表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者』の反逆  作者: 本場匠
2章:獣王国家ムジン編
35/46

14:国民大会4日目「武」本選2「初戦」

あとがきでアンケートがありますので、ご協力よろしくお願いします。

 ~side アキラ~



 市街地のどこかに転移、と聞いていたアキラはまず休める場所を探そうと思っていた。


 のだが。


「おいおい、マジか……?」


「うわ~ぉ……」


 思わず頭に手を当てて空を見上げる。

 サンクとか言ったか、小柄な少女が目を真ん丸に見開いている。


 向こうもいきなりのエンカウントに驚いているようだ。


「いきなりだれかと同じ場所に出るとは思わなかったな~。

 でも、ここで会ったのが百年目だよ!」


 その硬直状態も束の間。

 双方、バッと跳んで間合いを離した。


「……初対面なんだけど?」


「じゃ、お互い運の尽きだよね!」


 サンクはにこやかに笑い、手甲をつけた拳を構えた。

 足にも、すねを覆う手甲ならぬ足甲がついている。

 拳法家のようだ。


「運で勝ち上がったって紹介だったのに運の尽きっていっちゃうのかよ……」


「も~、あの紹介不本意なんだから言わないでほしいんだよ!

 ここらで実力見せちゃうんだから!」


「紹介が不本意なのはこっちもだよ。

 ……こうなっちゃ、やるしかないか。それに一度は必須の戦闘をここでこなしておいた方が後々楽そうだ」


 アキラは腰にさしておいた西洋剣を抜く。


 双刀・天地はその高すぎる威力から。

 二丁拳銃は技術力の高さから。

 使用を見合わせることとなった。


 そこで、手ごろな武器がほしいと思って創ったものがこれ。


 銘を裂空。

 魔法伝導率の高さからミスリル製の両刃剣だ。


「行くよっ!」


 跳ねるような踏み込みとともに、右が襲い掛かる。


「遅いよ。遅すぎる」


 リースやイチと比べればまだまだ。

 剣の腹で受け、そのまま左へ力を流してやる。


「なっ!?」


 態勢を崩されたサンクはその技量の高さに驚いた。

 力を受け流す。獣人相手のそれは一歩間違えば吹き飛ばされる。

 なのに、アキラは一歩も動くことはなかった。

 ――――言うは易し、行うは難し、だ。


「よいせっと」


 右手から倒れ込むサンクの背を剣の柄で殴る。


「あぐっ!

 ――――っでも、まだまだ!」


 サンクは距離を取り、再び構える。

 少し痛そうに顔をしかめているが、闘志はなえない。


「獣人はタフだよな、ホント。

 今の、しばらくのたうちまわってもおかしくないんだぞ?」


「あたた、うん。かなーり痛かったよ?

 お兄さん、ほんとに容赦ないね」


「いやいや。本気なら斬ってるから。

 殺しはなしだし、一番柄が近かったからそれで叩いた」


 あっさりと言い放つ。

 それに、サンクは冷や汗たらり。

 目の前の相手が、“その気”だったらあっさり殺してるんだと分かった。


「それより、そんなに離れていいのか?

 拳法家なら、こっちの剣をかいくぐんないと届かないんだぞ?」


「一回くらいならだいじょぶ!

 手甲もあるしね!」


 自慢の武器を見せびらかすように、手甲を前に突き出す。

 そのほほえましい姿に、にやりと笑いかけてやった。


「一回、ね……?」


「な、なにその笑い……。

 まさか、一度にいくつもの攻撃が繰り出せるとかっ!?」


「なんでキラキラした目で見てくるんだ。

 やめろ、そんな期待されても無理だって。いやほんとに」


 やればできないこともないだろうが……。

 今度やってみよっかな。


「じゃーなんなの!」


「なぜ怒る……。くっそ、調子狂うな……。

 まあいい。見てろ!」


 ブンッ!と裂空を振るう。

 すると、白い光の斬撃が飛んだ。


 裂空の真価は魔力を込め、放つことにある。

 魔力を込めて強度と切れ味を増し、接近戦を。

 込めた魔力を放出し、遠距離攻撃や近距離での追加攻撃を。

 体獣人用として重宝する遠近両用の剣。

 それが――――裂空だ。


 魔法剣ならこの世界にありふれている。

 属性は変えられず無色の魔力しか込められないので、ちょっと珍しいくらいで通る剣だ。


「す、すすすすっごぉーい!!

 なにそれ、見せて見せて!

