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『勇者』の反逆  作者: 本場匠
1章:聖王国家ペルヴィア編
12/46

9:準備

 ~王都ペルヴィア、城外~



「はじめてのがいしゅつ!」


 路銀として金貨1枚と銀貨50枚を受け取り、勇者とバレないように、フードをかぶり、準備万端!


 後をつけてくる監視役たちはそうそうに巻いて、と。

≪サーチ≫を使うまでもなく気配でバレバレ。もっと精進しなされ。


「まずは武器屋だな」


 ふはは、大手を振って武器を買える。

 クソ剣以外の武器を。


 実は、こっそり狙える武器(スフィアがまた許してくれるとは限らないからな)、弓でにっくき第1王女の頬をかすらせる遠距離狙撃を試してみようとしたのだが、引き切って、狙いをすました後に矢が放せなくなった。

 仕方なく腕を下ろす。

 これはクソ剣の特性というわけではなく、奴隷契約のせいだろう。

 主人への攻撃不可。

 ま、拳や魔法が不可である時点でわかってたことだけどな。

 落ち込んでなんていられないぜぃ。



 さてさて、今回は国を滅ぼすための武器ではなく、クソ剣をぶっ壊した後、王都を出て生きていくための武器をあらかじめ買って慣れておこうという目的だ。


「しかし、何を買おうか……」


 日本人の心意気としては、刀がほしい所だけど、ないんだろうなぁ……。

 あと、銃があったらほしいんだけど、ないんだろうなぁ……。


「らっしゃ~い」


 やる気のなさそうな店主に迎えられた。

 オレが小僧だから、冷やかしだと思ってるんだろう。


「≪サーチ≫」


 おやじを無視して、店内の武器を隅々まで見ていく。

 攻撃力、耐久性、素材、付加魔法の有無。すべて丸裸だ!


「しょぼっ……」


 大した武器はなかった。

 期待して、カウンターの向こうに飾られている槍を見てみた。


 検索結果。

 名称:火槍・銘無し。

 タイプ:ランス。

 能力:火属性付加。火属性ダメージ10%減。


 その下にも耐久値や重量、製作者名などがついていたが見るのをやめた。


 見切りをつけて、別の武具屋よりも近い、防具屋に行くことにする。


「炎属性ならまだしも、火属性じゃねぇ?

 自分で造れば炎属性とか余裕だし」


 ん?


「高い魔法剣を買うより、同じ値段のいい剣を買って、自分で付加すれば最強レベルの炎属性つけられるな……。

 いや、待てよ……?

 そもそも、魔法創造で≪武器創造≫魔法を創れば武器は創れる?」


 気になったのなら検証すべし。

 それが鉄則。


 というわけで、誰にも見られない場所で、集中してできる場所……。

 近くにあった宿屋に1泊分の料金を支払うことにする。

 部屋に入って、音漏れ防止の≪サイレントフィールド≫、監視防止の≪ブラックカーテン≫という魔法を部屋にはる。

 前者は静寂・浄化が主な水属性に、似た魔法があるが、後者はオリジナルだ。


 さて、なんの素材でできた武器にしようか……。

 この世界にはファンタジーの王道、オリハルコンやミスリル、アダマンタイト、ダマスカス鋼が存在する。

 それで創ったものがどういうものなのかわからないので、とりあえずひととおりやってみよう。

 おおっ、オラわくわくしてきたぞ!


「おっし。準備おっけ。失敗したくないし、詠唱すっか……。

≪クリエイトウェポン≫」


 まずはミスリルから……。


「≪其は銀。染まることのない高貴で聖なる、鋼をも凌ぐ真なる銀。ミスリルブレード≫」


 パァアアッ――――!


「……できたっちゃできたけど……なんだ?」


 出来たのは、ミスリル、というよりただの銀の刀っぽい。

 なんかちょっとくすんで見えるというか、しょぼい?

