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『勇者』の反逆  作者: 本場匠
2章:獣王国家ムジン編
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18:国民大会4日目「武」本選5「正体」

「なっ、にっしてくれてんだてめぇっ!!」


 決闘を邪魔されたと激昂するイチに対し。


「なにを怒ることがある。これは戦だ。まさか、正々堂々一騎打ち、なんて世迷言をいうつもりではないだろうな?」


「わりぃか!?」


「この本選、残っているのはもはや4人だけ。

 そのどれもが強者だ。隙があれば仕掛けるのが道理。

 ましてや、国2位の猛者となれば手段は選んでられんのだ」


 仮面の男はどこか呆れたような雰囲気をにじませる。

 そして、その目をイチからつい先ほど、瓦礫で作られた道へと移した。


「――――それでも、やはり倒しきることはできなかったようだが」


「貴様ぁ……やってくれたなッ!!」


「真正面から、わざわざありがたいな」


 話している仮面に向かい、戻ってきたヴァイが襲い掛かる。


「おいおい……」


 ヴァイをあしらう仮面を見て、思わず声が漏れた。


 それは、相手の力を利用する技。

 ヴァイの力に逆らわず利用し、そこへ自分の力を微かに上乗せして投げる。


 この世界で、柔術や合気道などの技は見たことがなかった。

 勇者の戦闘経験で、歴代にいた経験者の知識はあっても、この世界で得た知識はなかった。


 それもそのはず。この世界はモンスターが跳梁跋扈する世界。

 相手を掴み投げる技、相手に触れて返す技。

 それらあくまで対人用で、鋭利な爪や毒の皮膚、滑る粘液などを持つモンスター相手には使いづらい技術なのだ。

 それだけなら対人、対モンスターの両方で使える他の武術を学んだ方がいい。


 この世界の事情ゆえに、廃れてしまったのか、発想そのものがなかったのかはわからない。


 ――――いや、発想自体はあったのだろう。

 今、目の前で使われたのだから。


「な、んだ……?」


 傍で見ていたイチはどうやってヴァイが投げられたのか分かっていない。

 おそらく、投げられた本人もなにが起こったのか分かっていないだろう。


 達人の投げはそういうものだ。

 知っている自分の目からも、あれはあまりにうまく。


 鳥肌がたつほど。


「おい仮面!その技、どこで学んだ!」


「これか?

 先達の積み重ねを改良し、編み出したモノだ。

 力の弱い自分のために長い時間をかけてな」


「そりゃ、すげぇ……」


 アキラとの問答の間にも、仮面とヴァイの戦闘は続いていく。


「せっ!」


 仮面は再びヴァイを投げ、空中で蹴り飛ばす。

 それは力が弱いとは到底思えないほど重いもの。獣人を基準に弱いと言ったのだろうが、それでも人の何倍もあるはずだ。


 イチのすぐ横まで飛ばされたヴァイはすぐに立ち上がり、仮面を睨む。


「ふむ、二人並んでしまったか。

 これからは、二人でかかってくるかね?

 勝負に割って入った邪魔者をともに倒し、その後で決着をつけるのもいいだろうさ」


 仮面はそう挑発する。


「だれがこんなっ!」


「こちらのセリフだ」


 しかし、二人はそれを否定した。


「…………挑発にのるか。挑発されても熱くなるな。

 たとえ挑発され、プライドが邪魔してやりづらくなろうとも、たとえ嫌いな相手だろうとも、目的のためには協力が必要な時もあるだろうに。

 協力が嫌なら、利用と言い換えてもいいかもしれんが」


 仮面の声に落胆の色がにじむ。


「王たる者、清濁併せのむ器が必要だ。

 単純な二分だけではやっていけない。

 善と悪。敵と味方。戦闘力と知力。どちらも受け入れなければな」


 その姿に、違和感を覚える。


 どうして、そんなことを言うんだ?

