15:復讐と結果
今回はちょっと難産。
拷問的シーンはなんか無双と違って、書いているとテンションさがっていくなあ。
~ペルヴィア城内・謁見の間~
謁見の間の前、門番のように2人の男が立っていた。
近衛騎士団の団長と副団長。
「そこを通してもらおうか?」
間合いに入る、半歩手前。
そこで立ち止まり、声をかける。
「貴様よくもおめおめと!」
声を荒げたのは団長の方だけ。
副団長は油断なく、剣に手をかけ、重心を落としていた。
「逃げたわけじゃないのに、おめおめとって……。逃げたのはおまえらじゃん」
「その逃げ道をすべて塞いでいたのはおまえだろうが!!」
「証拠もないのに言いがかりはよくないね。
つか、そんなことはどうでもいいからさ。
そこ通してくんない?部屋の中のやつらに用があるんだ」
「黙れっ!なぜ奴隷の言葉を聞かねばならん!」
「――――隊長!?」
副団長は、オレの逆鱗に触れることを考慮し、団長をいさめる。
が、オレにとっては団長の方がまだましだった。
「そうだよ。
みんなさぁ、オレのことを勇者勇者ってさ。
バカじゃないの?
奴隷だろ?」
へらへらしながら笑いかけてやるが、目は笑ってない。
「なのに、おまえらは善人ぶりたいのか勇者ってよぶ。
おまえらが人を騙して奴隷にしておいて。
反省って言うか、自分がやったことなんだから責任もてないのかと」
人の目があるなら、まだわからんでもない。
でも、この期に及んでそう呼ぶのはおかしい。
もはや勇者ではなく敵なのだ。
「てかさ、こんなことはおまえらに言ってもしょうがないんだよ。
ああもう、面倒だ。押し通る。」
今まで使う機会がなかったシグとベレッタの2丁拳銃を手に。
無属性の魔力を込め、そのまま魔力砲として撃ちだした。
「があぁっ!?」「ぐっ!」
二人は無様に吹っ飛んで、勢いに押されて謁見の間の扉を体で開けた。
「ご対面ってな」
悠々と中へ。
部屋の中にいたのは、王族と一部貴族、そして、さっき入った近衛騎士二人。
騎士二人は気絶してしまっているようで、起き上がることはなかった。
自らの身を守る、最後の生命線が断たれて、王は半狂乱になっていた。
「近衛がなんという体たらくを!」
「お父様!そんなことより、あいつを!
服従の呪文を使えばあいつは動けなくなります!
そのうちに――――」
「だが、あいつはそれを共有させるのだぞ!」
「ですが、それは王族には効きません!苦しんでいる隙に、わたしたちで殺せばいいんです!」
お、第1王女が気づきやがったか。
でも、それは下策だよ。
「いい作戦だが、第1王女サマ。できるのか?」
「できるわよ!」
「へえ。城の中で過ごし、剣を使って人を殺したことがない王族にできるのか?
汚れ仕事は騎士や勇者にずっと押し付けて、椅子の上でふんぞり返っていたくせに?」
それに加えて。
「さらに、大声で言ったのはまずかったな。
確かに、痛覚共有は王族どもには効かないかもしれない。
でも、そこにいる他の貴族サマ方には効くんだよ。
今のおまえの言葉で、王族は孤立するぞ?」
「それであんたが殺せるのなら、耐えるわ!」
「勝手だねェ。ショック死しかねない痛みに耐えるのは、おまえら以外なのに」
一時の痛みを覚悟して、勇者を排除しようとすれば、おそらく殺せるかもしれない。
しかし、その痛みに耐えるのは王族以外。
見れば、王族は部屋に残った王族以外のヤツラから白い目で見られていた。
「クソ王サマ。
契約の解除、おまえが自主的にできるだろ?
それでもいいんだぜ?」
「ふっ、どうせ今のおまえは我らに攻撃できん。契約の解除などしたら、それこそ殺される!
貴族たちもだ!
あの時謁見の間にいた我らはみな敵なのだろう!?
こいつが命を助ける保障などないんだからな!
