表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

03

衝撃で、体が宙に浮いた感覚だけが残った。


次に意識が戻ったとき、葉山薫はバスの窓から上半身をだらりと外へ投げ出していた。

景色が上下逆さまに揺れ、何が起きたのか理解する前に、重力が仕事をする。


「……あ」


短い声を出した直後、バランスを失い、そのままアスファルトに落ちた。


全身に鈍い衝撃が走ったはずなのに、痛みは遅れてやってくる。

意識はあるのに、思考だけが霧がかったようにぼんやりしている。


焦点の合わない目を必死に瞬かせる。

少しずつ世界が形を取り戻し、視界の端に“誰か”が映った。


バスの中で見た、赤ん坊を抱いた女性だった。


いや、正確には「だった」という表現が正しい。

彼女はもう動かず、表情も、抱いている小さな命も、完全に静止している。


「クッソが」


葉山は声にならない声でそう呟いた。


立ち上がろうとしたが、手足が自分のものじゃないみたいに重い。

世界が再び遠のき、意識が暗転しかけた、そのとき。


視界の端、少し離れた場所に“それ”がいた。


フードの男。


今度は顔が見えた。

あごのあたりに、はっきりとした傷跡がある。


男は一瞬だけ、こちらを見た気がした。

目が合った――そう思った瞬間、景色が完全に暗くなった。


――――――――――


「……起きた?」


天井が見えた。


白い。やけに清潔で、無機質な白。

病院特有の匂いが、遅れて鼻をつく。


体を動かそうとして、やめた。

動かせない。というか、動かすという選択肢が最初から存在していない。


体中に違和感がある。

視線を下げると、点滴の管が何本も自分から伸びていた。


「……生きてる?」


独り言がやけに現実味を帯びて響く。


顔だけをゆっくり横に向けると、そこに“異物”がいた。


黒を基調とした、フリルだらけの服。

いわゆるゴスロリ、というやつだろう。

年齢は自分と同じくらいか、少し上か。長い髪に、不釣り合いなくらい明るい笑顔。


葉山は怪訝そうな顔をした。


すると、その女は楽しそうに微笑んで、こう言った。


「なろう系小説みたいに転生すると思った?」


葉山が{?}の表情をを浮かべると

彼女は腹を抱えて笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