≪サーチ≫してみると、「シルバーブレード」となっている。

 イメージが弱かったってのと、完全に無から創ろうとしたからかな。

 直観だが、どっちもな気がする。


「幸い、銀の刀はできたから、これをミスリルに変えようかね。

≪クリエイトウェポン≫

≪其は銀。染まることなく、高貴で聖なる、鋼を凌ぐ真なる銀。ミスリルブレード≫」


 もう一度、銀の刀が光って、より輝かしい刀が出来上がった。


「ふむ。≪サーチ≫してっと……。おおぉ!ミスリルだー!!」


 めっちゃテンションあがるな!

 架空の武器のミスリルさんだ!しかも刀だ!!



「じゃあ、お次はオリハルコンに行こうかね。青銅の刀創って、オリハルコンに精製って感じでいいかな」


 ブロンズブレードを創り、その後オリハルコンに。


 同様に、スチールブレイド→アダマンタイトブレード&ダマスカスブレードを創りあげる。


「てれれってってれー!武器をいっぱい手に入れた!」


 さて、こいつらの特性を知るか。


「≪サーチ≫」


 ふむふむ。


「オリハルコンが一番強いな。でも、ミスリルの方が魔法伝導効率がいい。付加魔法には最適だな。

 硬度でいうとアダマンタイトだな」


 残念ながらダマスカスは上記三つには敵わない。でも、せっかく創ったしなぁ……。

 とりあえず今考えた≪チェンジインゴット≫でもって、ダマスカス刀を鉱石の塊にして亜空間に放り込んでおく。

 いつか使う日も来るだろう。


「しっかし、うーん、どうしよう。

 攻撃力も捨てられんし、刀に魔法纏わせたいし、整備の仕方知らないから丈夫さもほしいし……」


 やっぱオリハルコンかなー。

 魔法伝導効率と硬度で負けてるって言っても、少しだけだし。

 それに刀はオリハルコンことヒヒイロカネって感じもするし。


「しかし捨てがたい……。むぅ。よし、混ぜよう。

 魔法創造で≪融合魔法≫を創っちまおう。

 ミスったらまた創ればいいだけだし」


 オリハルコンとミスリル、アダマンタイトを手に取り。


「≪フューッ、ジョン。はぁあああああああああ!!≫」


 詠唱はイメージだ。

 最も強い融合のイメージはこれだった。

 ゴテ〇クスばりの超進化を遂げてやるぜ!


 パァアアッ――!


