第一話 【謎の幼女の声、そして】
目覚めるとそこは、何もないまっさらな世界だった。
端が見えない程広く、その広さは無限なのではないか、と思ったほどだ。
ここがどこなのかは皆目見当もつかない。
ふと思い立ち、さっき刺されたはずの背中に目を向けてみると、そこに傷は無かった。
しかし、まるで抉られたかのように窪んでいた。
血や血管の類は見えない。
(俺は死んだのだろうか?)
ふと思い返してみると変なのだ。
別にあの道は初めて歩きで通ったわけではなく、雨の日などは傘をさして歩いて登校していた。
そう、あんな道などなかったはずなのだ。
まあいいか、どうせ死んだっぽいし。
なんだか意識を失う直前に声が聞こえたような気がするが錯乱していたのだろう。
うん、そうに違いない
そう思案に耽っていると死ぬ前にも聞いた例の声がした。
【あなたが次の転生希望者?】
口調は先ほどとは異なっているが、声は全く同じである。
よくよく聞いてみると、まだどこか幼さが残る少女のような声だ。
いや、幼女といってもいい。
小学校低学年くらいだろうか?
しかし質問されているというのになぜか答えられない。
なぜなら、声を出そうとしても声がでないのだ。
これでは質問に答えようがない。
さてどうしようかと考えていると、少女は焦ったように
【………あっ!】
といったきり黙ってしまった
なにかあったのだろうか?
しかし声の主の姿すら見えず、声も発せない現状では何もできない。
そうこうしているうちに30秒程経っただろうか
【しゃべれるようになった?】
再び声がした。
その声に従うように、俺はこの場所に来てから、初めての言葉を発する。
「…………こんにちは?」
とりあえず挨拶でもしておくか。
しかしなぜ急に声が出るようになったのだろうか?
【それは私がこの場所の管理者だからよ】
特に何にも言ってないのに答えてくれた。
どうやら心が読めるらしい。
それじゃあわざわざ話せるようにしなくてもよかったのに。
【細かいところは気にしないでいいのよ】
適当だなおい
ほんとに大丈夫か?
案外彼女はこの仕事?に就きたてのなのかもしれない。
口で喋ると色々と面倒くさいので、心で念話をすることにする。
とりあえず名前とここがどこなのかを教えて欲しい。
【私は「■■■」、多分あなたには聞き取れないわ。そして、ここは死後の世界よ。
まあ、厳密には少し違うのだけど。】
よし。少し整理しよう
まず名前、言ってた通り全く聞き取れなかったので恐らく地球に存在しない言語だろう。
じゃあなぜ彼女は日本語を話せるのだろうか?
次にここについてだ。
やはり死んだらしい
厳密には違うとは言ってたがおおよそ正解なのだそう。
じゃあどこらへんが少し違うのだろう?
【ここは、本来とは違った死に方で死んだ人の願いを一つ叶えてくれる所よ。
貴方は本来あの事件に巻き込まれるはずではなかったの。】
俺はどうやらあの事件に巻き込まれるはずではなかったらしい。
どうしてくれるねん。
でも何やら願いを一つ叶えてくれるらしい。
どんな願いでもいいのだろうか?
【大体の願いならば叶えてあげることができるわ】
少女の声は少し誇らしげであった。
もし姿が見えていたら、恐らくそんなに大きくもない胸を張っていることだろう。
大体か。
多分変な願いでなければ問題ないのであろう。
せっかくだし死ぬ前に言ったやつと同じのを試してみるか。
"死ぬ前にやりたかった新作RPGゲームをやりたい!"
あれほど自信満々に叶えると言っていたし、この程度の願いならば余裕だろう。
しかし、少女の返答は予想の逆であった。
【死ぬ前の世界のゲームね、それは少し難しいわ】
少女は少しだけ申し訳なさそうな声で言った。
なんと無理らしい。
なんだよ役に立たなねえな、、、
【……じゃあ代わりに貴方のお好きな「RPGのような世界」に転生とかでどう?】
突然不機嫌そうに少女は言った。
そういえば心の声は聞かれているのだった。
反省、反省。
でもRPGの世界か、悪くはないな。
男なら誰しも剣と魔法の世界には憧れる。
もちろん高校生にとっても大好物である。
しかし、少女の第一声は転生希望者だのなんだの言っていたし、もしかして異世界転生くらいしかできないのだろうか?
あまり考えすぎても心の中を読まれるしやめておこう。
これ以上機嫌を悪くさせるのはよくない。
まあそれならしょうがない。
死んで、何もできなくなることに比べたらずいぶんマシである。
まあ、ゲームしたかったけどさ。
わかった。じゃあそのRPGのような世界に転生、ってやつでいいよ
【そうしてくれると助かるわ。 せっかくだし次の世界に転生する時、何か能力をあげるわ。無限の魔力でも良し。チート魔法具でもよし、世界一のパワーでも世界一の剣でもいいわよ。なんだったら容姿とかでも。】
どうやらRPG内の設定の方は割と自由度高めらしい。
さてどうしよう。あまりチートすぎてもつまらないしな。
まあお任せでいいや。
【………ほんとにいいのね?】
もちろんお任せで、との思いを心に浮かべたとたん、俺は気を失った。
*******************************************************
「……………うぅぅん」
どうやらここは外のようだ。
俺は今地面に寝転がっているらしい。
ついに異世界に転生したのだろうか?
そう考えながら重い目をこすり、ゆっくりと瞼を開ける。
ふと横に目を向けると、自分と同世代くらいだと思われる少女がいた。
金色の、きれいに手入れされているであろうセミロングくらいの長さの髪を、一つ結びにしている。
金髪ではあるが、染めているようには見えない。
地毛だろうか?
少女は隣で横たわっていた。
すやすやと寝息を立てている。どうやら寝ているようだ。
寝ていてもわかるほどの美人である。
ぱっと見た感じだと人間っぽさそうだ。
この世界には異種族とか存在するのだろうか?
エルフとか、獣人とか、魔族とか、ドワーフとか........
それについては後で調べよう。
と、さっきの続きをするように目線を下のほうに向けてみると、少女のよく育った豊満な肢体が目に飛び込んできた。
かなりの大きさだ。
寝ているし一揉みならばれないのでは?
いや、いかんいかん。
まずここがどこなのか調べなくては。
そう思い正面に目線を向けてみると
__________そこには今にも自分を捕食せんとしている、大口を開けた竜がいた。




