中、その体質故か、“一般人は余り遭遇したくない現場”に遭遇してしまった。
彼自身も自覚済みだが、一体運を何処で使い果たしてしまったのか、とつくづく思う始末である。
金髪や何だかわからない色の髪をした不良達が、喧嘩をしていたのだ。(もちろん殴りあり、蹴りあり、凶器あり、の乱闘である。)
割と大人しい彼は、その現場から一刻も早く立ち去ってしまいたかった、……のだが、つくづく運のない彼は、運悪く蹴りを喰らって飛んで来た不良に直撃された。
「いって……。」
しまった、と思った時にはもう遅く、声を発したがために不良達の痛い視線(睨んでいるのだろう。)を全身に浴びることになった。
なるべく眼を合わせない様に視線を横にずらす。
“揉め事には関わらないのが1番。”と何度も心の中で繰り返しながら立ち上がり(不良の直撃を喰らった時に後ろに倒れた。)、その場から退散、と、運のない彼に上手くいく筈もなく、不良の一人に声を掛けられ(いや、インネンをつけられ)てしまった。
「おいテメー、
俺等暴力団の対決に割って入るなんて、いい度胸してんじゃねえか。」
不良だと思っていた人達が暴力団員だったとは、彼はもう神様に嫌われているとしか思えなくなっていた。
何を言ったらいいのやらパニックに陥っていた彼に助け舟を出すかのように、金髪の男が口を開いた。
「対決?
こりゃ対決だったのか?!笑えるなあ!!」
その瞬間、この場にいた彼と金髪男以外の全ての者の視線が怒りのモノに変わり、金髪男に向けられた。
どうやら金髪男v.s.暴力団の対決(金髪男に言わせれば対決ではない。)だったらしい。
一人v.s.多人数で勝ち目があるとは思えない、などと考えている彼は、金髪男v.s.暴力団v.s.彼にたった今までなっていたコトに気付いていなかった。
「対決以外に何だっつーんだよ!!
何処まで俺等を侮辱すりゃ気が済むんだ……!!」
再び乱闘が始まってしまった。
もはや彼は蚊帳の外なので今の内にとっとと退散すればいいのに、彼はその場に呆然と立ち尽くしていた。
何故なら彼は目の前の光景に驚いていたからだ。
金髪男は一発も攻撃を喰らうことなく、次々と暴力団員を気絶させていく。
その身体能力は化物並だと彼は思った。
そして遂に、場に立っているのは金髪男と団長らしき人物と彼だけになった。
一瞬団長(らしき人物)が恐怖心を見せた次の瞬間、金髪男が動いたのと同時に団長(らしき人物)はふっ飛んだ。
そのままそいつは気絶。
金髪男がニヤリと、それは恐ろしい笑いを見せた時、呆然としていた彼は一気に足から力が抜けた。
目の前にいる男が悪魔に見えた。
地面に座り込んでしまった彼に、男は歩み寄って来る。
すっ と手を目の前に出して来た瞬間、恐怖心の余り彼は眼をつぶって身を強張らせた。
「ほら。」
「え??」
男は手を出したまま、彼に声を掛けた。
どうやら男は立ち上がるのを促しているらしい。
「どうも……。」
男がこんなコトをしてくれるとは思いも寄らなかったので、彼は反応するのに時間がかかった。
男の手を掴んだのと同時に、彼は、この状況下にありながら無傷(人が直撃したのは除いて)でいられ、化物並の身体能力を持つ男に手を差し延べられるとは、自分もまだ運があるな、と思っていた。
「こんなトコに居合わせるヤツなんだからも少し度胸があるかと思ったけどな。」
ケケケケ、と悪魔の様に笑う男。
さっきの恐ろしい笑いとはまた別の笑いだった。
「……ありがとうございました。
失礼します。」
男の言葉は図星だったので気まずくなった彼は、足元の団員を踏まない様にその場から退散した。
ふと後ろを見ると、団員を普通に踏みながら逆方向に立ち去って行く男が見えた。
そして今日。
あの男が、今、目の前にいるのは何故だ??
あの時と同じ様に、彼はその場に立ち尽くした。