第7回『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』大賞 投稿作品置き場
減量ボクサーにホットケーキを
とある閉店後のカフェにて、一組の兄妹が顔を合わせていた。
「お兄ちゃん、チャンピオン防衛おめでとう!」
「ふっふっふ、余裕だ。天才だからな」
本田悟はプロボクサー、デビューから全試合KO勝ち。若干二五才で世界チャンピオンとなった天才。
そんな悟の悩みの種は、――妹だ。
「じゃあ行くよ。今回の新作ホットケーキ」
「おう、……お手柔らかに」
五才年下の妹、天音はお菓子職人、両親が経営するカフェで看板メニューのホットケーキ作りを任されている。
悟はたまに新メニューの試食に付き合わされている。
「一皿目は黒蜜苺大福ホットケーキ!」
「……いただきます」
ふっくら焼けたホットケーキの間に、シート状のお餅が挟まっている。フカフカとモチモチ、相反する食感が共存してる。苺の甘酸っぱさとケンカしないよう、独自にブレンドした黒蜜ソースのほろ苦さに加え、ホイップクリームのマイルドな口当たり、それらが見事に調和している。
「さあ、新作はまだまだあるからね」
悟が一皿たいらげ、すぐさま天音は満面の笑みで次のホットケーキをキッチンから持ってきた。
「また、ずいぶんたくさん作ったんだな」
「いやぁ~、最近なんだか創作意欲が止まらないんだ。もうお腹いっぱい?」
「……いや、いけるけど」
――その後、合計五皿のホットケーキをたいらげた悟は、罪悪感にさいなまれつつ帰路に立った。
「……はあ、またやってしまった。今夜も寮まで、走って帰りますか……」
体重制限に引っかかると試合に出られなくなるボクサーにとって、太ることは仕事に致命的な影響を与えかねない。
甘いものは天敵だ。
しかし、かわいい妹が一生懸命作ったホットケーキを『いらない』とはとても言えない。
試食を引き受けた次の日からは、過剰摂取したカロリーを燃焼するために、過酷なトレーニングに励む悟なのであった。
――一方その頃、天音は一人店内に残り、ある人に電話をしていた。
「もしもし、トレーナーさん? 今回も言われた通りガッツリ食べさせましたよ! お兄ちゃんったら有能過ぎるせいで、こうやって追い込まないとすぐにトレーニングをサボりますもんねぇ。まったく困ったものですよ」
妹たちの思惑によって、自分がチャンピオンの頂へと導かれていることを、悟はまだ気づいていなかった――。
第7回『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞』
に向けた作品第二弾
第一弾から時間が空いてしまいましたが
第三弾は明日か明後日に出せたらと思います、では




