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異世界グルメ探究!!?勇者の残した「雑な仕事の尻拭い」  作者: 酒本 ナルシー。


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第67話 獣人達

しばらく歩くと、木々の奥からあたたかな灯りが見えてきた。


やがて視界が開け――

獣人たちの村が姿をあらわした。


焚き火の明かりが点々と並び、家々は木と土を組み合わせた素朴な造り。

そのあいだを、さまざまな獣人たちが行き交っている。


狼、猫、シカ、サル、タヌキ、クマ、リス、ウマ――

耳や尻尾、体格も、種族によってまったく違う。


そんな光景に、エクレアは思わず足を止めた。


「……!」


目をキラキラさせ、首を左右に忙しく振る。

完全に“動物園にはじめて来た子ども”の反応だった。


カノンは微笑んで、小さくなでる。


「いろんな人がいるね。……面白いよね」


エクレアはうなずきもせず、ただ夢中で見続けている。

その横顔は、ほんの少しだけ幼さが戻ったように見えた。


アークは後ろからその様子を見て、胸をなでおろす。


(……食事も、睡眠も、少しずつ戻ってきた。

 子どもはこうして、ちゃんと回復していくもんじゃ)


横でしゃもがぼそりとつぶやく。


「アーク様、今ちょっと顔が“誇らしげな親”でしたね」


アークはむすっとした顔で前を向く。


「ほっとけい。……わしはただ、旅の仲間として見守っておるだけじゃ」


だがしばらく歩いたあと――

横目でエクレアの楽しそうな様子を確認し、

こっそり口元が緩んでいたのを、しゃもは見逃さなかった。


笑い声や呼び声にあふれた村の中へ、アーク一行はゆっくりと進んでいった。



獣人の村の者たちは、久しぶりの訪問者に興味津々だった。

そして歓迎の印として――大きな宴が開かれた。


大きな焚き火が中心に据えられ、

周りには丸太の椅子、木皿、草の杯――

素朴だが温かみのある宴席が広がっていた。


獲れたての果物と野菜は巨大な水樽に浮かべられ、

色鮮やかな実がぷかぷかと揺れている。

どれも見たことのない種類ばかりだ。


アークは目を輝かせながら樽を覗き込み、

フルーツをひとつ手に取って光に透かす。


「ほう……これは香りが強い。

 この野菜は火を通すと甘味が出るやつじゃな……」


エクレアも横で真似をして樽の中をのぞき込み、

珍しい果物をひとつつまんでは嬉しそうに見比べていた。


アークとエクレアはまるで宝探し中の親子のように、

忙しなく目利きを楽しんでいる。


その少し離れた場所で――

カノンは村の獣人たちに囲まれていた。


猫の獣人 「そのローブ、どこで手に入れたの?」

羊の獣人 「どこのリザードマンの村の出身なんだ?」

イルカの獣人「彼氏はイルカ?」


質問が矢継ぎ早に飛んでくる。


カノンは困ったように笑いながら、手を振って答える。


「え、あ、あたしは……リザードマンじゃなくてドラ――

 えっと、その……色々あって……!

 か、彼氏はいません!!」


最後だけなぜか大声になった。


その瞬間、周囲の獣人男性陣がざわつき、

瓜をかじっていたカバが勢い余って噴き出す。


アークはその光景を横目で見て、

口の端をほんのり釣り上げた。


(……ふむ。あやつも、なかなか人気者じゃな)


しゃもがぼそりとつぶす。


「アーク様、今ちょっと“保護者の見守り顔”でしたよ」


アークは慌ててそっぽを向く。


「ほ、ほっとけい。宴を楽しんでおるだけじゃ」


焚き火がパチパチとはぜ、

笑い声が村に響き渡っていく。


獣人の村の宴は、夜が深まるにつれて

さらに賑やかさを増していった。


宴がいっそう盛り上がってきた頃。


カノンの周りには相変わらず質問攻めの獣人たちが集まっていたが、

そこへ イルカの獣人 がツルンとした動きで近づいてきた。


「なぁなぁ、そっちの――あのアライグマの獣人、珍しいな。

 あんな種族イルカ?」


カノン

「えっ? あらい……?」


その会話を、アークの耳が逃すはずがなかった。


「どこがアライグマじゃ!! お主のほうが珍しいわ!!」


宴の喧騒の中でも響くほどの鋭いツッコミ。


突然怒鳴られてイルカの獣人はびくっと肩を跳ね上げる。


「ひ、ひぃっ! ち、ちゃうイルカ!

