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異世界グルメ探究!!?勇者の残した「雑な仕事の尻拭い」  作者: 酒本 ナルシー。


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第64話 焙煎

翌朝。

一同は再び巨大な大木を登り始めた。


アークはというと――妙に張り切っていた。

自分の背中をこれでもかと見せつけるように、腕の筋肉をアピールしながら勇ましく登る。

時おり、ちらりと後ろを振り返ってはエクレアの様子を確認している。


(ふふ……今のわしの雄姿を見て、エクレアは「すごい……!」となっておるんじゃろうな……!)


完全に妄想である。


実際のエクレアは――

カノンの背中におんぶされながら、周りの景色をきょろきょろ。

木の上の鳥を見つけて小さく笑ったり、枝の上を走るリスに手を振ったり、すっかり遠足気分だった。


しゃもは、その対比を見て小さくため息を漏らす。


「……アーク様、がんばっているのに……ちょっと可哀想……」


そんなこととは露知らず、アークはさらに誇らしげにスピードを上げて登る。


(ははは!尊敬の眼差しってやつがビリビリ伝わってくるのぉ!!)


ビリビリしていたのは単純に腕の筋肉だった。


やがて――

数時間が経ち、ようやく巨大樹の頂が視界に入る。


青空が近い。

枝の先に大地とは違う風が吹き抜ける。


アークは鼻を鳴らし、得意げに声を張った。


「見えてきたぞ! 頂じゃ!!」



その時だった。

上空から――小さな“種”のような魔物が一斉に降り注いできた。


パチパチッ、と空気が弾け、無数のそれがこちらへ向かって一直線。


しゃもが瞬時に鑑定を走らせる。


「カカオ魔め。

 極めて苦い。発酵・焙煎することで香りが良くなるタイプです」


アークは一瞬たじろいだ。

だがすぐに、カノンとエクレアの顔が脳裏に浮かぶ。


(……守らねばならん。わしは今、父親じゃからな……!)


感情のスイッチが、完全に入った。


アークは木の幹を蹴り、カカオ魔めの群れへ飛び出す。

大きさは豆ほどだが、動きは鋭く、牙のような殻を持っている。


「小癪な豆どもめ……! 焼き払ってやるわい!」


空気が一瞬にして静まり返った。


アークの魔力が——沈むように、だが轟くように大気を満たしていく。

声量は決して大きくはない。

しかし言霊のように、空の隅々まで響き渡った。


「アーク・ディストラクター」


しゃも

「アーク様!? それはここで使ってはいけないレベルの魔法ですって!!」


次の瞬間――


光線が走り、空が白く弾けた。

大木のてっぺん付近で、衝撃波が広がり、巨大な爆発へと昇華する。


ドォォォォォォォンッ!!!


鳥たちが木全体から飛び立ち、風圧で枝がしなる。

カカオ魔めの群れは、一粒残らず蒸発していた。


木の上は、しん……と静まり返っていた。


カノン

「……え、えっと……すごい……です……けど……」


エクレアは怖がるというより、ぽかーんと口を開けていた。


しゃもは震える声でつぶやいた。


「……アーク様。たぶん、今の爆発……

 この木ぜったい“豆の香ばしい匂い”になりますよ……」


アークは胸を張り、腕を組む。


「家族を守るとはこういうことじゃ」


誰も否定はしなかった。

否定できないレベルの爆発だったからだ。


大爆発のあと、ようやく大木のてっぺんへたどり着いた。


そこには――さっき吹き飛ばしたカカオ魔メが、香ばしく焙煎された状態で一面に転がっていた。

甘くて深みのあるいい香りが風に乗って漂ってくる。


「……ふむ、この香り……想像以上じゃのう……ぐふふ」


思わず顔がゆるむ。

引き寄せの魔法を使い、焙煎豆をすべて手元へ回収する。袋の中に次々と吸い込まれていくさまは実に気持ちがいい。


(最高の素材じゃな……チョコも作れるし、菓子にもできるし、飲み物にも……うむ、夢が広がる)


思わずにやけながら袋を抱えると、背後からしゃものため息が聞こえた。


「アーク様、爆裂魔法でチョコの原料を大量収穫する人、世界で唯一ですよ」


ほっとけという気分で回収作業を終える。


そのとき、大木の幹に不自然な傷を見つけた。

削られた表皮の中央に、誰かの文字が刻まれている。


――《勇者〇〇ここに種を植える。世界よ豊かになれ》


「あああああ勇者の字じゃこれ!!」


思わず頭を抱える。


(なぜこう毎回こういう斜め上のことをするんじゃあいつは……!

 世界を豊かにするために巨大樹を育てる? いや目的は立派なんじゃが。

 結果として通行妨害しとる!!)


後ろからカノンとエクレアも覗き込む。

カノンは「名前までしっかり掘ってある……自己主張強いタイプ……」と苦笑していた。

エクレアは文字がわからないのか、小首をかしげている。


「次会ったら説教じゃ。絶対説教じゃ。飛ばす前に説教じゃ」


怒りを押し殺しながら木の縁に立ち、下を見下ろす。


大木の向こうには広大な大地が続き、その先に――エクレアの村がある。


「よし。行くぞ。エクレアの村へ」


カノンはエクレアを背中に乗せ、しゃもはエクレアに大事そうに抱えられ、

そしてわしは焙煎豆の袋を誇らしげに担ぎ――


四人で前へ進み始めた。


読んでいただきありがとうございます。

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