≪クリエイトウェポン≫の時もみた発光ののち、現れたのは見た目銀に近い色の刀。

 しかし、見る角度によって、黄金色、緋色、銀、灰などなど、様々な色にも見える。


「≪サーチ≫……。

 ふむ、名称がカオスブレードになってる。能力値はっと……うおぉ!?たけェ!!」


 まさにいいとこどり。

 そうなるようイメージしたのだから、その結果ともいえるがこれはうれしい。


 そして何より、美しい。

 クソ剣を初めて見たとき、感じさせられた魅惑よりも、強烈な感動。

 やっぱ日本刀は美術品としても一級だねェ。


「いやいや、呆けてないで。

 さて、もう1本創るか。

≪コピー≫」


 カオスブレードが2本。

 双刀。それがオレが望んだ武器だ。


「さて、属性付加しようか。

 全属性付加して、マジでカオスな刀にしてやんよ」


 これが双刀にした理由。

 1本にまとめようとすると火と水、土と風、光と闇、対消滅しかねない。

 ならば、2つにしてしまおうということだ。


「片方に、炎、嵐、光。もう片方に氷、岩、闇を付加してっと」


 基本属性ではなく、すべて強化派生属性にした。派生属性でも、基本魔法は使えるから問題ない。

 大は小を兼ねるってね。


「これでわざわざ付加しなくてもいいな。

 炎、嵐、光を『天』氷、岩、闇を『地』と呼ぶか。付加した属性も空と大地、上と下って感じだし」


 名前を付けると、≪サーチ≫の名称欄がカオスブレードから、天と地に変わった。


 さて、次にいこう。


「≪武器創造≫ができるってことは、銃が創れるじゃねぇか……。うはははは!」


 同じ手順で、カオスガン(あんまかっこよくないな)が2丁できた。

 ちなみにイメージしたのはSIG SAUER P226とベレッタM92FS。

 元の世界でこれらのモデルガンを持っててイメージしやすかったからな。


「イメージ勝負だからこの2つでいくか。デザートイーグルとかリボルバー系も欲しかったが、それはまたいつか、だな」


 ちなみに弾丸は必要ない。

 魔力、魔法を込めて撃つように設計したので弾数無限。

 なのでフルオート機能もつけてみた特別品だ。

 ファンタジーはなんでもありで助かるね。


 ついでに、P90というあの有名な特徴のある形のサブマシンガンも2丁創った。

 ぶっちゃけ2丁拳銃にフルオートつけちゃったからあんまり使う機会はこないかも。

 でも創りたかったから創っちまうことにした。反省はしていないし、するつもりもない。


「狙撃銃もそのうち創ろう。

 でもイメージできるかなぁ……。あーあ、もっと銃の出てくるゲームやってればよかったなぁ……」


 P90を亜空間に放り込んでっと。


「次は防具だな。鎧とかは重いし好きじゃないから、外套にしよう。

 ついでに普通の服もめっちゃ防御力高くしよっと」


≪防具創造≫魔法を創って、防具を創りだす。


 カオスコート、カオスシャツ、カオスパンツを手に入れた。


「コートとシャツ、ズボン程度でいいか。さすがに下着まではいいだろう」


 そこらの鎧なんて目じゃないほどの防御力と耐魔性能だ。

 打撃も魔法もほとんど弾いてしまう。


「うーん、でもなぁ……。この派手な色はどうにかならんか……」


 カオスシリーズの象徴たる変わる色は武器とかならかっこいいが、防具となると……。

 ぶっちゃけ派手だし、目立つし、目がチカチカする。


「色彩変更の魔法創るか。

 気分はゲームのキャラメイクだな。

≪チェンジカラー≫」


 外套、シャツ、ズボンを黒系の色で固めてみた。

 おしゃれ低級者であるオレには派手な色は難しい。

 黒ばんざーい!



「さて、金も余ってるし、雑貨でも買いに行こうか」


 装備を買うはずだった路銀は宿代のぞいて丸まるあまっている。

 水筒とか、バッグとか買っていくか。

 正直、水魔法と亜空間魔法があれば事足りるのだが、身一つで旅をするやつはいない。

 悪目立ちするに決まってる。カモフラージュできることはしておこう。


 雑貨屋に行って、水筒とバッグを買う。

 そこで、見つけた。


「あー、ナイフがあったか……」


 無人島に1つだけ持っていくならナイフという答えがあるほど万能な道具だ。

 旅するなら必需品だろう。採取に剥ぎ取り、調理に攻撃なんでもござれ。


「買うのもったいないからインゴットにしたダマスカスでナイフ作るかな。

 あー、でも木目模様のナイフって目立つかも」


 店のおばちゃんと交渉し、鍋などの調理器具一式と一緒に買うことでナイフをおまけしてもらった。

 旅のお供においしい料理は欠かせない。

 携帯食料なんてまずいもんは喰いたくないしな。


 ダマスカスを剥ぎ取り用に、買ったヤツを包丁替わりに使うことにしよう。

 魔物はぎ取ったナイフで調理したものはちょっと食べたくないし。


 次は食料品店に行き、調味料や食材を買ってバッグに入れるふりして中につくった穴から亜空間へ。


 そうやって散策しながら準備をすませていると。


「ギルドか……」


 今を逃せば登録の機会はないかもしれない。

 次に外に出るときは魔物討伐か国の崩壊の時。


「次も魔物討伐があるとは限らないし、今のうちに行っておくか」




 ~ギルド~




 うわー、ガラの悪そうなやついっぱいだ……。

 当然のことだが、みんな引き締まった体つきの上、武器を持っている。


「ギルドへようこそ。登録ですか?」


「あ、はい。どうしてわかったんです?」


「ギルドに来て、だれかを待つでもなく、依頼ボードを見るのでもなく、依頼達成を報告しに来るのでもない。さらに言えば、きょろきょろしてたら、それは初めて来た人って思うでしょう?