 もふもふの尻尾で、野菜を洗ってイルカと思って――

 あれ完全にアライグマ!!」


どうやら

アークの 猫耳フード+サングラス+尻尾(自作)を装着した姿 を見て、

“川で洗い物をするアライグマ”に見えたらしい。


アークはさらに噛みつく。


「今まで数えきれんほどの物語を読んできたがな……

 イルカの獣人など、わしレベルでも初めてじゃ!!

 どう考えてもそなたのほうがレアじゃろうが!!」


イルカの獣人

「レ、レアなのは否定できんイルカ……」


まわりの獣人たちはそのやり取りを興味津々で見ながら――


獣人たち

「確かにアライグマに見えるな」

「いや、あの尻尾洗い物しそう」

「アーク殿はアライグマの獣人であったのだな!」


完全に誤解が定着してしまった。


アークは頭を抱え、地面を見下ろしながら肩を震わせる。


「……猫耳は正義じゃと言ったわしの苦労はどこへいったんじゃ……」


しゃもがため息をつく。


「アーク様、毎回コスプレで遊ぶからです」


「遊んどらん!! これは身を隠すためじゃ!!

 けっして趣味ではない!!」


しかし――

村の獣人全員が「アライグマの獣人」と納得してしまっている以上、

弁明の余地はなかった。



落ち込んだまま焚き火の前でキュウリをボリボリかじるアーク。

表情は平然を装っているが、耳(猫耳)がしょんぼり気味なのは隠せていない。


そこへ、ライオンの獣人が豪快に笑いながら近づいてきた。


「どうしたトラ? フルーツや野菜が口に合わなかったトラ?」


アークはぶっきらぼうに視線をそらしながら、キュウリをもう一口かじる。


「べ、別に気に入らんわけではないわい。うむ、美味いぞ」


(※明らかに機嫌が悪いが、意地でも理由は言わない)


しかし、ライオンの獣人はまったく気づく気配がない。


「それならよかったトラ。アライグマの獣人なんて珍しいトラ。今日は存分に楽しんでいくトラ!」


焚き火の火が静かに燃える中、

アークの肩がピクッと跳ねた。


(追い打ちをかけられた)


キュウリを握る手がプルプル震え、ついに堪忍袋の緒が切れる。


「わしはアライグマではないわい!!

 ――というか、ライオンのお主こそ何故語尾が“トラ”なんじゃ!! おかしいじゃろうが!!」


村の空気が一瞬止まる。

周りの獣人たちが気まずそうに視線をそらす。


ライオンの獣人は腕を組み、どっしり頷いた。


「オレは昔から“強い獣=トラ”だと思ってるトラ。

 だから語尾に付けてるトラ。ライオンだがトラが好きトラ。文句あるトラ?」


揺るぎない自信。

一切迷いのない返答。


アークは口をパクパクさせたまま固まる。


(つ、突っ込み負けた……!?)


しゃもがため息をつきながら焚き火の近くへ滑ってくる。


「アーク様。そろそろ立ち直ってください。

 見た目がアライグマ扱いなのは……まあ、実際似てますし」


横目で見ていたカノンとエクレアが、くすっと笑う。


気まずさと、ちょっとした屈辱と、なぜか敗北感。

アークはキュウリをもう一口かじり、むすっとしたまま視線をそらした。


宴はまだ続く――

が、アークの機嫌はまだしばらく戻りそうにない。


読んでいただきありがとうございます。

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