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『勇者』の反逆  作者: 本場匠
1章:聖王国家ペルヴィア編
13/46

10:緑

 ~ノーマの村~


 一度はやってみたかった≪フライ≫で空を飛んでやってきましたノーマの村。

 楽しかった空の散歩はこれで終わり。


 村から見えないところでそっと降り立ち、のんびり歩いて村につく。


 一応柵はあるが、石ではなく木製だ。

 弥生時代の集落っぽいな。


「止まれ!何者だ!」


「依頼できた者だ。森にいるという魔物を討伐してほしい、と」


「むっ、そうか。なにか身分を証明できるものはあるか?」


「では、これを」


 タヌキ宰相からもらった紙を渡す。

 ちなみに、オレは勇者ではなく、騎士ということになっている。


「なるほど、国から……。おひとりで?」


「ああ。オレは一人の方が楽なんだ。仲間を気遣うと派手に攻撃できないんでな」


「わかりました。では、村長の家まで案内します」


「村長?」


「ええ。獣を見たのは村長でして。遠吠えのような声が聞こえるため、その後森は立ち入り禁止になったんです」


「ふーん。賢明な判断だ」


「ですが、森で得られる食材や薬草がなければ村もやっていけなくて。今はたくわえを少しずつ消費してなんとか繋いでいるのです。

 おっと、つきました。

 村長!国から騎士の方がいらっしゃいました!」


「おおっ!そうか、はいってくだされ」


「では、わたしはこれで失礼します」


 門番は村長の家まで案内した後、くれぐれもお願いしますと礼をして元の配置に戻っていった。


 村長のじいさんに家の中へ招かれ、テーブルにつく。

 お茶の準備をし始めた彼を遮って、話を聞くことにした。

 時間が惜しい。


「もてなしはけっこうです。それよりも、見かけた魔物についてお聞きしたい。

 村としても、早めになんとかしなければいけないでしょう?」


「しかし、あなた1人で大丈夫なのですかな……?こういってはなんですが、お強そうには見えませんで」


「村人相手に力を振りかざすほど性格は腐ってませんので」


 オレの言葉を聞いて、じいさんはぽかんとしたあと、大声で笑い出した。


「あははははっ!こりゃまいった!だれに対しての皮肉かは知らんが、騎士のお方が言う相手ってのは限られてる。

 だれが相手かは知らんが、あなたの身近に性根の腐った奴がいるのでしょう。

 これはいい。国の人間のくせに、あなたは高潔だ。どっかの貴族などよりは何倍も」


 高潔、ねぇ……。奴隷にふさわしい言葉じゃねェな。

 それとじいさん、言葉遣い乱れてるぞ。


「そんなことはどうでもいいので、魔物について教えてください」


 じいさんはまだにやけながら、思い出すように話を始めた。


「ああ、まだだれにもいってないのですがな。おそらくフェンリルだと思っております」


「なっ!?」


「フェンリルとなればA~Sランクの魔物です。魔法を使うし、動きも速い。

 しかし、縄張り意識が強い反面、よっぽどのことがなければ縄張り以外には出ないことで知られております。

 森に入らないならば、いますぐの危険があるわけじゃないでしょう」


 こいつ……。


「なるほど。あなたはひどいお人ですね」


「ほう?なんですいきなり」


「まず依頼を正体不明の魔物、とするのが上手い。これならフェンリルが出ようと契約違反にはならない。

 依頼料の増額を要求されるでしょうが、本当に上手いのはそこじゃないです」


 依頼料がおしいなら、別の魔物の討伐依頼してフェンリルと引き合わせればいいと思うのは早計だ。

 それではフェンリルから逃げても依頼が達成されてしまう。

 肝心のフェンリルが討伐されないままに。


「フェンリルとなれば、依頼を受ける人は格段に減るでしょう。ランクが跳ね上がりますしね。

 つまり、討伐に人が来ない。

 森に入らなければいいとはいっても、たくわえにも限りがあるでしょう。ずっと入らないわけにはいきません。

 はやめに討伐しなければならない」


 思えば、おかしなことがあった。


「一番うまいのは国に依頼したことです。

 国の騎士団はギルドに仕事を奪われることを嫌います。

 特にギルドができてからは民に軽んじられている。

 そんな彼らはギルドを出し抜こうとやっきだ。高ランクを引き抜いたり、勇者を引き入れようとしたり、ね。

 そして彼らはなにより――――メンツを重んじる」


