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『勇者』の反逆  作者: 本場匠
2章:獣王国家ムジン編
34/46

13:国民大会4日目「武」本選1「試合直前」

短いですが、区切りのいいとこまで。

 国民大会最終日。


 数日前、ミスター&ミスコンテストが行われた大きなステージ。


 ステージ中央に立つ一人の男は、大勢の観客を前に腕を広げ、叫んだ。


「さぁ、みなさん!

 国民大会もついに大詰め!

 最後の大会!

 決めるは最強!

「武」の頂点!!」


 司会の男は、ギルド職員にかけてもらった拡声魔法でステージだけでなく全国民へ声を張り上げる。


 それに答えるように、国のいたるところから雄叫びがとどろいた。


「舞台は毎年、この日のために城壁の外に作られる特設会場!

 一昨年は城。前年は砦。そして今年は――――街!!

 宰相クマン=ベール氏が設計し、急造ですが市街地を模した戦場を用意しました。

 今年は市街地戦です!!」


 ステージの背後に、パッと映像が映し出された。


 それはハリボテでできた家や役所を作り、外側を街の様相に整えたフィールド。

 ところどころに遠隔視の送信魔法具が置かれ、映像をムジンの各所に設置された受信魔法具のある会場で見ることができる。


 これを見たアキラは、テレビのロケそのものだ、と評した。


「街の地図は参加者全員に配布されております!

 では、この栄えある決勝で戦う参加者たちの紹介をしていきましょう!」


 司会は舞台そでを振り返り、一人ずつ紹介文を読みあげていった。


「まずは一人目!

 前国王より王位を継いだイチ=テ=ムジン王!

 王として、かの王虎族の末裔として、その力を存分に見せつけてくれることでしょう!」


 戦闘装束に身を包んだイチは厳かに歩いていく。

 中央で一度手を振り、わきへずれた。


「それでは二人目!

 言わずと知れたその力!

 圧倒的な力で国内ランク2位に輝くヴァイ=ニフターツ選手だ!

 今日こそ、イチ=テ=ムジン選手を倒し最強の名を得ようと意気込んでいるようです!」


 ヴァイは2位と呼ばれ、司会を軽く睨みつける。

 だが、それだけ。あとは国民に見せつけてやればよいことと判断し、イチの隣に並んだ。


「三人目!

 国内ランク3位!

 力だけでなく、頭もいい!

 甘いマスクの完璧男!キザン=サードリオ選手!

 おっと、女性の歓声がすごいです!

 今日は彼女たちをさらに酔わせる戦いを見せてくれるはずですよ!」


 キザンはにこやかな笑みを浮かべながら、観客たちに向けて手を振った。

 その笑みの裏に隠された黒い感情を、覆い隠して。


「四人目!

 強いのはなにも男だけじゃない!

 女王が引退した後、ムジン国内で女性トップに君臨するのは言わずと知れた彼女!

 カトル=シフィーア選手!」


 現れたのは長身のスマートな女性。

 両こぶしをガツンとぶつけあい、やる気をみなぎらせながら列に並ぶ。


「五人目!

 今大会のラッキーガール!

 予選バトルロイヤル、予選トーナメントと強者たちのつぶし合いを潜り抜けて生き残った彼女!

 しかし、その実力は本物です!本選でようやくそれを披露することができるのか!

 本選の台風の目になれるのか!

 サンク=ファイチンク!」


 丸っこく可愛らしい耳を乗っけたような、小柄の少女がバク転しながら中央へ。

 天へ拳を突き上げ、きっちり決めポーズを取った後列に並んだ。


「六人目!

 もっとも謎な参加者!

 その素顔は仮面で覆い隠した彼はいったい何者なのか!?

 大会側から明かされた情報は、獣人であることだけ!

 見るからに怪しいですが、予選で垣間見えた力は本物!

 いったい彼の全力はどれほどのものなのか!

 名前もカメン選手!」


 仮面で顔を隠した白髪の男はただまっすぐに列へ向かう。

 観客へこびることなどしないと、全身が告げていた。


「そして、最後!

 七人目はなんと!大会初!獣人ではなく人間です!

 予選の予選から勝ち上がり続けた彼の実力は本物でしょう!

 いったいどこまでいけるのか!

 アキラ=イースト選手!」


 上から目線の紹介文に苦笑しつつ、アキラは舞台の上を歩く。

 予選を見ていた者からはアキラを認めるような目が向けられるが、それは少数派。

 大多数の中にはアキラがいつ負けるのかを話し合う者もいた。


「この総勢七名が!最強の名を賭けて戦います!

 では、ここでルール説明をさせていただきます」


 司会の横にボードが運ばれてくる。

 彼はそれを一つずつ指さしながら説明を始めた。


「ルールは簡単!

 この中で最後の一人になるまで戦ってもらうだけ!

 その過程で同盟を組むも良し!一時的に撤退するも良し!

 最終的に勝ち残った者が勝者です!

 ただし、少なくとも一度は戦闘をしなければなりませんので要注意です!」


 最後まで逃げ続け、同士討ち狙いはだめってことだ。

 そもそも全国民に見られているから、たとえ勝っても情けない戦いだったら認められない。


「戦闘不能になった者は係員によって退場させられます。

 ただ、殺しは即失格となります。力ある者はそれを制御できなくてはなりませんからね」


「うっ。耳が痛いな……」


「参加者たちは30分後のスタートと同時に、市街地のどこかへ強制転移させられます!

 ではみなさん、彼らの健闘を祈って拍手をお願いします!」


 ワァアアアアア!


 大きな歓声と拍手に背中を押され、彼らは控室でそれぞれ準備を始めた。



 戦いを前にうずうずする者。

 目を閉じ、精神統一する者。

 地図を読み込み、頭に叩き込む者。

 武器の最終確認をする者。

 ウォーミングアップとして身体を動かす者。

 だれとどう戦うか、イメージトレーニングを行う者。

 他の参加者たちを見て、武器や体つきから少しでも情報を集めようとする者。



 試合開始を待ちわびる。


「みなさん、もうすぐ時間です」


 運営の兵士が彼らを呼び、再びステージへ。



「では、準備が整いました!

 それではこれより、国民大会『武』本選バトルロイヤル!


 試合ィッ開始ィ―――――!!」



 転移魔法の残滓である淡い光とともに、彼らはそれぞれ飛ばされた。



 最強を決める戦場へ――――。

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