章間話:魔巧帝国マナトギア
PV500万突破!!
久しぶりにアクセス解析を見てみるとそんな大変な事態になっているとは思いもよらず。
ここはなんか閑話というかEXストーリーでも書いた方がいいのかなぁ……。
スフィアがいたころとかリースとかマナとかイチとかヴァイ(笑)とか。
こんなの書いてほしい!というのがあればお教えください。
12月4日までに届いた意見の中から独断と偏見と書きやすさで選びたいと思います。
通称『帝国』と呼ばれる国がある。
魔巧帝国・マナトギア。
魔法と機械、二つの技術の融合を目指す国。
国内では主に機械系の技術が目立った政策として推奨されているが、その裏では様々な国に伝わる固有の魔法――――例えば、ペルヴィアにおける勇者召喚魔法陣、ムジンの魔法減退結界などだ――――を集める諜報じみた活動なども行っている。
資源を求め、他国の侵略にも積極的であり、旧ペルヴィアを占領しようと動いたことは記憶に新しい。
そんなものだから、いろいろときな臭い噂が絶えない国であり、その中には人体実験などを行い、そのための被検体を郊外の街や村から誘拐している、なんてものもある。
しかし、その魔法と機械の技術統合を目指す国だが、現状、魔法と機械の融合を完全に果たすことは未だ遥か遠くの夢であり、魔法ばかりが発達し機械は伸び悩んでいるところである。
だが、他国と比べ機械・科学技術はなかなかに高く、すでに簡易式の銃を実用化させている。
まあ、いまだ先込め式単発銃(たとえば火縄銃のような)の段階であり、アキラが創ったような自動式拳銃はまだまだ手の届かない先にある。
それには魔法という強力な武器が発達し過ぎている以上、銃はあまり必要とされなかったという要因も少なからず関係している。
また、自動式の銃を作ろうとした場合、弾などが大量生産できなければただの棒にしかならない。
精密部品は工場などではなく一流の魔法使いが錬金することで作られるため、大量生産が叶わないのである。
だが、帝国の技術力がその程度でとどまっているかと言われれば、否だ。
なにも兵器だけを研究開発しているわけではない。
銃などよりも、もっと望まれた技術が存在し、そちらに力を注いできたからとも言える。
それは――――義肢である。
この世界にはモンスターが数多く生息している。
それと戦えば、もちろん生半可な傷で済まないことだってある。四肢の欠損なんてザラなのだ。
千切れた四肢をくっつける魔法使いなど、それこそ片手ほどが世界に散らばっているのみ。
さらに、その数多くは魔族の国パンデモニウムの者ばかりという始末だ。
そこで、この機械の国は義肢が発達しているのだ。
その性能もピンキリ。
高い物は中から外まで、精密機械で作られたフルオーダーメイドになってしまうが、安い物はある程度の型を作るだけ。
型だけではハリボテと変わらないので、魔石を埋め込んで、義肢に疑似神経を通して動かせるようにする。
魔石は疑似神経を伝って本体から魔力を吸収し、付けている間、その魔力を使用・蓄えていく。
しかし、これにはデメリットが存在する。
獣人のような、魔力が極端に少ない者には使えない。だれか別の人物に魔力を供給してもらえばよいかというと、そうでもないからだ。魔力には個々人の波長があり、適合しなければならない。
この義肢。
望まれた技術ではある物の、いかんせん技術レベルは低く、その性能も大したものではなかった。
そう、なかった。過去形なのだ。
今の帝国製義肢は、最高級の品で人間の数倍の力を出すことができる。
埋め込んだ魔石と機械の力を相乗させることにより、モンスターを粉砕させる人外の力を得られる。
中には、自らのサイボーグ化を成そうとする猛者もいるのだとか。
この義肢の飛躍的――いや、爆発的な急成長。
義肢という特定分野のみがありえないほどの突出を見せている。
それはひとえに、一人の狂った科学者の存在が大きい。
サマット=エインティスド。
彼の興味は人体に集約される。
どうすれば人体をより強力にできるのか。
どうすれば人体をより俊敏にできるのか。
どうすれば人体をより頑丈にできるのか。
そのためならば手段は問わない。
時に機械を。
時に科学を。
時に医学を。
時に薬学を。
時に魔法を。
ありとあらゆるものを駆使し、人体の究極を追求する。
その一環が、義肢だ。
彼が作った義肢においては、ある程度の魔法との融合が見られる。
精密部品を使ってあるが、その設計さえも彼が行っている。
自ら見本を作り、他の錬金担当者に確かなイメージを持ってもらうなどその熱心さは義肢そのものからもうかがえる。
そして、そんな彼の現在の興味・研究対象は。
「く、くふふ、気になるなぁ……。
勇者クン。今はどこにいるのかなぁ?」
そう、勇者。
ペルヴィア城を跡形もなく消した未知の魔法。
警備隊が持っていた未知の物質で作られた柔かい剣。
万に及ぶ兵たちを一度に葬り去った未知の魔法。
未知。未知。未知。未知!!
