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第7回『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』大賞 投稿作品置き場

減量ボクサーにホットケーキを

掲載日:2025/12/12

 とある閉店後のカフェにて、一組の兄妹が顔を合わせていた。

「お兄ちゃん、チャンピオン防衛おめでとう!」

「ふっふっふ、余裕だ。天才だからな」

 本田(さとる)はプロボクサー、デビューから全試合KO勝ち。若干二五才で世界チャンピオンとなった天才。

 そんな悟の悩みの種は、――妹だ。

「じゃあ行くよ。今回の新作ホットケーキ」

「おう、……お手柔らかに」

 五才年下の妹、天音(あまね)はお菓子職人、両親が経営するカフェで看板メニューのホットケーキ作りを任されている。

 悟はたまに新メニューの試食に付き合わされている。

「一皿目は黒蜜苺大福ホットケーキ!」

「……いただきます」

 ふっくら焼けたホットケーキの間に、シート状のお餅が挟まっている。フカフカとモチモチ、相反する食感が共存してる。苺の甘酸っぱさとケンカしないよう、独自にブレンドした黒蜜ソースのほろ苦さに加え、ホイップクリームのマイルドな口当たり、それらが見事に調和している。

「さあ、新作はまだまだあるからね」

 悟が一皿たいらげ、すぐさま天音は満面の笑みで次のホットケーキをキッチンから持ってきた。

「また、ずいぶんたくさん作ったんだな」

「いやぁ~、最近なんだか創作意欲が止まらないんだ。もうお腹いっぱい?」

「……いや、いけるけど」


 ――その後、合計五皿のホットケーキをたいらげた悟は、罪悪感にさいなまれつつ帰路に立った。

「……はあ、またやってしまった。今夜も寮まで、走って帰りますか……」

 体重制限に引っかかると試合に出られなくなるボクサーにとって、太ることは仕事に致命的な影響を与えかねない。

 甘いものは天敵だ。

 しかし、かわいい妹が一生懸命作ったホットケーキを『いらない』とはとても言えない。

 試食を引き受けた次の日からは、過剰摂取したカロリーを燃焼するために、過酷なトレーニングに励む悟なのであった。


 ――一方その頃、天音は一人店内に残り、ある人に電話をしていた。

「もしもし、トレーナーさん? 今回も言われた通りガッツリ食べさせましたよ! お兄ちゃんったら有能過ぎるせいで、こうやって追い込まないとすぐにトレーニングをサボりますもんねぇ。まったく困ったものですよ」

 妹たちの思惑によって、自分がチャンピオンの頂へと導かれていることを、悟はまだ気づいていなかった――。


第7回『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』

に向けた作品第二弾

第一弾から時間が空いてしまいましたが

第三弾は明日か明後日に出せたらと思います、では

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― 新着の感想 ―
これは上手ですね〜 この短さでフリとオチを簡潔にまとめたことも、主人公の設定も妹の設定も無駄を省いたという訳ではないですが、必要な部分を物語の流れに合わせて組み込んでいるのも短編としてポイントが高い…
なかなか面白かったです(^^) 最後の部分で、成程!っと感じました。 楽しく読ませて頂きました(^^)
なかなかいいお話。 負けてられないな。
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