08 出会い(2)
なんとなく階段を降りて、ウロウロしていると、なかなか外への出口が見つからない。
仕方なくメイドさんに聞いてみる。
「あのー、すいません」
「はいぃ!!」
「え?…えと…」
「あ、失礼いたしました!どうされましたか?」
「外へ…花壇のあるお庭に出たいんですけど、出口がわからなくて…」
「あ、こちらです!ご案内いたしますね!」
「ありがとうございます」
親切なメイドさんだぁ。あたしよりちょっと年下かな?
元気のいい子だ…
などと考えていると、そのメイドさんがちらちらとこちらを気にしている。
「あの…あたしに何か…」
「い、いえ!その!殿下のお連れになった方ですよね!?そ、その噂になってて!
気になってしまって…ってぁああすいませんー!失礼なことを!!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいー!!」
「あ…あはははー…いえいえーお気になさらず…」
なんて素直な子!ていうかわかりやすい子!
噂になってたのかぁ…まぁ、リュイさんから聞いた話じゃ
ずぶぬれで連れてきたらしいから、そりゃ目撃証言もたくさんでしょうね…とほほ。
「あの、その、私ニーナと申します!何でも言いつけられてくださいねっ!」
「あ、ありがとうございます。私はユエです。しばらくの間よろしくね」
「はい!ユエ様ですね!よろしくお願いいたします!あ!花壇こちらですよっ!」
大きく開け放たれたガラスの大窓、ここから出入りしていいみたいだ。
「ありがとう、えっと、ニーナさん?帰りは大丈夫だから」
「そうですか?私のことはニーナとお呼びくださいね!では、失礼いたしますっ!」
「はーい…それじゃあね~」
ものすごく元気のいい子だった…なんだか元気吸い取られたような気が…
まぁ、それはいいとして。とりあえず目的地に到着したからおっけー。
えと、紙はどこかな…
あったあった。
2枚拾って、あと1枚が見つからない。
花壇に沿って探してみる。
ガサガサ…
「ないよ~、3枚は飛んだはずなのにな~」
「なにかお探しですか?」
ふいに後から声が聞こえた。しかも男の声。
瞬間的に鳥肌が立った。さっと身を翻して後方確認。
そこには、簡素な上下に身を包んだ、引き締まった身体の長身の
男が立っていた。長剣を腰にさしている。
短く刈った銀髪に切れ長の瞳。
美形さんですねー。
「?どうされました」
あわわ、じっと見過ぎちゃった。
「い、いえ。大丈夫ですのでお気になさらず~」
思い切り目を泳がせて言うと、ぷっと笑って
「思いっきり、ないよ~って言ってるの聞いてしまったんですが…」
「ああ、私は騎士団副団長のクレイ・アーノイドです。怪しいものではありませんよ」
「あ…そうなんですね。私はユエと申します。わけあってお城に滞在させてもらっている者です」
「ああ、フィル様がお連れになった女性でしょうか?」
「本当に噂になってるみたいですね…その女性で間違いないと思いますよ」
「へーあなたが…」
じっと見られてちょっと居心地わる…
「それでは、失礼しますねー」
立ち去ろうとすると、
「ちょっとお待ちください。探し物はみつかったのですか?」
「…もう少し探してみるので大丈夫です」
「私もご一緒しますよ」
「いえ、そんな~副団長さんなら忙しいんじゃないですか?」
「今日、休みなんで。自主鍛錬した帰りだったので、もうあと暇です」
ちっ
空気読めない男ね。
てか、ちょっとずつ近づくのやめてよ。
あんまり近くだと困るのよ。
「じゃあ~そっち探してもらえます?紙1枚なんですけど、すいません」
「はい!了解です!」
にこっと笑って探しに取りかかるクレイさん。
うう…距離離そうと思って探し終わった方向を言ったのに、そんな素直に…
なんか心が痛むんですけど。
ガサガサ…
「ふぅーないですねぇ」
「…はい…ぅ…」
久々の外で疲れたのか、少し貧血をおこしてくらりとしてしまう。
「大丈夫ですか!?」
とっさに腕を引いてくれた。でも。
男の手。
「ぃや!」
振りほどいて、掴まれた部分を握り締め、芝生の上に座り込む。
「す、すいません!痛かったですか!?」
「ぁ…ちがいます…ごめんなさい…」
どうしても男の人の大きな手が怖い。
体に電気が走るみたいにびりってきて、過去を思い出してしまう。
忘れろっておもってるのに…くそぅ
「休んでてください、探してきますから!ね!」
「…いえ!もういいですよ、もしかしたら2枚しか飛んでなかったのかも」
明るく笑って答える。
この人はいい人っぽいのに申し訳ない。
「差し支えなければ…何が書いてあったんですか?」
「文字です」
「文字?」
「私、読み書きが出来ないので教えてもらっていたんです。
せっかくリュイさんに書いてもらったお手本だったので、探さなきゃと思ったんですけど…」
「大事なものじゃないですか、もう少し探しましょう!」
「いえ、もう…あ!!」
ふと見上げた視線の先、木の枝に引っかかった紙が見えた。
「ありましたね!よかったじゃないですか!」
「でも…あんな高いとこ無理ですよ…諦めます」
リュイさんには後で謝ろう…
「私が取りますよ?」
「え、どうやって」
手の平を木の方向に向け、にこっと笑うと
「お静かに。『 風よ 』」
彼が呟くと、風がざぁっと動き、紙が引っかかっている木を揺らした。
紙はひらひらと落ち、彼の手の中に納まった。
「はい、どうぞ」
初めて魔法っぽい魔法を目の当たりにした。
「すごい…」
「全然すごくないですよ、今のは初級くらいだし。
それよりよかったです、やぶけなくって。
細かいコントロールは結構苦手なので」
「ふふ…クレイさんありがとうございます」
ははっと笑って頭を掻く彼に、思わず私も少し笑ってしまった。
それから、部屋まで送ってもらい、心配していたリュイさんにちょっと怒られた。
心配してくれる人がいるっていいなぁなんて思ってるって知られたら
もっと怒られそう。
黙っとこう…
どうやら私は会話メインが書きやすいようです。
読みにくいかなぁ…
まあ、いいか。自己満足に近い小説だし。うんうん。