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呉藍の薔薇  作者: 散花 実桜
二章  王宮編
23/35

ちょっと未来なコ話「薔薇が咲いた後  1」

ネタばれしています。

濁しもありますが、未来なのだから仕方ないです。


本編の更新が短かったので、Blog用に用意していたものをUPしました。

もう1本は、陛下が出ますがこっちは「天上の呉藍」な話です。

ちょっと未来なコ話

「薔薇が咲いた後」




おとぎ話を語るのが趣味だった元侍女が鼻歌を歌っている。

スターニスの世継ぎの乳母にとやってきた女性は、幻の庭からやってきた。

正しく、ハイデルベーレの怪事である。

「お久しぶりです。我が愛しの御姫様」

そう言ってにっこりと微笑むマダムの腕には幼子が寝ていた。

見ても分かる程に小さい乳飲み子だ。

「私は再び姫様に使えるべく派遣されて参りました。我が子同様永久にお仕え致します」

カタッ苦しい挨拶の後、朗らかに微笑んだ元侍女はビシッと背を但し、行き成り詠唱を始める。幾重にも描かれた魔方陣。迸る蒼い光。

あの頃と変わりなくミッドナイトブルーの制服を身に纏っている。頭部の真っ白いシニョンキャップからは同色の細いリボンが垂れ下がっていた。

懐かしいままの姿。

幾分か大人びて母となった顔の目の前に光が集まる。


初めに現れたのは揺りかご。

其処へ腕の中の赤ん坊を寝かしつける。

重力に反してゆらゆらふわふわ漂う。

そして、右手を高らかに掲げると指を打ち鳴らした。

周りは何が起きたのか分からないまま、警戒だけはしている状態だった。

そんな周囲に意表を突くように、ドサドサと革表紙の本が降ってくる。

けっして、凶器ではないことに、その中の一冊がふわっとミルティーユの前に飛んできた。

ぱらぱらと紙が風に捲られ、一枚のしおりがひらりと舞い落ちた。

とっさに手を伸ばす。

「あれから探したのですよ」

掌の中では、一万分の一の奇跡。四つ葉のクローバーが押し花にされていた。

手元で留まったままの本を手に取る。

「世界の姫巫女が呼ばれた先は、王子様の結婚式―――」

その一文が目に飛び込んできた。

あの日途中で逃げた物語の本のようだ。

「ハッピーエンドですから、姫君が誕生したら今度こそお聞かせ致しますわ//////」

元侍女は、苦笑混じりにミルティーユを見る。

幼子を呵るような愛しさを込めた眼差しが向けられる。

大きなお腹を抱えたミルティーユは、言われてそれを見た。

「残念ながらすぐにお聞かせできないようです//////」

元侍女は爆弾発言を放った。

「えええ!!!」

「ハイデルベーレの名にかけて」

茶目っ気たっぷりに囁かれた予言を冷静に受け止めた元女官長が伝令に走った。


ミルティーユはようやっと懐かしさに涙を零す。

大粒の涙がぽろぽろとポップコーンが弾けるみたいに溢れだした。

その涙を指先で拭うと、「姫様は相変わらず泣き虫ですね」と目を細められた。




程なくして、世継ぎ誕生の知らせが国中に轟く。



そして、元侍女は乳母になった。










めっちゃ短い話ですが。

続きます……。


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