 そんな、相手を諭し、導くようなことを。


「イチ=テ=ムジン。

 君はさっきから国民は守るべきものと一貫して主張している。

 それは正しい。

 だが、守るだけではなく、時には国民だろうと敵にまわさねばならない時もあると知れ」


「ヴァイ=ニフターツ。

 強さを至上とし、外敵に備えるのもいいだろう。

 だが、行き過ぎれば内部に敵を作り崩壊を招く。

 理由があろうと、なにかを強制するのならば反感を覚悟せねばならない」


 二人をそれぞれ指さし、告げる。


 指された二人はそれを無視し、仮面に向かって飛びかかった。


 まずはヴァイが。続いてイチが。


 それは打ち合わせ無しの連係。

 お互いがお互いの動きを見て、それを邪魔しないよう、攻撃が最大に活かせるよう、意図せず行われた。


「これはこれは。

 良い連係だ。だが、前言撤回かね?」


「うっせ、今はとにかくおまえをぶん殴りたいんだよ!」


「ま、いいさ。備えはあるのでね」


 仮面は袖口から小さな丸い物を手に取ると、それをかざす。


「≪水よ――――≫」


「魔法っ!?」


 イチが驚愕する。


 仮面が取り出したのは、見た目はビー玉そのものの魔石。

 あらかじめ魔力をため込み、いざという時に使う魔法具。


 その魔石が輝き、内包する魔力を供給する。

 魔法が発動し、水の球が仮面の前に浮かんだ。


「≪――――幾千に散り、刺し貫け。ニードルレイン

 針よ、汝が敵を縫い止めよ。付加・バインド≫」


 水の球が破裂。

 詠唱通り、針の形で雨のようにイチやヴァイへ降り注いだ。

 それらの針に行動阻害効果が付加され、状態異常を引き起こさせる。


 彼らは獣人。魔法の効果は抜群だろう。


「ぐっ――!」


「使えるものは使う。当然だ。

 そもそも、だれもが真正面から体当たりで来てくれると思うな。

 敗者はなにも語れない。勝者こそが全てを手に入れる。

 正々堂々1対1、なんてことは手段を選べるほどの強者になってから言うのだな」


 仮面は語る。

 負ければ終わり。

 ならば、まず第一に勝たなければ何も始まらない。

 負けた者がなにを言おうと、ソレにはなんの意味も重みも存在しないのだから。


「ああ、それも強いってことなんだろうさ!

 でも、最強は違う!最強はそんなんじゃない!

 最強は手段は選ばない!真正面から、ただそれだけを貫くんだ!」


 イチは叫ぶ。

 王は最強。

 だから、別の意味で手段を選ばない。

 あらゆる手段を用いて敵を倒すのではなく。

 ただ一つの道を突き進んで乗り越える。

 だからこその最強だと。


「……ほう、それも正しいだろう。

 だが、未だ最強ならざるおまえたちでは大言壮語でしかない」


 少しだけ、感心したような雰囲気を出したが、それはすぐに消える。


「しかし、ヴァイだけでなく、イチも頑固すぎるな……

 最強に拘るのはヴァイだけではないか……。

 前王の事もあるのだろうが……。

 やはり、ここらで矯正しておいたほうがいいな」


 その微かなつぶやきは風に乗ることなく、評された二人に耳には届かなかった。

 ただ一人、聞こえていたのはアキラだけ。

 一つも情報を逃さないよう、身体強化で目を耳を良くしていたことが功を奏した。


(なるほど……。そういうことか……)


 今までの違和感が答えを得てぴったりとハマる。

 なら、ここは介入せず黙って見ているだけにした。


 解答と同時に、仮面に手を出すなとでもいうように睨まれたこともある。


 ぶっちゃけ、そろそろ面倒になってきたわけでは決してない。

 キザンですっきりしてモチベーションが一気に落ちたわけでもないのだ。決して。


「さて、君らが針のせいで動けない今、とどめを刺させてもらおう。

 あまり長い時間拘束していられないのでね

 まずは――――」


 仮面は滑らかに踏み込む。


「――――ヴァイ=ニフターツをやらせてもらおうか」


 拳を放つ。


 標的のヴァイはせめてとばかりに身を固くし、衝撃に備えた。


「せっ!」


 狙いは――――金的。


 おそらく、急所である以外にも、そこが獣人化したヴァイのほぼ唯一、剣狼の毛におおわれていない部分だからだろう。

 服で隠れて見えはしないが、機能上毛におおわれることはないはずだから。

 ヴァイの身体で攻撃の威力すべてがそのまま伝わる部分。

 それが金的だった。


「~~!?」


 情け容赦のない攻撃に悶絶するヴァイ。

 隣で見せられて鳥肌が立つほどすくみ上るイチ。

 爆笑するアキラ。


「終わりだ」


 言葉とともに放たれた最後の一撃。

 意識を刈り取られたヴァイは転移させられ、淡い残光を置いて退場する。


「さて、では――――次だ」


 仮面はゆらりとイチに向き直る。

 今度はイチの顔面めがけて拳が放たれた。


「――もう魔法は解けてるんだよ!」


 鮮やかなクロスカウンター。


 だが、仮面は踏み込みをわざと浅くしていたのか、寸でのところでそれを避けた。


 本当にギリギリで。

 だからこそ、その素顔を隠す仮面の縁にカウンターがあたり、仮面は遠くへ飛んでいく。


「おっと。今のはなかなか危なかった」


 イチは目の前の敵の正体を、呆然と眺め、立ち尽くす。



「じーさん……」



 仮面の下、現れた素顔はクマン=ベールその人だった。

積んでいたfate/extraをプレイ中。

キャス狐かわいいよキャス狐。

ただ、初回キャス狐やって、二周目赤セイバーに行くとなんと楽々なことか!

スキルがなかったころのキャス狐さんはすごく大変だったのに!なんどもゲームオーバーになったのに!

セイバーさんレベル上げて物理で殴るだけでさっくさく進めるよ!

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