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呉藍の薔薇  作者: 散花 実桜
二章  王宮編
22/35

陛下の恋愛事情~オルジュ的偏愛犠牲~1

タイムアップです。

短くて御免なさい!!!

2話 陛下の恋愛事情「オルジュ的偏愛犠牲」1




新暦509年初冬。

何代も契約者に恵まれず、衰弱した敵国の王聖霊はダティルの手にかかって永きの眠りへつく。



記載上も葬られた先王ダティルが、力有る者達の中でも子供を誘拐し、戦争の最前線に配置。

目の前で幾千もの人々が死する様を見てしまった珠玉の宝石を、あれから殊更エスピガ家は可愛がった。

オルジュは一時期、片時もルリを離さなかった程の溺愛ぶりを目にしたラヴァニーユは、それが当然とばかりにすり込まれた様である。


その後、運が悪いことに腰に剣を差し騎士となったラヴァニーユは、男所帯の中にあり女の“お”の字の欠片も周りにはなかった。

育ってきた中で身近な異性と言えば、母とアネーモナ、エスピガ夫人とギュルレーク夫人。そして、ルリだけである。

主従関係にある侍女や女官、メイドは異性と呼ぶには少し遠く違う存在だった。

よって、母親達を覗けば、必然とアネーモナとルリの2人に絞られる。


よって、かなりラヴァニーユは特殊に育ってしまったようだ―――。





「姫様お目覚めですか?」

凛とした声が朧気な意識の覚醒を促す。何処か懐かしい呼び名に身体が染みついていたのか、「お早う……」と返すとむっくりと起き上がった。

視界の端にコーラルレッドのドレスが見える。

同じ赤系統でも、乳母が好んだのは落ち着いたオールドローズやワインレッドだったはず……。

反対に乳母はベビーピンクやサーモンピンクをミルティーユに着せたがった。

幼い時分、傍らに何時も居た侍女は、ミッドナイトブルーの制服姿だった。

『では、この人は誰だろう?』

「昨日は色々とありましたからお疲れでしょうが、温かいうちに召し上がった方が美味しいですから」

ミルティーユは、話しながらカーテンを開ける姿をようやっと捉えた。

乳母より随分と若い。スターニスでは珍しいストロベリーブロンドを昨日とは打って変わって、結い上げお団子にしている。

その様は、凛々しい騎士様のようで―――。

「……ルリ様?」

「ルリです!ル・リ!!」

ようやっと出た言葉がそれだった。

ピンと張った背中を捻ってルリは口元で人差し指を振った。

髪を上げただけで、大人びてみえたルリ。

其処にうらやましさを少しだけ憶えた。ミルティーユは、朝露を中で輝かせながらするりと紐解くかのように咲く花のごとく、笑いかける。

「ルリさん。お早う御座います……」

「本日から、私のことはルリとお呼び下さい。敬語も不要です。昨日付で騎士からお妃様の侍女に転職しましたので―――」

ルリは大まかな説明のつもりなのか、昨日を振り返っていた。

そう言えば、出逢ってすぐにそんな話をしていたなと想い出す。

騎士だったとは思えないほど、朗らかで人なつっこい笑顔を向けている。

流石は貴族の令嬢とミルティーユが感心していると、すたすたと部屋中を歩き回っていたルリがリボンのかかった箱を持参して戻ってくる。

「今朝方、陛下が御出になり、ミルティーユ様へと」

「陛下から?―――有り難う御座います」

ミルティーユはベッドから足を出すと腰掛け、受け取った包に手をかけた。

受け取る際には感じなかった緊張で手元が定まらない。

指を操るように動かし、恐る恐る紐解く。

チェリーピンクの大きなリボンがはらりと膝に垂れた。

高級そうな和紙をどけ、固まった指を伸ばす。

中にはドレスらしき物が入っていた。

あの頃良く好んできていたドレスに近い色の。


箱をベッドの上に置き、ドレスと共に起き上がる。

シェルピンクがふわっと揺れる。その様は焦がれた物語の姫のようで、うっとりとしてしまう。南瓜の馬車に乗って舞踏会に行くお姫様の話。

ミルティーユは数ある中でもあの話がお気に入りだった。

下町娘が王宮に召される。ある種自分は同じ体験をしているのではないだろうかと、二次元少女になっていた。

傍らで目を細めてみていたルリの眉間に皺が寄り、米神がひくつくのも知らずに、ミルティーユは夢心地である。

「お兄さま!!!」

ドスの利いた声が部屋中に響き渡り、ノックが鳴るやいなや、数名の女官がなだれ込んできた。

それは、ミルティーユの昨日の掃除仲間?だった。

ペスカは慌てて足の指をぶつけたようで、戸口で凭れて足を気にしているが、メリザナはズカズカと中へ駆け込んできていた。

ルリの咆吼は、主人への挨拶すら忘れ去るほどの凄まじさだった。

「どうかしたのルリさん?」

「見て下さいよ、この悪趣味なドレス!」

「「あらま~」」

ミルティーユが身体に当てているドレスを指さす。

ペスカとメリザナ目を丸くし、アングリ-と大口を開けたまま固まっていた。

後方から控えめにお辞儀をして入ってきたアグゥリとヌエースは、他人事のように微笑を浮かべている。

「良いですか、ミルティーユ様。このドレスは全部リボンで出来てます!」

「ええええ!!!」

「そうでしょうとも。分かりますその反応。それを着てはいけません。鋼鉄の鎧なんかではなく、殿方を喜ばせる物ですから!!!」

「どうして?」

「一本を引いても解けるような物では御座いませんが、全身リボンで包んだ状態―――即ち、ミルティーユ様自身が陛下へのプレゼントと言うことです!!!」

「でも、ルリ様。別に構わないのでは?」

「此処では、他の殿方の目に触れる心配も御座いませんし……きっと、今夜こそお役目初日に御座いましょう」

7年前の悪夢を想い出し苦虫を噛み潰した歪んだ表情のルリを擁護する物は誰一人いなかった。

此処は後宮では無い。しかし、後宮以上に後宮たる場所だ。

結婚6年目。そろそろ世継ぎを待望される歳になっている。

王を如何にその気にさせるか。主人を着飾る側が本来なら考えなくてはならないのに、王自ら与えたのだ。使える側にとってこれほど喜ばしいことはない。








中途半端ですが、他に区切りようがないぐらいにしか続きを書けてません。

期間空いてるのにこの態です。

ずっと忙しい状態が続いていて、精神が崩壊寸前の為お許し下さい。


続きが早めにアップ出来るよう努力したいと思います。

この話で、ミルティーユの核心に入らないと、ラヴァニーユとの絡みが!!!ないので。



お付き合い下さり有り難う御座いました。

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