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*9話のフィル殿下視点ですー。


やっと帰ってこれたな…


ったく、コーネルのやつのおかげで滞在が伸びたではないか。


堅苦しい正装をぽいぽいと脱いでいく。


シャツとズボンまで脱いで執務机に体を沈める。


「フィル殿下」


「なんだ」


執事のヴィオが座ったと同時に声をかけてくる。

幼馴染のこいつは、仕事がとんでもなく出来るが、とにかく遠慮がない。


「本日の日程ですが」


「…ああ」


「昨日申し上げた日程に修正がございます。」


「…なんだ。」


「殿下が拾ってきたあの娘が、お目通りを希望しております。」


「…なに?」


「体調もよくなったようですし、もう城下に放たれてはいかがですか?

 いくらこちらに過失があったとしても、出自もわからぬ娘を王城にいつまでも

 置くのはどうかと…」


「…ヴィオ。あの娘に関しては何も言うなと言わなかったか?」


「しかし、私は殿下の事を思って…」


「何度も言わせるな、お前はそんなに無能だったか?」


嘲笑を交え、言葉を吐く。冷気を纏った俺にはヴィオも何も言わない。



「失礼いたしました。それでは、会議よろしくお願いいたします。」


まったく、動じない奴だ。

子供のときはもっと表情豊かなやつだったんだが…


しかし、あの娘とやっと話せるな。


「よし、まずは風呂だな…」




















コンコン


「入れ」


「失礼いたします」


招き入れた娘は、見違えるように美しくなっていた。

細すぎた体は全体的に少し丸みを帯び、肌は輝いている。

リュイの見立てか、白いドレスが似合っている。


「フィル殿下、お疲れ様でした。あの、私きちんとお礼をいってなくってその……殿下?」


首をかしげれば、動きに合わせて艶やかな黒髪がさらりと揺れる。

控えめにされた化粧のせいではないだろう、頬はうっすらとピンクで、小さな唇は瑞々しい。

何といっても、その瞳が、吸い込まれそうだ。

この世界では、黒という色は大変貴重なものだ。

その色を、2つも持っているこの娘は…



「…お前…」


「ぁ、はいっ」



はっ、俺としたことが見とれてしまっていた…。



「いや、悪い…。お茶でも用意させよう。リュイ」


「はい、かしこまりました」


「まぁ、座れ」


落ち着いたところで、渋る娘に先を促し、話を聞いた。



「…これで全部です…」



言い終えた娘の瞳はまっすぐに俺を見ていた。

嘘など決してまじってない。

そう感じ取れた。


乳母のリュイが号泣している。

無理もない。

俺だって、怒りで震えそうだ。


この華奢な娘に男2人がかりで無体をしいたなど、

許されぬ。

出来るならば、この俺が首をはねてやりたい…


この怒りを抑えるために顔を覆う。

今の俺の形相はどうなっているのか、見せたら娘が怯えてしまうかもしれない。



「あの…殿下?…その、だから私の事に責任を負ってもらわなくても大丈夫なんですよ。

 その、ご迷惑だったら、すぐにでも…」


「違う!」


大きな声を出すと、娘の細い肩が跳ね上がった。

俺としたことが…


迷惑などと思うはずがない。



城にいていいといった俺に、


「ありがとうございます」


と娘は少しだけぎこちなく微笑んだ。







俺は…



俺はあの泉でびしょぬれで、涙に濡れたお前を見たとき…



泉の女神かと本気でそう思った。



あの姿が目に焼きついて離れない。



きっと心を奪われてしまったのだ…。




王族として一人の人間に固執すべきではないとわかっている。



だが、俺の元で、何にも怯えることのない満ち足りた生活を送らせてやりたい。



自分の人生を幸せだと思って欲しい。



今は少しだけしか笑わぬ娘が心から笑ってくれればいいと、そう思う。













フィル殿下すっごいいい人なんですよー

一目ぼれだったのね♪

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