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『勇者』の反逆  作者: 本場匠
1章:聖王国家ペルヴィア編
11/46

8:疑問と改善

いつの間にやらPVが累計70,000アクセスを超えていた。

びっくり……。ありがとうございます。

 やりすぎた。

 能ある鷹は爪を隠す作戦のはずが、ゴーレム3体と改造オーガをあっさり倒してしまった。


「調子に乗ったって言うか、初の殺し合いで心の余裕がなかったって言うか……。

 でも、改造オーガとか聞いてねぇよ……。言っとけって」


 そう、改造オーガ。


 本来のオーガはランクB。確かに強い魔物だが、あれほどじゃない。


 筋力は勇者に匹敵するほど強くはない。

 オレの3割近い力で切りかかって、かたく感じるほどその皮膚はかたくない。

 ゴーレムをオレの力を計るための囮にし、ゴーレムを倒して気を抜いた瞬間を狙い澄ますほどの知能はない。


 3つ目に関しては、あの時はゴーレムへの敵意やランクBの持つ本能かとも思った。

 だが、3つも並ぶと個体差や本能で説明をつけられないほど異常だった。



 そこで、毎度おなじみ≪サーチ≫さんのご登場です。

 回収されたオーガの死体を見に行き、調べた。


 あの時はオーガと紹介され、見た目も資料で見たのと変わらなかったから名前の欄を気にしていなかった。

 弱点や急所の検索結果しか見ていなかったのだ。


 改めて、オーガ本体の個体情報を調べる。


 検索結果。

 名称:改造オーガ。

 種族:オーガ亜種。

 特記事項

 ペルヴィア王国によって、近隣の洞窟討伐任務に向かった騎士団がオーガの調査目的として捕えた。

 あらかた調査を済ませた後、勇者の力試しとしてその身体を魔法の調整を受ける。

 筋力は素体の約3倍。

 神経系の伝達速度約1.5倍。

 知能約2倍。(元が低すぎるのでそう高くはなかった)

 皮膚の硬度約3倍。

≪サーチ≫によって知りえた情報はまだまだあったが、それ以上は見たくなかった。


「おぞましいな……」


 この後、このオーガは解剖されるのだろう。

 どうせ殺すのだから、勇者の力試しにしようという魂胆だったらしい。



「…………≪サーチ≫」


 自分に≪サーチ≫をかける。


 検索結果。

 名称:東城アキラ。

 種族:人間。

『勇者』。

 能力:身体能力限界突破。成長限界突破。魔力無限大。魔法創造。

 特記事項:隷属契約の腕輪を装備。

 etc...