 ギルドに依頼がなかったこと。

 あれはおかしい。

 国の平騎士よりもギルドのCランクが圧倒的に強い。それほど力の差がある。実戦経験の差がある。

 確実性を選ぶなら国の騎士よりギルドの冒険者だ。


 しかし、ギルドの高ランクは少数精鋭。

 彼らが運よく依頼を受けてくれるとは限らない。


「もし、この依頼に騎士が来たとしましょう。

 そして、フェンリルという予想外の敵に敗北します。騎士程度の実力なら当然です。

 だが、騎士はそこでは終われません。騎士と、国のメンツってものがあるからです。

 ギルドや民に馬鹿にされる原因になりますからね。

 それを許容できない騎士と国はやっきになって討伐軍を編成してやってくるでしょうね。

 フェンリルが討伐されるまで、何度も何度も」


「お察しの通りです。依頼を受ける側に比べてする側が圧倒的に多いギルドじゃ、高ランク冒険者がやってくるころにはたくわえがなくなります。

 その点、国や騎士なら名声をあげたいがためにすぐ受けてくれるだろうと思ったのです。

 幸い、村の名産である酒は王の御用達でもあります。

 この依頼を通すために、金と酒も送りましたから」


「そうですか。国が受けると半ば確信しての行動ですか。

 こちらにはどうして国が受けたか不思議だったのですが、酒と賄賂とはね……」


 あのクソ王はとことんオレに面倒事を持ってきやがるな……!


「にしても、村長さん?

 あんた、腹黒いことするねェ。最初の騎士は死ぬことを想定して立った計画じゃないかこれ。

 あんたが故意に情報を秘匿したせいで、ね。

 どうしてオレに話す気になったのかは知らないが、元々は見殺しにするつもりだったんだろ?」


「村長の仕事は村の繁栄と村人を守ること。

 騎士は入ってないので。

 それに、こっちは高い税金払っております。

 あなたはどうかは存じませんが、お仲間の騎士は特に仕事せず、城でぜいたくしてるのでしょう?」


 残念ながら、それは騎士であって、勇者には適用されないんだよ。


「まあ、いいさ。フェンリル程度狩ってこなくちゃ戦争はできない」


「おいおい、いいのかよ。あんたが珍しくいい騎士だったから話してやったのに、無駄死にする気か?」


 立ち上がり、出ていく。

 その途中、振り返って笑ってやった。


「オレが死んだら国に伝えればいいさ。当初の予定通り次を待てよ。じゃあな」


 じいさんの作戦は成功確率は高いが、ある前提の上に成り立っている。

 国のやつらが、メンツと命、どちらを天秤にかけるか。

 やつらは村なんて見捨てるだろうさ。それだけ腐ってる。


 運のいいことに、「賄賂ももらったし、ちょうどいいから勇者の力試しにでも使おう」と思われなければ。

 この村は終わっていただろう。


「ま、イフのことを考えてもしょうがない」


 利用されるのはシャクだが、じいさんの村のために全力を、本気で全力を振り絞る様は好ましい。


 やってやるさ。




 ~森~



「さっさと済ませようか……」


 フェンリル討伐が終わったら、もう時間がない。

 召喚されてから1月まで、10日を切る。


「いろいろとやっておかなきゃならないことが多いんでな。

 悪いがさっさとやらせてもらおう」


 フェンリルを討伐したとなれば、勇者の力は本物だということになってしまう。

 だから、さっさと終わらせて準備したい。


「ソッコーで終わらせて、期限のあと5日まで城に≪ステルス≫で忍び込んで暗躍しねぇといけないんでね」


 亜空間から双刀「天地」と鞘を取り出し、腰の横に二つ装備。

 また、シグとベレッタを防具と一緒につくっておいたホルスターに入れて腰の後ろへ。



「≪サーチ≫」


 魔力の波を一気に広げる。

 マップ上。

 魔物を示す灰色の光点が多く存在する。

 そこへ、万が一フェンリル以外がいる可能性も考え、大きな魔物でフィルターをかける。


 残った光点――――名称表示させると「フェンリル」。


「マジでか……」


 とりあえず、フェンリルの姿でも拝んでやろう、と光点の場所まで移動。

≪ステルス≫を使って、忍び寄る。


 いたのは、悠然と寝ている銀色の狼。

 神狼・魔狼・氷狼、あまたの名を冠するフェンリルは威風堂々としていた。


 一歩、また一歩と近づいていく。


 しかし次の瞬間、急にフェンリルが起き上がり、真っ直ぐとオレを見た。


(なっ!?気づかれてる!なんで!?)