 斬撃じゃなくて、魔力が刃の形で飛んでったよ!?」


「子どもかおまえは……」


 はしゃぎながら近寄ってきて、まじまじ裂空を見つめるサンク。

 ……毒気を抜かれる。

 すごくやりづらい。


 そして、サンクは唐突に顔をあげて再び元の位置まで離れた。


「うん、よっし。

 面白い武器もみたし!

 やろうか!」


「自由すぎるぞおまえ!!」


 しかし、いちいち離れて仕切りなおすあたりいい子である。


「君がどんなに強くても、ボクは負けないよ!」


「この娘の相手すっげえ疲れる……」


「うん?

 なんでぐったりしてるのか分かんないけど、行くよ?」


「あ、待っててくれたのか?

 ……いいぞー。来い」


「そんな余裕はここまでにしてやるんだからっ」


「いい度胸だ!」


 魔力刃を三つ飛ばす。

 彼女は一つ目、二つ目は避け、三つ目はかわしきれないと判断すると手甲で弾いた。


 そのまま駆けてくる。


「近づけば撃てないよねっ!」


「オレは飛ばさなくても十分使えるんだよ」


「っつう!」


 袈裟切り。

 魔力の籠った刃は欠けることなく手甲とぶつかり火花を散らす。

 サンクは苦しそうな声を上げるが、剣を力任せに振り払った。


「せやっ!ふっ、てぃっ!」


 真っ直ぐ、素直な拳。

 かわすとハイキックが襲いくる。

 スウェーで空振りさせた。


 サンクは空振りの勢いを殺さず、一回転。

 回し蹴りで足元を払う。


「蹴り返す!」


 アキラは言葉通り、振りかぶって回し蹴りに真っ向から蹴りをいれた。

 そしてすぐに離れる。


「あわわわっ!?」


 回し蹴りが返され逆回転。

 一回じゃ止まらずぐるぐると視界がめぐる。


「拳法家としちゃ、それなりな感じか。

 身体全体が武器ならば流れるように紡いで繋いで押しとおらなきゃな。

 手足は四つもあるんだ。

 オレは一撃必倒よりも、息もつかせぬ連撃こそが拳法家の神髄だと思ってるよ」


「あはは、まるで指導みたい……」


 苦笑いするサンク。

 アキラは言われて、やっぱり彼女の雰囲気に流されていると気を引き締めた。


 と、その時。


 ――――ドガァン!!!!

 遠くから轟音が響き、地面が微かに揺れた。



「どっかでやり合ってるやつがいるみたいだな。

 時間がないか……」


 あの地形を考えない感じ……十中八九、イチがやり合ってる。

 相手がヴァイやキザンだったら……まずいな。


「こっちの事情で悪いが、ここらで終わらせてもらおう」


「あはは……、本気になってくれるのは嬉しいけど。

 その殺気はちょっと怖すぎ……」


「悪いな」


 魔力刃をサンクの足もとへ飛ばす。


「こんなの――――きゃっ!?」


 当然、彼女は避ける。

 が、魔力刃は地面に当たると爆散し、球となってあたり一面にまき散らされる。

 イメージは手りゅう弾だ。


「つつ……なにあれ。あんなのあり……?」


「手甲でガードしたのはいいが、気を緩めちゃダメだろ」


 ガードしつつも吹き飛ばされた彼女の背後に回り込み、剣の腹を叩きつけ――――。


「ちっ!」


 攻撃を中断。

 アキラはその場から飛びずさる。



 ななめ上から投擲されたなにかを避けるために。


 なにかの正体は、それが起こした土煙で隠れている。


 あったのは――――槍。



「横槍失礼するよ。奇しくも文字通りだね」


「最後の最後で乱入とは……。なってねぇ野郎だな?」


「これはバトルロイヤルだよ?

 乱戦なんて当たり前だろうに。

 それに、一応断ったじゃないか」


 突き刺さった槍を抜き、サンクの盾になるように立ちふさがるのはキザン=サードリオ。

 観客から見れば甘いマスクだろうが、対峙する側からすればにやにやと嫌らしい笑みにしか見えない。


「ルール上は問題ないだろうさ。

 でも、わざわざ決着の直前に乱入するのは気に入らないな」


 キザンは今、ヴァイの援護をしていない。

 なら、ここで倒しておいた方がいい。


 あくまで依頼は、イチを影から(・・・)援護し、ヴァイを倒させること。

 たとえ向こうが2人で戦おうと、こちらは共闘してはだめなのだ。


「僕の目的もあってね。

 君を探していたら、なんと彼女のピンチじゃないか。

 ギリギリで間に合ってよかったよ。

 彼女に負けられると、困るんでね」


 声を潜めるキザン。

 観客に聞かれたくない目的――――イチ陣営の排除ってところか?


