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魔術発展伝 ~転生してきた世界はどうやら魔術黎明期らしい~  作者: hiro
1章 転生と魔術

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1/3

【プロローグ】 

――――ピピッ――ピピピッ―ピピピピピピピッ


枕元で耳をつんざくように、その存在をいやというほど主張してくる。

その音はスマホから聞こえてくる、散々聞きなれた目覚ましの音である。

俺、木戸怜音はスマホに手を伸ばし、画面をスワイプし目覚ましを止めた。


「ふわぁ~」


と大あくびをしながら俺はベッドから起き上がる。

このような生活も高校入学から一年以上が経過し、ずいぶん身に染みてきたものだ。

もっとも遅刻癖は治るところを知らないが。


眠気を覚ますために洗面所に行き、顔を洗う。


バシャッ


鏡に映るのはごく普通の高校生の顔だ。

彼女はできたことないし、特別モテるわけでもない。しかし特に悪い点があるわけでもないフツーの顔である。

髪についた寝ぐせを直し、リビングに行く。


リビングではテレビがついていた。

どうやらニュースのようだ。


ソファーに座りながら朝食ができるのを待ち、意識のほんの一割ほどをテレビの音声に傾けていると、ニュースキャスターはちょうど次のニュースについて読んでいた。

どうやら最近話題の連続通り魔事件についてのことらしい。


「最近物騒だから学校終わったらすぐ帰ってきなさいよ」


母がいつものように小言を言っていたが特に気に留めることなく、出された朝食を食べる。

出てきたのはトーストと牛乳、納豆である。

洋とも和とも言い難い、我が家独自の和洋折衷?のような朝食である。

なぜ納豆なのに白飯ではないのか。


「いただきます」


熱々にこんがりと焼けたきつね色のトースターにかじりつく。


トーストを半分食べ終わったあたりでニュースは例の通り魔事件の被害者や犯人の特徴、これまで犯行が起こった地域の関連性についてコメンテータが自論を述べている最中だった。


どうやら襲われたのはこれまでで3人、内訳は高校生の男子1名、女子2名であった。

そのうち全てが人通りのない路地裏で殺害されていたそうだ。

犯人の特徴は身長160~175㎝ 大柄の茶髪の男性らしい。

非常に物騒な事件である。


しかし、犯行地域はこことはずいぶん離れているので問題はないだろう。


そう思い立ち、いつも通り時間ギリギリになりつつ学校に向かう準備をする。


通っている高校はおそらく進学校といってもいいであろう私立高校であった。

しかし遅刻が多すぎる。進級が危ぶまれるレベルだ。


いつも通りのブレザーに身を包み、ネクタイを締め、リュックを背負い玄関に向かった。

どうやら思っていた以上に時間はギリギリなようだ。


「行ってきます!」


と急ぎ早に高校へと向かう

高校は自宅から自転車で15分程度である。

彼はいつも通り自転車のカギを自転車に刺し、乗ろうとするとふと違和感に気づいた。

微動だにしないのである。


自転車はタイヤが裂かれたようにパンクしていた。


なにか不吉な予感を感じつつも、仕方なく彼はいつも通りの見慣れた道を、徒歩で足早に歩いた。


残念、遅刻確定である。


5分程経っただろうか、いつもと同じ道を通っているはずなのに、見慣れない裏道を発見した。

いつもは自転車でなんとはなしに通っていたから気づかなかったのだろう。


学校へのショートカットになりそうだ


ラッキーと思い、特に深く考えることはなく、その薄暗い路地へと進んだ。


進んで30秒立ったあたりだろうか、どうにも違和感を感じる。

なんとなく背後に人の気配がする。


いつもであったら特に気にすることはない。

しかし今朝のニュースが思い出された。


・高校生

・人通りのない路地


なんと今の状況二つも当てはまっているではないか!

もっとも高校生ということに関しては回避しようがないが。

さらに今朝自転車もパンクしていた。


なんか不吉だ。

考えすぎだろうか。うん、そうに違いない


そうは思ったが、見ないわけにはいかない。


心の不安を拭うかのように後ろを振り返る………が誰もいない。


誰もいない薄暗い路地は恐ろしいほどに静寂に包まれていた。


ほっと胸を撫で下ろしそのまま進もうとすると、なんだか背中を撫でられたような感触があった。

風か? とその感触を無視して進もうとするが、なぜか体が反応しない。


あれ?と疑問に思い、背中を首をひねるように確認する。


痛みは視認と同時に来た


背中が刺されていた。


それもその辺で買えるようなナイフや包丁の類ではなく、ゲームでしか見ることがないような煌びやかな大剣であった。

それが背中に深々と突き刺さっていた。


「痛ッ」


叫び、助けを呼ぼうとしたが、それは声になる前に細々と消えた。


膝から崩れ落ち、這いつくばると地面に自分の血が流れ出ているのがわかった。


何とか視線を前へ向けてみると、そこには30代前半程度であろう西洋風の顔つきをした茶髪の男がこちらを見下ろしていた。


助けてこないということは自分を刺した相手なのだろうか?


男はこちらの視線に気づくと、即座に人間とは思えない程のスピードで走って逃げて行った。

いや、ほんとに見えなかった。

ほんとに人間だろうか?


この状況を鑑みるに、どうやら自分も例の通り魔事件に巻き込まれてしまったらしい。

確かに茶髪だのなんだのいってたような。


そんなことは露知らず、血は止まることを知らない。


どうやら俺もここまでらしい。


苦節16年、楽しいことも辛いこともあったが人生とはこんなあっけないものなのだろうか。

この先少なくとも80歳くらいになるまで生き、病気で死ぬと思っていたのだが。


まあしかたがないか、これも運命である。

せめて楽しみにしていた新作RPGゲームをプレイしてから死にたかったが、今更言ったってもう後の祭りだ。


もう意識を保つこともできなくなってきた。


そんな中、ふと声が聞こえた気がした。


【汝の願いを申せ】


ん?なんか聞こえたか?

人が死にそうなのにずいぶん上から目線じゃないか、と心の片隅で思いつつもふと考え


「新作のRPGをプレイしたい」


と答えた。

まあどうせ願いは叶わず死ぬのだろうが、もしも叶った時は生き残ることができ、予てから楽しみにしていた新作のRPGもプレイでき、一石二鳥だ。


【汝の願いしかと聞き入れた】


また幻聴が聞こえたような気がした。

もう終わりなんだろうな、と思いながら怜音は意識を手放した。

そしてそのあまりにも短いその生涯は生臭い血の匂いと共に幕を下ろした。


…………………はずだった。






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