 確信する。きょろきょろとあたりを探るのではない、威圧と挑発の入り混じった眼光がこちらを突き刺している。

 なぜかはわからないが、バレている。

 しかし、攻撃無効の≪ステルス≫を信じて、間合いに入った。


「――――ッ!!」


 背筋に走った恐怖に押されるように、アキラは屈む。

 その数センチ上を、フェンリルの爪が通っていた。

 ぱらぱらと、アキラの髪の毛が舞った。


(マジかよ!≪ステルス≫中だぞ!?)


 驚いたのは完全に居場所がバレていたことともう一つ。

 髪の毛が、舞っていたこと。


(≪ステルス≫に干渉できるのかこいつ!?)


 検証は後でいい!

 今は≪ステルス≫が役に立たない前提で動くしかない!


「ちっ、仕方ねぇ!」


≪ステルス≫を解いて、姿を現す。

 フェンリルはだれかいることは確信していたようだが、少し驚いたような顔を見せた。


『ほう、幽鬼の類と思いきや、生きた人間とはな』


「……話せるのか?」


『人間如きの言葉、千の時を生きる我等にとっては赤子でも容易く使える。

発声はできんが、念話くらい容易いことだ』


「なんでオレがいるってわかった?」


『おかしなことを言う。在るモノは在るだけで存在感を発している。

 たとえ、幽鬼でも』


 わけわからん。もっとわかりやすく言ってほしい。


「……そうかい。ご忠告どうも。

 で、フェンリルさん。早速お願いなんだが、この森から出ていってもらえないか?」


『断る、と言えば?』


「勝った方が蹂躙する。負ければ地べた這いずって眺めるのみ。

 以上も以下も以外もねぇ。一番わかりやすくて簡単なやり方だ」


 言い、力を漲らせる。


『ふっ、ふははは、いい!心地いい殺気だ!!

 強者と出会うため、人里に下りてきたかいがあった!

 同族相手ではもう飽いていたのだ!存分に楽しませてくれよ!!』


 フェンリルの毛が逆立つ。

 今まで抑えていたのだろう、溢れ出す魔力で森中がざわめいていた。


「おいおい、バトルジャンキーかよ……。

 フェンリルってのは、縄張りを侵さなきゃ無害じゃなかったのか……?」


『ふん。なにもせず、ただ毎日寝て食料を狩って、たまにくる人間を脅かすだけで生きていく一生は嫌なのだ。

 生がほしい。死の間際にあって感じる、強烈な生の実感が!

 あまた狩ってきた獲物のように、輝く命がほしいのだ!!』


「へえ、いい根性してる。共感できるモンがあるな」


 双刀、天と地を鞘から抜き。


「勇者、東城アキラ。参るっ――――!!」


『さあ、我に生を実感させてくれっ!!』



 フェンリルの特徴。

 それは速さだ。


 大きさに似合わないしなやかな体躯と、四足動物の持つ安定性。

 魔力による身体強化を行える十分な魔力。


 今まで戦ってきた中でダントツに速い。


 でも、対応できないわけじゃない。


『くははっ、我の速さに反応できるか!

 これは楽しめそうだ!』


 森に張った魔力の波をここら一帯に狭め、密度を上げてフェンリルを捕捉している。

 マップでは遅い。直接読み取って反応しなければあっさり千切れ飛ぶ。


「身体強化プラス風の鎧でも互角、いやこっちが遅いか……。

 速すぎだろっ……」


 爪や牙を紙一重でかわす。

 紙一重でしか躱せないこの状況では――――いつか、捕まる。


「くそっ、ロックオン!」


 光点に表示される【LOCK-ON】の文字を確認するよりも速く、攻撃。


「≪レーザーランス≫!」


 真っ直ぐに襲い掛かる光の槍。

 フェンリルはそれを横に跳んで避け、なお直角に曲がって追尾してくる槍に笑みをこぼす。


『はははっ、古代魔法までをも操るか!

