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異世界グルメ探究!!?勇者の残した「雑な仕事の尻拭い」  作者: 酒本 ナルシー。


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第59話 オークション

パーティー会場へ到着したアーク一同。


巨大なホールいっぱいに、

世界中から集められた珍品が所狭しと並んでいた。


黄金で縁取られた古代の置物。

魔力で浮遊する宝石のオブジェ。

生きているように動く精巧な彫像。

取引額がゼロひとつ違うような貴重品ばかりだ。


しかし――


「食べ物はどこじゃ」


アークは展示物に一切興味を示さず、

きらびやかな商人たちを置き去りにして

ただ一点、食べ物コーナーへと突っ走った。


カノンは慌てて後を追う。


しゃもはため息をついた。


「……やっぱりこうなりましたか」


長いテーブルには見たこともない料理がずらりと並ぶ。


・海老の黄金焼き

・霜雪果の冷製スープ

・火山サラマンダーの炙り肉

・浮遊果物のフルーツポット

・精霊の加護パン(光っている)


まさに世界の“最高級食材の見本市”。


アークの目がぎらりと光った。


「うむ……全部食う」


しゃもが呆れる。


「アーク様、少しだけ控えめに……」


「控えめとはなんじゃ?」


「……(言うだけ無駄ですね)」


アークは料理評論家のように

ひと皿ごとに真剣に味わい、腕を組む。


「これは……88点じゃな。香りが惜しい」

「ふむ、これは95点。歯ざわりがよい」

「うぬぬ……これは論外。50点じゃ。二度と作るな!」


周りにいた商人や招待客たちは

アークの圧倒的な“食の修羅感”に飲まれ、

一歩引いた距離からこそこそと囁き合った。


「な、なんだあの老人……」

「ただ者じゃない……食べ方がプロだ……」

「名のある商人か、はたまた料理の権威……?」


カノンはそんな視線を背中に感じつつ、

目の前でひたすら食べ続けるアークを見て

苦笑いを浮かべた。


アークは満足げに料理を次々と平らげながら、


「ふむ……このパーティー、なかなか悪くないのう」


と、嬉しそうに呟いた。



パーティーが進み、会場の空気が少し落ち着いた頃――

高台に立つ司会者が手を叩き、ホールに声を響かせた。


「それでは皆さま……お待ちかねの“本日の目玉イベント”、始めさせていただきます!」


照明が落ち、中央のステージだけが眩しく照らされた。


ざわ……ざわ……

客たちの期待と興奮が混ざり合う。


次の瞬間、

ステージへ引っ張られるようにして連れてこられたのは――


小さな魔族の女の子だった。


せいぜい十歳ほど。

手足には錆びた鎖、足取りはふらつき、怯えた目で客席を見渡す。


会場がどよめく。


「魔族の子供……まさか……」

「生きたまま確保するなんて……どれだけの価値があるんだ……!」


司会者が続ける。


「魔族の奴隷は極めて希少!

 戦乱の時代でもなければ手に入りません!

 本日の出品は――

 魔力反応あり、未鑑定、価値不明の“魔族少女”!!」


客たちの目が一斉にギラついた。


「500!」

「700!」

「1000だ!」

「いや、1500!!」


値が跳ねあがるたび、少女は怯えて身体を縮める。


しゃもが小さく呟いた。


「……アーク様。これは、いただけませんね」


アークは料理を食べる手を止め、

じっと少女を見つめた。


(……わしが知っておる魔族とは違う。

 こんな子供を鎖でつないで売るなど……)


カノンは胸の前で手を握りしめ、不安げに見つめていた。


そのとき、司会者が声を張り上げた。


「――2000!! 金貨2000!!

 これ以上いませんか!?

 この魔族少女、貴重ですよ!!」


会場の熱が高まり、

今にも落札が決まる――そう思われた瞬間。


アークはひょいと片手を上げた。


「――3000じゃ」


会場が静まり返った。


司会者が驚きで目を丸くする。


「さ、3000!?

 し、しかし……どちら様で……?」


客たちが道を開けるように振り返る。


アークはいつものしゃもじを扇子代わりにしながら、

ゆっくりと席を立った。


「わしは……商人じゃよ。

 エクストラコールドな、特別製の商人じゃ」


しゃもが小さくため息をついた。


「(設定、まだ引きずってる……)」


司会者は慌てて紙を確認し、叫んだ。


「最終入札!金貨 3000枚!!

 他にいませんか!?

 ――いないようです!

 落札者は……“エクストラ商人”殿!!」


会場がどよめく。


アークはゆっくりと歩み寄り、

鎖につながれた少女の前に立った。


そして鎖を軽く指でつまむと――

“パキン”と音を立てて壊した。


「もう、自由じゃ」


少女の大きな瞳が揺れ、

その場で小さく縮こまっていた肩が震えた。


カノンはそっと微笑んだ。


(アーク様……優しい……)


しゃもは無表情のまま、

しかしどこか満足そうに光を弱く揺らした。


会場の空気が、

確かに――変わった。


アークは少女を保護すると、そのまま商人(店主)を手招きした。


「おぬし。少し話がある。来い」


店主は慌てて駆け寄り、アークの前で姿勢を正した。


「は、はい! アーク様、どうされましたか?」


アークは鎖が千切れたまま床に落ちているのを指で示しながら、低い声で問いかけた。


「……この子、どういう経緯でここに出された?

 まさか、普段から奴隷売買などやっとるんじゃあるまいな?」


店主はぶんぶんと首を振った。


「い、いえ!! とんでもございません!!」


アークは目を細める。


「なら、どこから来た?」


店主は深く息を吸って説明を始めた。


「彼女は……どうやら魔族の国の、とある村で捕らえられた者だそうです。

 勇者と騎士団が魔族側と戦闘した際、たまたま生き残っていたこの子を“戦利品”として持ち帰った者がいて……」


アークは眉をひそめた。


(……戦争の余波、か)


店主は慌てて両手を振りながら続けた。


「誤解なさらないでください! 私ども《大河会社》は奴隷売買など一切扱いません!

 ただ……“外部の商人”が持ち込んだものが、今日のパーティーで競りにかけられたようでして……」


アークはため息をついた。


「ふん……まあ、そうじゃろうな。

 おぬしらの品の並び方を見れば、そんな趣味ではないことくらい分かる」


店主は胸を撫で下ろした。


アークは少女の肩にそっと手を置く。


「……戦で捕らえられ、鎖につながれ、競りに出されるとは……

 本当にろくでもない世の中よのう」


しゃもが静かに言葉を添えた。


「アーク様が買わなければ、もっと悲惨な目に遭っていたでしょうね」


少女は小さく震えながらも、アークの袖をぎゅっと握った。


カノンはそっと微笑む。


「アーク様が守ってあげたんですよ」


アークは照れ隠しのように鼻を鳴らした。


「わしはただ……気に入らんかっただけじゃ。

 食材ならともかく、生き物を鎖で縛って売るなど……味が悪すぎるわ」


しゃも

「(そこは“味”で判断するんですね……)」


会場はまだざわめきの中にあったが、

その中央で――


アークは少女に言った。


「心配いらん。もう誰もおぬしを売らんし、縛らん。

 わしが保証してやる」


少女の瞳に、少しだけ光が戻った。


読んでいただきありがとうございます。

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