 ズラ―ッと表示された情報を眺めていく。


「オレはなにもされてないみたいだな……。よかった……」


 クソ剣を受け取った後、意識を失ってから目覚めるまでになにかされたのではと思ったが、そこまで腐ってはいなかったらしい。

 本当によかった……。


「このツケはしっかり払ってもらうとして、これからがヤバいな」


 改造オーガをあっさり倒してしまったのだ。

 あれが改造オーガであることを知っているヤツには、オレの強さがバレた。

 近隣の魔物討伐ならいいが、戦争にかり出されるのは御免こうむる。

 幸い今は停戦中。

 勇者が一騎当千になったら攻め込む腹積もりかもしれんが、そのころにはこの国はない。

 なくしてやる。


 さあ、書庫でいろいろ読み漁って、後は自主鍛錬だ。




 ~アキラの部屋~


 訓練場での殺し合いから3日。

 この3日でわかったことは2つある。


 まず1つ目。

 元の世界に帰るのは絶望的だということ。


 書庫を見つけてから、契約解除よりもさきに送還の方法を調べていた。

 元の世界に帰っちまえばこんな腕輪はアクセサリーで通用する。


 さて、魔法陣の構成を知るものが皆死んで、失われたのはすでに調べた。

 これ以上は本だけでなく、実際に見てみないと無理。

 そこで新たに造った存在を消す(物理攻撃、魔法攻撃無効。臭いも気配もなくなる)魔法≪ステルス≫を使って儀式の行われた部屋に忍び込み、≪サーチ≫で魔法陣を調べた。

 結果、あの魔法陣は召喚専用であり、送還は行えない。

 召喚だけならあそこまで巨大な魔法陣はいらないが、勇者に特殊能力を与える魔法陣がアレを大きくしている。

 魔法創造を行おうにも、下手すれば次元の狭間に取り残される可能性が高い。そんな危険はおかせない。

 魔法陣を壊そうと思ったが、大騒ぎになるので今は我慢した。



 そして、2つ目。


 それは≪サーチ≫についてだ。


 今現在、オレの創った魔法の中で亜空間創造に並ぶ便利魔法。


 そのマーカー機能。

 マップ上に存在する見方、中立、敵ユニットを緑、オレンジ、赤の光点で示す≪サーチ≫の昨日の1つ。


 ここで、まず復習しておきたい。

 魔法創造はイメージだ。東城アキラが『こうあってほしい』と願ったイメージの結果『そういう』魔法ができる。


 しかし、イメージが曖昧だった場合、どうなるか。

 一度試したみたことがある。

 結果、「なんか細かいとこはよくわかんないけどいい感じ」に調整される。

 おそらく、無意識下のイメージのたまものなんだろう。


 さあ、マーカー機能に戻る。

 マーカー機能を創った本質、オレのイメージは「ユニットの居場所と動きの把握」ではなく「城内のの居場所と動きの把握」だった。


 思い出してみると、城内のマーカーが真っ赤っかというのはおかしいのだ。

 中立はオレンジ。実際に、オレのことを知らない・・・・街の人間はオレンジだった。


 おかしいじゃないか。


 オレのことを『今代の勇者』としてしか知らない人間は城内にもいる。

 謁見の間にいなかった人間がそうだ。

 それに、謁見の間にいたヤツらにしても、オレの事を奴隷だとは思っても敵だとは思っていないはず。

 道具なのだから。意志のない道具に敵意を持つヤツはいない。

 つまり、城内の人間はオレンジで表示されるべきなのだ。

 中には地位を脅かす勇者が嫌いな騎士団や魔法部隊のやつもいるだろうが、少数派のはず。




 これに気づいたのは、昨日の事だ。

 魔法陣の≪サーチ≫を終えて少しヒマになった後、改造オーガをけしかけた報復に城内の宝物をいくつかかっぱらおうと思ったのだ。

 ついでに前に思いついた王族用の隠し通路とかないかと探してみようとも思った。


 そこで、マーカー機能を使ってだれにもバレないようにスニーキングしていたのだ。

≪ステルス≫を使えばどうどうと歩いても認識されないのだが、それじゃあ楽しくない。

 気分はスネークさん。レッツスニーキング!


 そして、スフィアに出会った。


 スフィアのマーカーは――――オレンジ。

 中立。



 以前、≪サーチ≫にマーカー機能をつけたとき、最初に城内の人間全部をマーカーで見た。

 真っ赤っか。


 つまり――――スフィアのマーカーは、赤だった。


 そりゃそうだ。いきなり切り殺そうとしたのだし、敵意を持ってるだろう、と思った。

 今中立だということは、敵意はなくなったのか、と思った。


 と同時、疑問がわいた。

 

 オレ敵意を持っている相手が赤マーカーになるのか。

 オレ敵意を持っている相手が赤マーカーになるのか。

 


 これはどっちがいいとかではない。

 

 前者は、遠距離からのロックオン→狙撃の際、きらいな相手だけを攻撃できる。

 敵意はあるが、ライバル関係や利用し合える関係なら殺しまではしなくていいからな。

 デレ期に入ってないツン100%の子だって、後者なら赤だが前者なら緑だ。

 

 後者は、表面上はにこやかだが、腹のうちにある敵意がわかる。

 これで詐欺などに会う確率は激減だ!

 

 2つの可能性に気づいたので、この2つのモードを切り替えられるようにした。

 

 すると、今まではオレが敵意を持っている相手が赤、前者の設定だったことが判明。

 それを変更し、今はデフォルトではオレに敵意を向ける相手が赤、にしている。

 さらに追加設定で、魔物については灰色で表示するようにもした。


 ちなみに、変更した設定において、スフィアはオレンジのままだった。

 あと、城内のほとんどがオレンジに変わった。

 みんなオレを歯牙にもかけてない。

 演技がうまく行っているようでうれしいやら、空気過ぎてかなしいやら。


 ちなみに、赤を見つけたので名前を表示してみた。

 リーゼロッテ・フラウ。


「だれ?」


 調べてみたら、あの騎士団長至上主義の槍女でした。



「…………。

 さあ、契約についての調査と、宝物庫漁りと、王族専用秘密脱出経路探しでもしようかねー」

 忙しくなりそうだ―。




 そう思ってたのにっ……!