こいつを殺せば確実に助かるんだ!」
ちっ、バカ貴族共も乗り気になりそうだ。
「じゃあ、その手をつぶさせてもらおう。
リース」
「なんじゃ?出番か?」
王族たちの背後から、≪ステルス≫を解除して銀髪の少女が現れた。
「「「「――――っ!?」」」」
だれもが、いるとは思っていなかった存在の登場に驚愕する。
「彼女はオレの仲間でね。痛覚の共有からはずしてある。
つまり、オレに服従の魔法をかけて、無事な王族がオレを殺そうとする前に、おまえらは彼女に殺される」
「じ、じゃあ……」
空気が王族にとって悪くなったのを感じ、クソ王に要求を突きつける。
「ほら、従え。
奴隷と蔑んできたオレの命令に従え。
じゃないとみんなリースに殺されるぞ?」
「…………」
王妃や三人の王女、王子の少年、全員の目がクソ王を見る。
責めるような、懇願するような、様々な想いの混じった視線。
「決断力がねェな。
クソ王、テメェ自分がぜんぶ決める立場とか勘違いしてないか?
リース、王族のだれかの手、一本飛ばそうぜ。
そしたら、自分の置かれてる立場ってもんがわかんだろ」
「なっ、なにをっ!?」
「おまえの選択肢は2つ。
リースに殺されるか、自分で契約を解除するか。
服従の魔法を使おうとすれば、王族以外は倒れるが、共有から除外したリースがおまえを殺す。
ようは、生きて契約解除するか、死んで解除するか、どっちかしかねぇんだ」
「くそっ…………」
「オレがこんな面倒なことをするのはな、奴隷側の気持ちを味あわせたいからだ。
飽きたら、即殺したっていいんだよ」
「そんな…………」
「さあ、オレに従うしか道はないと、認めろ。
奴隷に命令される立場なんだよ、おまえらは」
クソ王につめより、今にもこたえようとした時、邪魔が入った。
「――――待ってください!!」
「……なんだ?スフィア」
「どうして、こんなことを……?」
目に涙を浮かべ、彼女はそんなことを言った。
この期に及んで、そんなことを言った。
一瞬で、頭が沸騰しそうなほどに怒りがわきあがる。
「どうして!?どうしてだと!!
おまえらがそれを言うのか!!
オレを無理矢理召喚して!奴隷にして!
都合のいい道具として扱ってきたおまえらが恨まれていないとでも!?
心当たりがないとでもいうつもりか!?」
「それはっ……」
「言い訳はさせない!
オレから家族も友人も尊厳も奪ったくせに、おまえらはそれが当然のような顔をしている!
どうして!?
その言葉は、罪の意識がかけらもないやつからしかでない言葉だ!
そういう無自覚だからこそ、オレはおまえらを殺したい!!
誠意も謝罪もないおまえらをぶち殺してやりたいんだよ!!」
「…………」
「それにな、もう遅いんだよ。
オレはすでに18000近い兵を殺したんだからな。
いまさらだ」
「そんな、何も知らない一般兵まで、殺したんですか……?」
「ふーん、どの口でいうんだか。
おまえら、魔物退治だけじゃなくてオレを戦争の道具に使うつもりだったろ?
