第46話 次の目的地?
大ジャポン帝国を後にしたアーク一同。
青空の下、カノンの背に乗り、海と山を越えながら悠々と空を進む。
アークはしゃもじを杖のように抱え、風を受けながら腕を組む。
「……かっこよく旅立ったのは良い。うむ、あれは完璧じゃった。演出もタイミングも申し分なかった……」
しゃもが静かに刺す。
「でも行き先は“ノープラン”ですよね?」
アーク
「黙らっしゃい。わしは今、考えとる最中じゃ」
カノンは楽しそうに飛びながら問いかける。
「アーク様〜! 次はどこへ行きますか? また美味しいもの、いっぱいありますかね!」
アークは胸を張りつつも、目は完全に泳いでいた。
「も、もちろんじゃとも! 美味い飯と美女と酒と……いや、世界の平和を取り戻す旅じゃからの!」
しかし心の声は正直だ。
(――どうしようかのう……本当にどこへ行けば良いのやら……)
長い旅路の空に、アークのため息が流れた。
カノンの背に揺られながら進むアークは、腕を組み、懸命に考えていた。
次の目的地――それを決めねばならない。
しかし――
「……ん?」
アークの視界に、空一面を覆うほどの魔物の大群が映り込んだ。
ギュイイイイイイイイイイ……!
不気味な泣き声をあげながら、黒い粒のような魔物たちが空を旋回している。
だがアークは、無表情のまま、正面だけを見てこう言い放つ。
「……カノンよ。今日はもう遅い。ここらで降りて野営じゃ」
しゃも
「いやいやいやいや、見えてますよね?大量に飛んでますよ?世界の平和取り戻すとか言ってたの誰でしたっけ?」
アーク
「……なんのことじゃ?わしには雲と青空しか見えんのじゃが?」
カノンは苦笑して振り返る。
「アーク様……後ろ、めっちゃ飛んでますよ……?」
それでもアークは、完全に見ないふりを貫こうとした。
しかし――
しゃもじが光り、しゃもが鑑定結果を読み上げる。
「鑑定結果。名前――ねぎ魔
説明――『細く串にして、ネギを挟み、炭火で焼くと最高。タレでも塩でもお酒に合う』」
その瞬間、
アークの耳がピクッ……ピクピクッ……と、不自然なほど反応する。
しゃも
「……今、反応しましたよね?」
アーク
「そ〜いえばのう。急に思い出したんじゃが、わし、どうしても“あっちの方”へ用事ができてのう」
しゃも
「いや絶対ちが――」
アークは急に振り向き、
「んまぁぁぁぁぁ!!あそこに魔物の大群が!これはいかん!平和のために退治せねばのう!!
カノン!進路変更!面舵いっぱ〜い東じゃあ!!」
カノン
「ふふっ……了解です、アーク様」
しゃも
「……はぁ。胃袋に平和を求める男、ここに極まれりですね」
こうしてアークは、
“たまたま見えてなかったことにした魔物の大群”へ突撃することになった。
魔物の大群を追いかけようとしたその瞬間――
ねぎ魔たちが一斉に方向転換し、東の空へ向かって飛び始めた。
アーク
「……ふむ? 狩られるために整列してくれるとは、実にできた魔物……」
しゃも
「違いますからね?絶対ちがいますからね?」
大量の黒い影が一直線に東へ伸びていく。その“ただ事ではない雰囲気”に、アークもようやく真面目な表情になる。
「カノン、ステルスじゃ。気づかれんようにあとを追うぞ」
アークは手をかざし、**ステルス魔法**を展開。
ニ人の姿は海風の中に溶けるように消えた。
カノンは龍の姿のまま、空を滑るように飛行し群れを追跡。
「……速いですね、アーク様!あの魔物たち、何だか急いでるみたい!」
しゃもじがビビッと光る。
しゃも
「入念に鑑定……スキャン拡張……っと。
――群れの中心に高魔力反応を確認。名称は……
《カルボヘッド》:魔王軍幹部級」
アーク
「幹部……か。ねぎまと幹部の組み合わせ……なんか腹が減る響きじゃのう」
しゃも
「食い意欲と戦意を一緒にしないでください!」
魔物の群れはさらに速度を上げ、やがて陸地へ。
東方の大地――濃霧に包まれた巨大な森が広がる。
しゃも
「地名鑑定……該当地名――
《迷いの森》。転移封印・方向錯乱・魔力攪乱の三重結界。」
カノン
「戦争……始まっちゃうんでしょうか……」
やがて森の上空に差し掛かったところで、
魔物の群れ全体が速度を落とし、編隊を組むように並び始めた。
アーク
「……戦闘態勢、じゃな。誰かを迎え撃つつもりか、あるいは儀式か」
魔物たちの影が上空に留まる。その中心に、異様なほど大きな槍を持つ影が立っていた。
しゃも
「カルボヘッドが前線に出ています。どうやら本気の作戦のようですね」
アーク
「……やれやれ、また勇者の残飯処理か」
カノンは不安げにアークに聞く。
「アーク様……どうしますか?」
アークはしゃもじを腰でトンッと叩き、
「決まっとるじゃろ。――まずは様子見じゃ。
敵の目的を知らずして戦えん」
次の瞬間、森の奥から地鳴りが響いた。
魔物たちは武器を構え、幹部カルボヘッドは空を仰ぎ高らかに吠える。
「――始めるぞォォォォ!!」
アーク
「……ぬ、始まってしもうたか」
物語は、いよいよ大きな戦乱の気配へと向かい始める――。
森の上空に広がるねぎ魔の大群が、ぴたりと動きを止めた。
次の瞬間――
「ファイアレイン!!!」
掛け声とともに、空一面が真っ赤に染まった。
無数の炎弾が、まるで火の雨のように森へと降り注ぐ。
カノン
「アーク様!森が燃えちゃいます!」
アーク
「……焼き鳥の匂いしかしないのう……いや、そうじゃない!」
しゃも
「余計な感想を挟まない!」
森を襲う火焔は本気だ。
焼き尽くす――まさに殲滅の炎。
しかし――
ドゴンッ!
森の大地から緑色の光柱が立ち上がり、半透明の巨大な魔法障壁が出現。
火の雨は触れた瞬間、次々と弾かれていく。
しゃも
「森側の防衛魔法……!誰かが守っています!」
だが上空の魔物たちは止まらない。
炎弾、炎弾、炎弾、炎弾――
雨のように撃ち続ける。止める気ゼロだ。
やがて障壁には――
ピキ……ピキピキ……ッ!
無数の亀裂が走り始めた。
カノン
「ひびが……!このままじゃ破られちゃいます!」
アーク
「うむ……嫌な予感がするのう」
その予感は、すぐ現実になる。
魔物の群れの中心――
禍々しい黒鎧を纏った巨躯の男、**魔王軍幹部**が前に出た。
カルボヘッド
「チンタラ撃つな雑魚どもォ!一気に終わらせるぞ!!
――降り注げ、大地の審判」
男は空に向かって杖を掲げた。
「上級土魔法――《メガ・アースロック》!!!」
瞬間、空が揺れた。
雲が裂け、空中に隕石級の巨大岩塊が形成される。
しゃも
「でかっ……!あれ障壁に落とされたら終わりです!」
カルボヘッド
「砕け散れェ!!」
巨大な大地の塊が、障壁めがけて落下する――!
つづく
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