きっと――――いや、間違いなく勇者がいれば、もっと人という存在を突きつめられる。
新たな魔法か。新たな技術か。
いずれにせよ、なんらかの発見がそこにはある。
「っあぁ。会いたいなぁ、勇者くん。
僕のところに来てくれれば、じ~っくり解剖してあげるのにねぇ……」
一人だけの研究室で、彼はその細く節ばった身体を抱きしめるながら、うっとりと漏らす。
「エインティスド博士!」
そこへ、どたどたと、慌ただしく若い男が入ってきた。
「なんだい?いい気分でトリップしていたのに……。
邪魔された僕は、ちょ~っと機嫌が悪くなったよ?
大した用じゃなければ、さくっとバラすくらいには、ね」
「ひっ!?
あの、いえ、わたしは頼まれていた物をお届けにっ!」
ギラリ、と怪しく輝く瞳。そして、舌なめずりで伸ばされた舌がねっとりと煌めく。
それを見て、若い男は本能的な恐怖を感じ、すぐさま用件を言って帰ろうと心に決めた。
その男がさし出したのは――――。
「ん? おぉっ!?
これ、これこれこれだよキミィ!!
いぃーねぇ。ご褒美に解剖と改造してあげようか?
今ならロマン溢れるドリルがついちゃうよ?」
――――一冊の、汚らしい手帳。
「え、遠慮しておきます。
で、では、お渡ししましたよ!」
解剖されてはかなわない、と男は駆け足で研究室を後にする。
男の退出など気にも留めず、狂った研究者サマットは手帳を開きながら小躍りする。
その手帳は、他国へもぐりこんだ諜報員の手記。
きちんとした報告書とは違い、諜報員の推測、雑多なメモなど他国で感じたあらゆる情報が書き記されている。
見る者が見れば、なまじ整理され、取捨選択された報告書よりも価値のある手帳。
サマットは手帳をパラパラとめくっていき、あるページでピタリと止める。
「くふ、くっ、くはははは!
ようやく、手に入れたよ!
勇者召喚の魔法陣!!」
開かれたページには、書きなぐられた魔法陣。
今はもう失われた、ペルヴィアの固有魔法。
固有魔法ではあるものの、勇者を召喚できない時期はその警備は甘く、部屋の番もサボり居眠りの体たらく。
アキラが召喚されるよりも前、ペルヴィアに潜入していた帝国諜報員が忍び込み、それを書き写していた。
しかし、その諜報員は城に潜入していたためアキラの魔法により死亡。
結果、報告書はあげられず、宿に残された手帳数冊だけが帝国に届けられた。
その数冊の内、ある一冊。
数年前、勇者召喚ができなかった空白期に得た魔法陣の写し。
「しかし、これから魔法陣を復元、そして改良は骨が折れる作業になりそうだね」
時間がなかったのか、焦っていたのか。
その筆記は粗く、細かな部分は書かれず大まかな部分だけが記されている。
それを補完し、ペルヴィアの二の舞にならないよう改良を加えなければ。
「まずは復元してから……ペルヴィア王家以外の魔力でも使えるように…………召喚主に逆らえないように…………それから、それから……。
くはは、なんとも厄介なことだ。
しかし……、壁が高ければ高いほど!燃えるが科学者としての魂だよ!!」
ガリガリと床に魔法陣を構成する式を考えては消し、考えては消し。
「三ヶ月、いや!一ヶ月でやってみせますよぉ!!」
そして、狂った科学者サマットは取りかかる。
新たな勇者を召喚するために。
自らの研究欲、好奇心を満たすために。
これはペルヴィア崩壊から10日後。
アキラがムジンで過ごしている頃、事態は急速に変化しているのだった。
>未知の物質で作られた柔かい剣
ここでまさかのスポンジ剣が再登場。
反撃の可能性をゼロにするためが、マッドサイエンティストの目に止まってしまったよ
作者自身も書いている途中に思ったのですが、スポンジって中々に作るの難しいのでは?
wikipedia先生によると、天然物と人工物があるようだ。
アキラくんのイメージで創られたスポンジはもちろん身近な人工物。
ポリウレタンとか合成樹脂とかまだあるわけないっすよね。
マッドの口調修正。