それは、相手国の人間を殺しまくれってことじゃないか。
それこそ一般兵どころか民衆も含めてな」
言い当てられたクソ王や宰相は、気まずそうに視線を逸らした。
「オレにとって、その国と、この国。大した違いはないんだよ。
この国に思い入れがあるわけじゃないし、仲間もいない。
むしろ憎しみがあるぶん、ペルヴィアの方が嫌いだ。
戦争するならこっちの国。それだけ。
戦争なら、兵は殺すだろ?」
気づいているか?と壮絶な顔で笑い。
「これはな、1人対1国の戦争なんだよ。
無差別に殺してないだけよっぽどマシだ。
それにな、オレはおまえらと違って、自分のやったことくらいきちんと認識してる」
大勢の人を殺したってことくらい、わかってるさ。
「でも、バカね。そんなに大勢の人を殺せば、あの演説も意味がなくなってしまうわ。
わたしたちが悪ってことにはならない。兵にも家族はいる。
彼らを奪ったあなたが悪になるじゃない」
第1王女の嘲笑を、逆に笑いとばす。
わかってない、と。
「あれはこの国相手じゃなく、他国相手の演説だ。
間諜が入り込んでいるって聞いてたからな。
反逆の理由を説明して、勇者怒らせたらこんなことになるって言いたかっただけのモノ。
勇者召喚なんて馬鹿げたことを他国もやろうとしないように。
どんな大義名分、きれいごとをいったって、18000人殺してんだ。
オレはもうこの国の敵だってことくらいわかってるさ」
「もう、これ以上は、やめてくださいっ……。アキラ様……」
スフィアが、そう懇願した。
「これ以上、ね。おまえらで終わりなんだけどな。
ていうかさ、スフィア。君はどっち側なの?」
「……え?」
「おまえの“役割”は知ってる。
正の鎖だろ?」
勇者を縛り、操る、見えない鎖にして、手綱。
城で唯一勇者に優しくふるまい、信頼を勝ち取る。
そのためならば、身体を使うことも辞さない。
「痛みや恐怖と言った負の鎖じゃなく、信頼や好意といった正の鎖の役割」
「なんで、知って……?」
その言葉に、返事はしない。
「君の行動が全部嘘で、クソッタレな王の命令だったとしても、オレはおまえに癒してもらったし、助けられた」
あの時、真実を聞いてしまった時。
彼女は「勇者」ではなく、「アキラ」とオレの名前を呼びそうになった。
王の命令に、葛藤しているように見えた。
だから、最後に、一度だけ、聞く。
「君は、どっちの味方だ?
王か?オレか?」
「…………わたしは、アキラさんが好きですっ……。
最初は命令でしたけど、名前を教えてもらって、そう呼ぶたびに少しだけ嬉しそうにしてくれるあなたが、わたしにも嬉しかった。
わたしたちがひどいことをしていたって、分かりましたから。
人を殺させてしまったって、わかりましたから……。
だから、やめてください。
あなたの意志で、これ以上、だれかを傷つけないで……」
涙交じりに、スフィアの吐露したそれに。
オレは小さくつぶやいて、答えた。
≪サーチ≫と。
結果は。
「あは、あははははは!!
真っ赤だ!真っ赤なウソだね!スフィア!!」
スフィア・ペルヴィア。そのマーカーは、赤色。
設定はデフォルト。
オレ「に」敵意があるかどうか。
「あー、やっぱり、この国は心底腐ってるな」
緑は味方。
橙は中立。
赤は敵。
「涙まで浮かべて。すげぇなぁ、オンナの演技って!
≪サーチ≫がなかったら絶対に騙されてたな!
あははははは!!」
顔を手で覆って、笑っているアキラ。
その言葉の端々に、気になる言葉を聞いてスフィアは恐る恐る尋ねた。
「なにを……?」
「もう迷いはない。
クソ王サマ。契約の解除か、死か、選べ」
もう、第3王女の言葉は気にしない。
「じゃあいい。
クソ王。おまえは絶対に殺すが、自ら契約を解除すればおまえが愛しているやつを一人だけ助けてやる」
「やめてくれ!王が契約解除したらわしたちは――――!」
「だまれクソ貴族」
ベレッタで撃ち殺す。
放たれた無属性魔法は込められた魔力に応じた威力と硬度で、ザクロのようにはじけさせた。
だれかが怯えた声を漏らしたが、そんなものはどうでもいい。
「契約解除以外に道はねぇんだよ!
さっさとやれ!」
「余たち王族の安全が保障されなければ――――!」
「物わかりの悪いクソ王だな。リース、そいつの腕を飛ばせ」
「わかった」
リースは魔力を固めてつくった半透明の爪を生み出し「やめっ――!」あっさりと王の腕を抉り取った。
「ぁああぎゃああああああああああ!!」
「黙れ」
以心伝心。察したリースが先のない肩を抑えて倒れているクソ王の顔面を蹴り飛ばしてくれる。
「オレは攻撃できないが、彼女にはできる。この意味がわかるか?