 もう何年も勤めてますから、同じような人を何度もお世話しています」


 そう言って、受付さんはにっこりと笑う。


「なるほど。じゃあ、登録お願いします」


「ではこちらの紙に必要事項を書いてください」


 名前。職業。魔法が使えるか否か、属性はなにか、そのくらい。


「魔法が使えるかとか属性とか絶対書かないとだめなんですか?」


「確かに自分の力を明かしたくない人もいますから、絶対ではないです。

 ですが、書いておくと他の冒険者から後衛や回復要因がほしいという依頼がくることもあります。

 パーティーをつくるときのコネにもなりますし、知り合いをつくれますよ」


「他の冒険者に、って。教えちゃっていいんですか?」


「もちろん、全員に言うわけではありません。あくまでギルドからの紹介、として依頼者本人に話す程度です。

『こういう人たちがいますが、どうしましょう』と。ああ、強引に参加させることもありませんから安心してくださいね」


「ふーん」


 なに属性にするのがいいか……。

 光と闇はだめだな。めずらしいし。

 コネはあって困るもんじゃないから欲しいし、ここは回復系が使える水かな……。


 名前はアキラ。水、と書いて、提出する。職業は冒険者としておいた。

 偽名にすることも考えたが、追っ手などはすべて潰せばいい。


「はい、承りました。アキラさん、ですね

 では、こちらのカードを持ってください」


 言われるがまま、さしだされたプレートを手に持つ。

 すると、プレートに文字が浮かび上がった。

 さっき紙に書いた項目に加え、ランクEと書かれている。


「それは個人証明にもなりますし、依頼を受けるとき、達成時に必要になるので失くさないでください。

 再発行にはお金がかかりますからね。

 あ、見せたくない部分は消えろと念じながらこすれば見えなくなりますよ」


「おお、ほんとだ。」


 とりあえず、名前と職業欄だけ見えるようにしておく。


「ではギルドについての説明をしますね。

 ギルドでは依頼の仲介とモンスター素材の買い取りを行っています。

 依頼はボードに張っているものを持って来れば受けられます。

 原則、1人1つしかうけられません。

 依頼には討伐、採取、護衛、雑用までいろんな依頼がありますから、自分にあったものを捜してください。

 ランクはSからEまで、ランクアップは2つ上のランク1回、1つ上のランク5回、同ランク10回の連続成功です。

 途中失敗すれば最初から数えなおしになりますから、身の丈にあった依頼を受けてくださいね。

 そうでなくても、無茶して取り返しのつかないことになる人もおおいですから」


「気をつけます」


「はい。では、質問はありますか?」


「討伐の証明はどうするんです?」


「モンスターの部位を持ちかえっていただきます。盗賊などの場合は、その首か武器を。

 報酬はその時点にお渡ししますが、ギルドが調査団を派遣して確認しますから、ズルしたら降格か、ギルドの使用禁止になりますよ」


「じゃあ、依頼にないモンスターを倒したら?

 偶然出会って、討伐した場合とか」


「その場合も、証明部位を持ち帰って、依頼が出ていればその報酬をお渡しします。

 依頼が出ていなくても、報酬は出ませんが証明部位を売ればお金になりますね」


「わかりました。ありがとうございます」


 受付の人に礼を告げ、依頼ボードを見に行く。

 受けるつもりはないが、どんなものがあるかは知っておこう。

 ここに張り出されているということは、近隣にいるモンスターってことだし。


 グレイウルフ、フリーズウルフ、フレアラット、ホワイトスネーク、グレイリザードくらいか。

 そこまで強いモンスターはいないみたいだ。


「他には……えーっと、ノーマ村の例の討伐依頼はないのか……」


 一応、村近辺の討伐依頼を見て、どんなザコ敵が出るのかを確認しておく。

 採取依頼にも、「~がでるのでランクC以上」とかいう言葉があるのできちんと見るのが吉だ。

 

「よし。じゃあ、明日に備えて帰って寝るか」


 ボスの情報はない。

 敵は会って見なきゃわからないってことか。

 さてさて、正体不明の魔物、ね……。


 鬼がでるか、蛇が出るか。

予想外のチートっぷり。

アキラくんは基本チート使えば何でもできますが、使えることと使うことは別物なので、ちょいちょい面倒な道を行きます。

生温かく見守ってやってください。

復讐前日くらいにアキラくんの心情話が入る予定。

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