「どうして?」


 キザンはにやりと笑い、槍を突出し構えた。


「本選で最初の脱落者は君じゃないとねぇ、人間!!」


 ああ、そういうことか。

 こいつ――――。


「人間人間うっせぇんだよ獣人が!」


 ――――――嫌いなタイプだ。



 ==========



 さすがムジン王国の3位。

 その槍捌きは大したものだった。


 突きが最短を走って届く。

 一直線の殺意を纏い、点の軌道で迫ってくる。


 特訓の成果か、防ぐことは楽々できるが攻撃の機会が巡ってこない。

 槍の雨をかいくぐれない。


「そらそらそらっ!どうしたんだい!?

 防いでばかりじゃつまらないよ!」


「これを見ても余裕でいられるかァ!?」


 槍と剣。

 間合いの違いが、攻撃し続けられる理由。

 こちらが攻撃にうつれない一因。


 なら――――。


「切り裂け――――裂空!」


 こっちも槍の間合いの外から攻撃してやる。


 横薙ぎ、縦、袈裟、突き。

 いくつもの斬撃が飛ぶ。


「くっ、やっかいな剣だな!

 人間はすぐに武器に頼って自力を磨かない!

 時に、――――そこの少女、まだ動けないのか?」


「え、だ、だいじょうぶですけど……?」


 斬撃を避けていきながら、後ろのサンクに声をかける。


「なら、加勢してくれないかな!?

 ともに敵を――――人間を討ち果たそうじゃないか!」


 二人がかり、か。

 バトルロイヤルという性質上、それもあり。


 たとえ二人になろうが、勝てないわけじゃない。


 冷静に思考するアキラ。


 そして、少女は。



「…………お断りします!」



 予想外の答えを言い放った。


 獣人である少女が、第3位の申し出を断るなんて思いも寄らなかった。


「なっ!?」


「ボクの敵はボクが決めます!

 さっきは運よく助かっただけで本当なら負けてました。

 だから、参戦しません!

 それに、ボクは2対1じゃなく、1対1であの人と戦いたい!」


 力強い言葉を叩きつけられた二人は、しばらく沈黙してしまう。



「そう……」






「――――なら、君はさっさと退場しなよ」




 ドスッ!

 槍が、サンクの脇腹を貫いていた。



「えっ――――?」


 少女は理解できない、という思いを浮かべ。


 ゆっくりと、支えを失い。


 とさっ、と。


 崩れ落ちる。


 ――――その光景が、目に焼き付いていく。


「あっ…………」


 意味のない、微かな声が漏れて、運営側――おそらくギルドの協力者が彼女を転移させたのだろう。


 転移残光を淡く光らせ、彼女の姿は戦場から消え去った。



 それを横目で眺め、キザンは槍を振って血を払う。


「獣人の風上にもおけない娘だな。

 ――――おっと。君を最初に脱落させようと思ったのに、思わずやってしまった。

 これはいけない」


「…………」


「ま、いいさ。

 些細な違いだ。

 彼女が獣人の面汚しである事実は変わらない。

 人間ごときに追い詰められ、あまつさえ上に立つ僕に逆らったんだから」


「なんで、彼女を…………?」


「おかしなことを言うね?

 ルール上、彼女も敵だ。倒すべき、ね。

 どうせ、君の後には倒すつもりだったんだよ。

 だが、さっきも言ったけど、あれはいただけない。

 君を最初に脱落させるという目的を超える程に、ね。

 上に立つ者に――――上官に逆らう不穏分子は排除して当然だろう?」


「…………」


 アキラはもう、なにもしゃべらない。

 消えた少女のいた場所から、キザンへ視線を移動させる。


「さて。じゃあ、やろうか。

 順番が入れ替わったけど、僕が君を倒すことに代わりはない――――!」







「――――今すぐ黙れ」

ここまで書いておいてなんですが、2章の主人公に違和感を覚えずにはいられなくなっています。

感想でもご指摘いただきましたが、アキラくんキャラ変わりすぎじゃないかと。


復讐を終えてそれなりに穏やかになるのはいいけど、なんだか動かしづらいキャラになってしまっています。

チートで無双しちゃいたかったのになぁ……。

別にイチと引き分けなくとも、国民大会に参加させる理由はほかにもあったんじゃないかなぁと思いますし。


このままで行くか。

2章を改訂してしまうか。

悩み中です。

まあ国民大会イベントなど大筋では変えないつもりですが。


なので、


1:改訂しちゃおうぜ

2:今のままでもよくね?


というアンケートを取りたく思います。


〆切は10月末までで。

ご協力お願いします。


※アンケートは終了しました。

ご協力ありがとうございました


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