 ならば、お返しだ!』


 障壁を張って、真正面から受け止めたフェンリルは自らの周りに浮かぶ氷の槍を複数生み出した。


「古代魔法?オレのオリジナルだっての!!」


 氷の槍すべてがオレに当たるように曲線を描いて襲いくる。

 こいつもロックオンが使えるらしいな!


「≪シールド≫!!」


 ごく普通の初級無属性魔法。

 魔力の塊を盾として生み出すだけの初歩の初歩。


 ただし、今のこれに込められた魔力は尋常ではない。


『ははっ、初級魔法で防ぐか!!』


「天、炎属性発動。地、闇属性発動」


 右手に持った刀が呼応して、燃え盛る炎を、左手の刀がうごめく闇を発する。


「――ラァッ!!」


 出しうる最高速度で間合いを詰める。

 フェンリルの足に十文字の傷をつけた。


『おおっ、我の毛を裂き、傷をつけるとは!

 これは驚いた!』


「さっきから余裕こいてんじゃねェぞテメェ」


 炎の蹂躙し尽くす侵掠性、闇の毒の如き侵食性。

 この刀で切りつけられればタダではすまない。


 フェンリルにつけた十文字から、黒い炎が立ち上る。

 それらはじわじわと足から、全身へ、少しずつ広がっていく。


「ありったけの魔力を込めてやった。オレにできる最高の毒だろうよ」


 言葉通り毒の如く、フェンリルの魔力に押されながらも、少しずつ少しずつ、銀が黒に染められていく。


『ふ、はは。はははははははは!!

 ああ、感じるぞ!これだ!これが生!これが命!!

 我をむしばむ毒を感じる!!

 毒に抗う我が命を感じる!!

 素晴らしい!素晴らしいじゃないか人間!!』


「くそっ、魔抗が高い……。侵攻が遅いな……」


 黒い炎がフェンリルの全身へまわりきるまで、後15分くらいか。


『さあ、楽しもう!もっと生を感じさせてくれ!!』


 15分、しのぎきれるか……。


「――――違う。逃げるんじゃねェ。勝つんだ」


 その惰弱な思考を、押し殺した。


「敵がでかいからって、逃げてどうする。

 打ち勝って、ぶち殺してこそだろうが」


 そうだ。こんなところで逃げられるか。


「犬コロ一匹に勝てなきゃ、国なんて落とせねェよなァ!!」


 この世界で生きていく。

 そのためには、この程度の障害なぞ、食い破ってやる!


