表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界グルメ探究!!?勇者の残した「雑な仕事の尻拭い」  作者: 酒本 ナルシー。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/70

第17話 一人 一器 1匹

アークは天を仰いだまま、長いため息を吐いた。

ドラゴンのカノンは必死に涙をこらえ、黄金色の瞳を揺らしている。


「……はぁ……わしは何をやっとるんじゃ」


しゃもじがふわりと光り、冷静な声を放つ。


「結局、拾っていくんですね」


「う、うるさい! わしはただ……見捨てきれんだけじゃ!」


カノンはパッと顔を上げ、嬉しそうに翼をばさりと広げた。


『ありがとうございます! あたし、絶対にお役に立ちます!

 空も飛べますし、索敵もできます! 魔法も多少なら使えます!』


アークはじろりと睨み、腕を組んだ。


「……しかしのう、このままでは旅ができん。

 おぬし、ドラゴンの姿では目立ちすぎる。人間どもが腰を抜かすわ」


カノンは一瞬考え込み、それから小さく頷いた。


『……じゃあ、人の姿になります』


黄金の光がふわりと舞い──

そこに立っていたのは、十代半ばほどの娘だった。

肩まで流れる銀がかった金髪に、竜の面影を残す黄金色の瞳。


背丈はアークよりもわずかに高く、肩の位置がアークの頭より少し上にある。

まだ幼さを残しながらも、芯の強さを秘めた表情を浮かべていた。


アークはむっと眉をひそめ、じろりと見上げた。


「……わしより背が高いではないか。なんじゃこの違和感は」


しゃもじが小さく光って冷静に告げる。


「ドラゴンですからね。人型になってもサイズ補正はかかるようです」


「むぅ……妙に目立つではないか。今度は別の意味でな」


しゃもじがぼそり。


「ドラゴンよりはマシですが、かわいさで視線を集めますね」


「うるさいわい! まあ、巨大な竜よりは確かにマシじゃ……」


カノンは照れくさそうに裾を握りしめながら、それでも楽しげに笑った。


『これで、一緒に歩けますね、アーク様!』


アークは鼻を鳴らし、背を向ける。


「……飯は1日3食、出るとは限らんからな!」


『……!』


カノンの顔がぱっと明るくなった。


しゃもじがふわりと光り、ぼそり。


「ツンデレ老人ですね」


「誰がツンデレじゃ! わしは千年生きた大魔法使いじゃぞ!」



アークはしゃもじを杖にして歩き出す。

人の姿になったカノンが、十代半ばの娘の姿で隣に並び、楽しそうにアークを見た。


「(勇者の尻拭いは面倒じゃが……飯を食うなら人の集まる街が一番じゃ)」


しゃもじがふわりと光り、冷静に告げる。


「結局“飯優先”ですね」


「当たり前じゃ! わしの旅の目的はグルメ探索じゃからな!」


かくして──

しゃもじいさん、ドラゴン少女カノン、そして神器しゃもじ。

妙な取り合わせの一行は、次なる街を目指し歩き出した。


「ふむ……次はどこへ向かうべきかのう」


しゃもが淡く光って冷静に言葉を挟む。


「西に行けば王都や勇者の足跡に近づくでしょう。尻拭い確率、跳ね上がりますよ」


「むぅ……やはり勇者関連は避けたいのう。あやつと関わればまた余計な苦労を背負うことになる」


アークは渋い顔をしながら東の空を見上げた。

そこでカノンに視線を向ける。


「お主、東に魔法が盛んな土地はないか?」


カノンは少し考えた後、頷いた。


「あります。東には《エルメシア魔導国》という国があります。魔法学舎があり、魔導書や研究者も集まると聞いたことがあります」


「ほう……魔導国か。なるほど、なかなか面白そうじゃのう」


アークの瞳がきらりと輝いた。


「ならば決まりじゃ。次の目的地は《エルメシア魔導国》!