おまえはオレに従うしかないんだ。
何度も言わせんなよ?
オレはおまえらを皆殺しにして契約解除してもいいんだよ。
さっきもいったが、おまえらにも奴隷の気分を味わってほしくてな。
自主的に解除すれば、愛する人ひとりだけ助けてやる」
「っぐぅ……、だがっ……!」
「痛いか?服従の魔法の痛みはそれくらいかもな」
「リース、こいつの腕をくっつけてくれ」
「いいのか?」
「ああ」
リースが治癒魔法を使い、腕をくっつける。
実物の爪ではなく、魔力の爪だったからか、切り口は綺麗で簡単につながった。
「おお、腕が……」
「じゃあ、リース。腕を切りおとしてくれ」
「なん、だって……?」
あまりの発言に、呆然としてしまうクソ王。
「面倒じゃなぁ。何度もやるのか?
魔力はまだまだ余裕なんじゃが、だるいのぅ。具体的にどのくらいまでやるのかの?」
「王が契約解除をするまでだ」
「面倒くさいのう……。
おい人間、さっさと諦めてくれ。
アキラはやるといったらやるからの」
そういって、リースは再び腕を飛ばす。
しばらく放置してから、またくっつけようと治癒魔法を使った。
「っぅああ、あぐぁ……。はぁ、はぁ……」
「さあ、契約を解除しろよ。
あと10数えるうちにしなければ、1人だけ助けるという言葉も無効だ。
10、9、8、7――――」
「――――わかった、わかったから!!」
「6、5、4――――」
言葉が聞きたいんじゃない、と目で睨みつける。
「≪契約の無効を宣言する≫」
王が魔法を行使すると。
パキィン!という澄んだ音ののち、カランと何かが落ちる音がした。
右腕の腕輪がなくなり、腕の下にはクソ剣が転がっていた。
じっと右手首を見つめ、持ち上げ、腕輪の姿も重さもないことを確認した。
銃でクソ剣を撃ちまくり、粉々にする。
オレからの魔力供給がなければ、ちょっと丈夫な剣でしかない。
「あははははは!これで自由だ!」
「よかったなアキラ。我もうれしいぞ」
「ああ、ありがとよリース。
……で、クソ王。約束通り、1人だけ選びな」
「子どもたちだけは助けてくれ……」
「なにいってんだ?1人だって言っただろうが。選べ。
自ら、子どもの生死を決めろ。
子どもの中で優劣をつけ、3人を殺し、1人を生かせ」
「………………アレク王子を、助けてくれ」
苦渋の選択の末、ただ1人の王子を選択した。
「「「お父様っ!」」」
三人の王女は、絶望的な声を漏らす。
「すまん……。しかし、王として、血を絶やすことはできん……」
「そうか、では。
王子――――死ね」
タァン!と一発。
利発そうな少年は浮かべていた安堵の表情のまま、その命を失った。
「なっ!?助けると言ったではないか!!」
「だから?