「おぉぉぁああああああああああああああああああああ!!」


「グルゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 双刀で舞う。


 爪を防ぎ、かいくぐり、皮膚を斬って新たな十文字を刻む。


 爪と牙が駆ける。


 刀を弾き、噛んで止め、強固なカオスコートに引きちぎる。



「はぁ、はぁ……。いい加減倒れろよこの犬……」


 アキラは肩で息を吸う。少しでも気を抜けばぶっ倒れそうだ。

 服はあちこち裂けて、その下からは血がのぞいている。

 治癒魔法を使う隙を与えてくれないから血が出っぱなしだ。


『貴様こそ、その着物はどうなっている。我が全力の爪でようやく裂ける程度など……。それと、我は狼だ』


 フェンリルは苦しげに声をもらす。

 身体のいたるところに十文字の刀傷があり、そこから黒い炎がうかがえる。

 双刀・天地による浸食がほぼ全身にわたり、美しかった銀の毛並みはほとんどが黒に染まっていた。


「ふーっ、少年漫画の王道よろしく、次が最後になりそうだ」


『もう我は助からぬだろうが、勝って、勝ち取った生を感じて死なせてもらおう』


「はっ、そりゃ負けフラグだ。オレの勝ちだな」


『言っているがいい。そなたも妄言が出るほど危ういようだしな』


 オレは天地を構える。

 天の放つ炎・嵐・光。

 地の放つ氷・岩・闇。

 様々な色がまじりあい、最終的に天が白、地が黒に染まる。


 フェンリルが身を沈める。

 魔力を身体強化、牙と爪への属性付加と強化に注ぎきる。

 溢れる魔力に押され、黒に染まった毛並みが銀に戻ろうとし、色素が薄れた。


 …………。

 お互い、力を込めていく。

 ビリビリと空気が震え、木々はざわめく。


 動き出しは――――同時。


天地開闢てんちかいびゃく!!」


餓狼天声がろうてんせい!!』



 注ぎこまれた力は同格だった。

 振るう力も、互角だった。



 だから、この結果は持っていた武器の差。



『はは、我の牙が、折れるとは……』


「それを言うなら、オレの愛刀がちょっと欠けちまったぜ……」


 フェンリルの魔力強化を受けた牙と打ち合って、欠けるだけで済んだだけでもすごいのだが。



『ああ……。これが、死か。

 価値ある生ののちに訪れる、満ち足りた死だ……。

 欲を言えば、勝って死にたかったのだがな……』


「最初から死ぬ気のやつは勝てねェよ。

 みじめったらしくしがみつこうと足掻くから、生は勝てるんだ」


『ふはは、それが道理か……。結局、我はずっと生に翻弄され続けたわけだ』


 どこか自嘲に満ちた声に、オレは同意する。


「だれだって、生に翻弄されながら足掻いてんだ。

 奴隷にされたり、異世界に呼び出されたり、戦場に放り込まれたり。

 それでも、オレは生きたいんだ」


『くはっ、そんな一生ならば、それはそれは楽しそうだ』



「なら、一緒に来るか?」



『は?』


「その傷、たぶん治せる。

 おまえには、オレの味方になってもらいたい」


 ずっと考えてきたことだった。

 1人でできることには限りがある。

 直接的な復讐はオレ一人でやるが、誰一人逃がさないためには仲間がいる。


 だれかを雇うことも考えたが、国家転覆に力を貸してくれる知り合いはいない。

 裏切りも怖い。


 そんなのはタダの建前か。

 本音は、仲間が、緑色で表示されるだれかがほしかったのだ。



『好きにすればいい。我は敗者。勝者に意見する権利はない』


「オレはだれにも命令しない。

 だれかを無理矢理従えるような、オレの嫌いなヤツのところまで堕ちる気はないんだよ。

 そういうクソどもを殺すことなら、どんなに手を汚してでもやるがな」


『…………では、お主について行こう。

 やっと、生を知って楽しくなってきたところだ。

 お主と行くのなら、もっと楽しくなりそうだしな』


 地面に倒れたまま、狼はにやりと笑う。

 その傍らに歩み寄り、天地を軽く当てた。


「戻せ」


 命令に従い、天が炎を、地が闇を吸い込んでいく。

 元がオレの魔力によるものだし、できるかなーとおもって試してみたが、できた。



『お主、なにを驚いている。

 まさか、今のは自信がなかったのか……?』


「そんときゃそんときで考えるさ」


『ははっ、やはりお主を選んでよかった。退屈しない』


「じゃあ、身体を小さくしてついてきてくれ。魔力はできるだけ抑えてな」


『わかった』


 フェンリルが身体を小さくしている間に、天地で折った牙を拾う。

 これが討伐証明になるはずだ。


『終わったぞ』


 振り返ると、中型犬サイズになっていた。

 その頭を軽く撫でて。


「オレはアキラ・トウジョウだ」


『我に個体名はない。リースとでも呼んでくれ』


「あれ、メスなの?」


『そうだが?』


「そっか」


『お望みなら人型になろうか?』


「いや、いい。どうせ服がなくて銀髪全裸幼女だったりして、おかしなことになるんだ。

 オレはそんなフラグはたてないぞ」


『むぅ、そうか。お主と同じ形態をとるのもまた一興かと思ったのだが』


「オレが自由になったらな」


 そのころには、面倒なごたごたもないし自由に生きてやる。


「さて、村に戻って報告したら檻に戻るか」


『檻?お主は捕まっていたのか?』


「いずれ食い破るさ。今は油断させるために大人しくしてるけどな」


『ほう、早速楽しいことが起こりそうだ』


「ああ、楽しみにしててくれ」


 この依頼から戻ったら、勇者のお披露目まで秒読みに入るだろう。

 その日に、決行する。


 勇者に、無関係な他人に押し付けてきた分、国も、民にも、しっかりと反省してもらおう。

そろそろ国の終わりも近いです。

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