 勇者などほっぽって、わしはわしのグルメと魔法を追い求めるのみじゃ!」


カノンは小さく笑みをこぼし、その横顔を見つめる。

しゃもはやれやれと呟いた。


「……結局、食欲と好奇心が最優先なんですね」


アークとカノンは並んで東へと歩みを進めていた。

風は爽やかで、道の両脇には小さな森が続いている。


「ふむ……旅はやはりこうでなくてはならんのう。腹も満ち、目的地もある」


アークは上機嫌でしゃもじを杖のように突きながら歩く。

一方、カノンはまだ人の姿に慣れていないようで、足取りが少しぎこちない。


「カノン、歩きにくいか?」


「い、いえ……人間の足って、こんなにすぐ疲れるんですね」


アークは吹き出した。

「ふぉっふぉっふぉ。わしは背が低い分、歩幅がちと楽じゃぞ」


しゃもが冷静に突っ込む。

「つまり“ちんまり体型の利点”ですね」


「うるさいわい!」



そんなやりとりをしていると、茂みの中からがさり、と音がした。

アークはしゃもじを軽く構える。


「む……魔物か?」


飛び出してきたのは──大きなイノシシ型の魔物。

牙を剥き、低く唸っている。


しゃもが鑑定を行う。

【魔物:魔イルドボア】

【特徴:肉は濃厚で旨味たっぷり。ただし硬い】

【調理法:煮込み、または低温でじっくり焼く】


アークの目がきらりと光る。

「……これは当たりじゃ!」


「アーク様、戦う前に“食べ方”を考えるのやめてください!」

しゃもの突っ込みを無視して、アークはしゃもじを振り上げた。



魔イルドボアは突進してきたが、アークの土魔法で足元を崩され、派手に転倒。

そこへしゃもじの一撃が炸裂し、見事に討伐成功。


カノンは拍手して笑った。

「さすがです、アーク様!」


アークは胸を張り、獲物を指差す。

「よし、今夜のディナーは決まったのう!」


しゃもがぼそっと付け加える。

「……勇者の尻拭いより食材探しの方が本気度高いですね」


アークは満面の笑みを浮かべ、魔イルドボアを収納魔法で器用に収納した。


森の外れに焚き火を起こし、アークは腕をまくった。

「ふむ……今日は煮込みにしてみるかの」


しゃもがため息まじりに呟く。

「どう見ても戦利品より料理に夢中ですね」


「食は戦じゃ! わしに任せておけ!」



アークは収納魔法から魔イルドボアのバラ肉を取り出し、余分な脂をそぎ落とす。

しゃもが光り、鑑定結果を示した。


【部位:バラ肉】

【適正調理:長時間煮込みで旨味増大】


「ほぅ、やはり煮込み向きか。よし、任せておけ!」


大きめに切った肉を鍋に入れ、軽く炒めて香りを出す。

続いて玉ねぎ、にんじん、じゃがいもを切り分けて加え、水と少量のエールを注ぐ。



焚き火の上に鍋をかけ、ことこと煮込む。

アークはしゃもじを取り出し、ゆっくり鍋をかき混ぜた。


その瞬間、しゃもじが淡く光る。


《神器しゃもじ効果発動》

【料理の美味しさ上昇】

【脂のしつこさ軽減】


鍋の中から立ち昇る香りは濃厚で、それでいて澄んだ甘みを帯びていく。

脂は白く輝きながら表面に浮かぶが、嫌な重さはなく、むしろ旨味の塊に変わっていた。


「……これは期待できるぞ……」



煮込みが完成し、アークは器によそってカノンに差し出した。

カノンは恐る恐るひと口──


「……っ!? や、柔らかい……! 脂なのに全然しつこくなくて……むしろ体に染みわたる感じです!」


アークも味わい、目を見開いた。

「ぴぇぇぇぇぇ! 飲める肉じゃぁぁぁ! これは肉汁のスープと言ってもええ!」


肉はとろけるように柔らかく、野菜の甘みと溶け合って深いコクを生んでいる。

脂は重さを失い、後味は軽やか。まるで滋養強壮の薬湯のように体を芯から温めてくれる。


カノンは器を抱え込み、夢中で食べている。

「アーク様……こんなご馳走、もう一生分食べた気がします……!」


アークはしゃもじを掲げ、鼻を鳴らした。

「ふぉっふぉっふぉ、これぞ神器しゃもじの力じゃ!」


しゃもが冷静に返す。

「……いえ、半分以上は食欲の力です」


アークは聞こえないふりをして、幸せそうに二杯目をよそった。


「のうカノンよ、目的地のその国まで、あとどれくらいじゃ?」


カノンはにこりと笑顔で答える。

「そうですね……人の足なら二週間ほどでしょうか」


「……は?」


アークの口がカパァッと開き、そのまま閉じなくなった。


「に、二週間!? わしはてっきり一日か二日で着くと思っておったわ!」


しゃもが冷静に補足する。

「アーク様は地図も距離も確認していませんでしたからね」


「うるさいわい!」


アークは頭を抱え、地面に崩れ落ちる。


「なんで早く言わんのじゃ!」


するとカノンが困ったように人差し指を唇に当てて言った。

「えっと……だって、わたしなら飛んでしまえばすぐなので。そんなに遠いとは思わなかったんです。それに……アーク様が歩くのが好きなのかと……」


「誰が歩くの好きじゃあああ!」


アークの絶叫が山道に響き渡り、カラスがばさばさと飛び立っていった。



読んでいただきありがとうございます。

考えた結果連れて行くことにしました。

これからも応援お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