「今日、リード王からお話があるそうだ。

 一刻後に謁見の間に来いってよ」


 改造オーガと戦う原因をつくりやがったクソ騎士団長が、食堂で朝食もぐもぐやってるオレにそんなことを言ってきた。

 ちっ、なんだよクソ王が。こっちにだって予定あんだぞ。



 ~謁見の間~


「ここ、王都ペルヴィアより東に1日ほど行った先にある、ノーマという村から『山に恐ろしい魔物がすんでいる』という報告が来ている。

 本来ならば村からギルドへ依頼するなり、騎士が討伐に行くのだがな。

 ここらで勇者殿に実戦を経験してもらいたいと思ったのだ」


「つまり、山へ行って、姿も、そもそもいるかもわからない魔物を討伐せよ、と?」


「村人の不安を取り除くのも勇者の役目ではないかね?」


 謁見の間に行ったオレがやたら偉そうな宰相っぽいやつ(食えないタヌキって印象だ)に慇懃無礼にそう言われた。

 言外に、拒否権などないと目が告げている。

 謁見の間には事情通しかいない。ならオレだって品行方正な勇者をやってやる必要もない。

 反感は抱かせないが、素直には応じてやらん。

 金を望むが、金さえ与えておけば扱いやすいオレを演じてやろう。


「路銀と報酬は?」


「は、ははは!?勇者殿は民を助けるのに金銭を要求するのか!?

 これは驚いた!」


 明らかな嘲笑にイラッとする。


「タダ働きさせる気とは、ペルヴィア王国も狭量ですね」


「貴様ッ!」


「そうでしょう?召喚されてこちらは無一文なのです。

 武器はいいとしても、騎士団の防具では体にあっていないので買わねばなりませんし、移動の馬や食料、盗賊に対する護衛。

 そういった金がなければ討伐などできません。

 そんなに民を助けたいのならば、宰相ご自身で行かれてはいかがです?

 騎士を連れず、身一つで路銀も持たず。

 まあ、すぐに逃げ帰ってくるでしょう。棺でね」


「き、きさまぁ……!!」


 語彙がすくねぇよ。貴様しか言えんのか。

 しっかし、宰相なんて国のトップレベルがこんなに挑発に乗りやすいとは。

 王は身勝手、第1王女はわがまま唯我独尊、宰相は器も小さい。改めてみてもひでぇ国だ。


「……装備や食料についての金銭ならば応じよう。だが、護衛はいらんだろう。

 そなたはオーガにも単体で勝てるのだ。盗賊如きに遅れはとるまい。

 馬は城内のものを持って行け」


「わかりました。では、報酬の話をしましょうか。もちろん路銀とは別です。善意だけでは生きていけませんのでね」


「……金貨1枚でよかろう」


 この世界の貨幣価値は、調べたところ、

 白金貨=金貨10枚。金貨1枚=銀貨100枚。銀貨1枚=銅貨100枚となっている。

 一般市民の年収が金貨5枚くらいだ。

 ちなみに、ランクBのオーガ討伐依頼が金貨5枚ほど。


 つか、よかろうって。

 なんでおまえが決めてんだよ。

 おまえ頼む立場、オレ頼まれる立場。ユーアンダスタン?


「金貨5枚。相手次第で金貨3枚までプラス。Sランクでプラス3、Aでプラス2とBランクでプラス1枚追加してもらいたい」


「なっ!」


「オーガを倒したのです。Bランクの冒険者に依頼すればそのくらいになるでしょう?」


「…………いいだろう。しかし、必ず魔物を殺してこい。

 牙か角か、なんらかの証明部位を持ってこなければ報酬は支払わん。

 くれぐれも、どさくさに紛れて逃げようなどとは思わんことだ。

 おまえの居場所など、腕輪がある限り容易に知れる。

 6日ほどで戻ってこい」


「わかっております。報酬さえいただけるのなら、尽くさせていただきますよ」


 バカな宰相だ。脅しのつもりだろうが、いいことを教えてくれた。

 腕輪には発信機のような魔法がかかっている。

 情報はどんなものでも、集めておくに越したことはないのだ。


「では失礼します。

 路銀を受け取り、装備を整えたのち現地に向かいますので」


「後程届けさせる」



 魔物の討伐のためってのがあれだが、この息苦しい城から出られる。

 いい気分転換になりそうだ。


「金を受け取って、装備を整えて向かうか。リフレッシュしよう」

予想外に長くなりそうなので、分割。

次は武器と防具。

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