そんな口約束破るに決まってるだろ。
オレは、おまえらから何もかもを奪って絶望して、それから死んでもらいたいんだよ」
平然と言いきったアキラに、リースを除く場の全員が戦慄し、恐怖し、後悔した。
「どうしてこんなことに……」
「ここでどうしてっていうからこんなことになったんだよ、そこの貴族サマ。
ああ、あんたは確か金を全部奪っておいたな。
家族は路頭に迷うだろうな。父親がいなくなるんだから」
「そんっ――――!?」
引き金を引く。
次々と。次々と。
恐怖に震えている貴族。倒れ伏す近衛騎士。すべて始末していく。
「さて、宰相サマ。
あんたには世話になったな、改造オーガ、フェンリル討伐。
さよならだ」
さて。
「後は、王族だけだな」
「なんで、こんなことに……」
クソ王は王子の死体を見て頭をかかえ、王妃は王子の亡骸を抱えて、第1王女はクソ王とオレを交互に睨み、第2王女は泣き崩れ、第3王女は呆然としていた。
「勇者を対等に扱えばよかったんだ。
いきなり、人生を奪った勇者に対して優しくすればよかった。
そうすれば、きっとこの国を好きになって、力をかしてくれたろうさ」
間違いは、力を借りようとするのではなく、力を使おうとしたこと。
「じゃあ、恐怖しながらゆっくりと死んでいけ」
拳銃に、闇属性の魔法を付加。
「≪ナイトメア≫」
全員に悪夢を見せる魔法を撃ちこむ。
「「「「ぁあああああああああああああ!!!???」」」」
その状態のクソ王を、何度も何度も蹴りつけた。
悪夢に怯えているため、つねに叫びっぱなしの彼を、気のすむまで蹴りつける。
死にそうになれば治癒魔法をかけ、また蹴りつける。
「もう悲鳴は聞き飽きたな。≪ディスペル≫」
「「「「――――はっ!?」」」」
どこかうつろな表情の王族たちを、水をかけて覚醒させる。
「さて、順番に死んでくれ」
まず、第2王女。かかわりもないので、特に何とも思わなかった。
次は王妃、こちらも同じ。
そのままの流れで、第1王女に銃を向けると、彼女は指を組み。
「待って、助けて……?なんでもするから……」
「おまえにとってオレは道具なんだろ?
道具に意志はない。だから殺意も慈悲もない。
おまえに対しては、そうするって決めたんだよ。書庫の時にな。
オレがおまえら王族にとって人間だったら、助けるって選択もあったんだろうけどな」
「そんなっ、やだっ、まだ死にたくっ――――」
負の鎖の役割を一部になっていた少女は、風穴を空けてそのわずらわしい口を閉じた。
次は、王。
「クソ王。おまえがこの国を滅ぼした。
おまえが貴族を、騎士を、兵を、家族を殺す原因をつくった。
その事実を認識して――――死ね」
「――――――」
一言も許さず、引き金を引く。
あっけないもんだ。
「さあ、最後だ」
「(びくっ!?)」
「第3王女。君がオレを召喚した。
奴隷にすると知っていて、使い捨てのコマとするためオレを召喚した。
奴隷契約を結ばせたクソ王も憎いが、君が一番憎いよ。
一時期、オレの心の支えになりかけただけに」
「…………もう、名前では……呼んでくれないんですね……」
「そんなことを言いながら、テメェは今も、オレに敵意を持ってる」
「…………はい。でも、もういいんです。
家族を殺し、国を殺したあなたに敵意はあります。
ですが、もう、いいんです。疲れました」
そういった彼女は、どこかすっきりした顔をしていて。
「勇者の慰み者という運命だった私は、この国の崩壊が嬉しかったのかもしれない。
やっと、解放された気分」
満足げな――――。
「そんな顔をするな!
オレはおまえの満足のためにやったんじゃない!
オレのためだけにやったんだ!」
「ええ。だから、あなたのためだけに私を殺して」
両手を開いて。
「あなたは、わたしを縛る所有者だった」
死を、受け入れた――――。
「あなたは、わたしを救う勇者様でした」
タァン!
震える指を、動かして。
スフィアは死んだ。
「アキラ……」
「くそっ、後味わりぃ……」
リースは気遣わしげにアキラを見やる。
俯いて影になったその表情から心情まではうかがい知ることはできなかった。
「…………ふぅ、さあ、城を跡形もなく破壊して、国を出ようか」
顔をあげたアキラは力なく笑っていて、魔法とは違う、新たな仮面をかぶったようだった。
その日。
アキラの≪感染爆発≫による服従の魔法の影響から立ち直った人々が見たのは。
跡形もなく消えているペルヴィア城と、それがあった場所の巨大なクレーターだった。
そこには勇者も、王も、貴族も、騎士も、兵も。
なにも残ってはいなかった。
こうして聖王国家ペルヴィアは完全に崩壊した。
次回はスフィアの心情を書いたEX話の予定。
少し時間が開くかも。