表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界グルメ探究!!?勇者の残した「雑な仕事の尻拭い」  作者: 酒本 ナルシー。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/70

第14話 抜けない剣

アークは街を後にし、とぼとぼとしゃもじを杖代わりにして歩いていた。

目的地も決めず、石畳をひたすら進みながらぶつぶつと呟く。


「もうだまされないぞ……わし、知らない人信用せんからな……」


しゃもが光り、淡々と答える。


「決意表明ですね」


「しゃも、あの街がボッタクリの街だと知っておったのか?」


「知っていました」


「なぜ言わんのじゃ!」


「聞かれていないので」


「……ぬぅ、確かに」


アークはため息をつき、しゃもを軽く叩いた。


「次はちゃんと何か怪しいときは、なんでもいいから教えるんじゃぞ」


しゃもは長い溜息を吐いた。


「……はいはい」


アークはもはやホームレスのように、あてもなく半日ほど歩いていた。


そのとき、突然空から影が落ちてきた。


「ぬおっ!?」


巨大なドラゴンがジタバタと地面に背中をこすりつけ、もがいている。

アークは目を白黒させた。


「……なんじゃ、夢でも見ておるのか?」


無視しようか迷ったが、試しに念話を通して声をかけてみた。


『おい、ドラゴンや。どうしたんじゃ?』


すると、逆にドラゴンがびくっとして大きな目を見開いた。

次の瞬間、おとなしくなり、弱々しい声が頭に響く。


『す、すみません……背中が……手が届かなくて……“孫の手(背中をかく棒)”のようなものでかいてほしいのです』


「……は?」


アークは一瞬固まり、心の中で思った。


「(これしゃもじなんじゃが……孫の手扱いか……)」


だが、話しかけたのは自分だし、仕方ないかと思い、しゃもじを伸ばして背中をかいてやった。


「ほれほれ、ここか? かゆいのは」


ドラゴンがうっとりした声を出す。


『あああ……そこです……そこ……まさに求めていた“孫の手(背中をかく棒)”です……』


アークは呆れながらもしゃもじを動かしていると、背中に何か光るものが見えた。


「む? これは……剣じゃな」


アークは剣が原因だと突き止め、ドラゴンに尋ねた。


「これが原因じゃろう? 抜いてもよいか?」


『……お願いします』


アークは頷き、剣に手をかけた。

ぐっと力を込めるが、びくともしない。


「ぬぬぬ……意外と固いのう……」


さらに顔を真っ赤にして力を込めた瞬間──


ゴギィッ!!


「ぐえぇぇぇぇぇ!! わ、わしの腰がぁぁぁ!!」


腰に激痛が走り、アークは「あばばばばば」と情けない声を上げ、奇妙な格好でうずくまった。


しゃもが光り、冷静に突っ込む。


「年甲斐もなく無理をするからです」


「う、うるさいわい……」


アークは歯を食いしばり、額の汗をぬぐった。


「(そうじゃ……わしはただのじじいではない。千年生きた大魔法使いじゃった……)」


その瞬間、指先に魔力の感触がよみがえる。

アークは深呼吸し、自分の腰に手を当てた。


「……《ヒール》」


緑の光がふわりと身体を包み、砕けかけた腰の痛みがすっと消えていく。


「ふぅ……やはり魔法は便利じゃのう」


しゃもがぼそり。


「やっと思い出しましたか」


アークは顔をしかめ、剣を睨みつけた。


「……もうこうなったら、力ずくじゃ」


両手をかざし、魔力を込める。


「出でよ──《魔力増幅・しゃもフルパワー》!!」


剣が光に包まれ、次の瞬間──


すっポーーーン!!!


見事に抜けた。


「ふぅぅぅ……ようやく抜けたわい」


ドラゴンは安堵のため息をつき、頭を下げる。


『……ありがとうございました。あの剣、ずっとかゆくて……』


アークはしゃもじを杖代わりにして立ち上がり、腰をさすりながらため息をついた。


「全く……酒の後にドラゴンの介護までやるとは、わしの人生どうなっとるんじゃ……」


しゃもが小さく光り、ぼそり。


「尻拭いの範囲がどんどん広がってますね」


アークは肩をすくめ、剣を眺めながらにやりと笑った。


「……まあ、これも何かの縁じゃろう」


剣を抜いたアークは、息を整えながらドラゴンに向き直った。


「さて、これで楽になったじゃろう。……ところで、なぜ背中に剣が刺さっておったんじゃ?」


ドラゴンはうつむき、長い睫毛を伏せながら答えた。


『……勇者にやられました』


「ぬ? 何か悪さでもしたのか?」


『違います……私はただ、眠っていただけなのに……』


かすれた声で、ドラゴンは経緯を語り始める。


『勇者は“龍の鱗の盾”という伝説の装備を探しに、私の住処に押し入りました。

 ですがそんなものは実在しません。

 それなのに、寝ていた私の背中に、いきなり剣を突き立ててきたのです……』


アークは目を細め、しゃもを軽く叩いた。


「(またか……勇者、テメェ……)」


しゃもが光り、小さく呟く。


「“ドラゴン=倒すべき敵”と思い込んでるんでしょうね」


アークは深くため息を吐いた。


眉をひそめ、しゃもを軽く叩いた。


しゃもが淡く光り、冷静な声で告げる。


「この世界のドラゴンは最上級の存在ですが、基本的には人間に危害を加えることはありません」


アークは腕を組み、吐き捨てるように言った。


「それを先制攻撃とは……あやつ、やり方が雑にも程があるわ!」


ドラゴンは大きな瞳に涙をため、しょんぼりとうなだれた。


『住処も壊されてしまって……ずっと、どこにも帰れずに……』


「……ふぅ。まったく、勇者どもの尻拭いばかりじゃな」


アークはしゃもじを突き、ドラゴンに向き直った。


「そういえば、おぬしの名は?」


ドラゴンは小さな声で答えた。


『……カノン、と申します』


「カノンか。……よい名じゃ」


アークはその大きな背を見上げ、ほんの少しだけ口元をほころばせた。


「(勇者の尻拭いなど面倒じゃが、放っておくのも忍びないのう……)」


アークはにやりと笑い、しゃもじを軽く掲げた。


「決めたぞ、カノン。わしがその住処をリフォームしてやる。

 千年の知識と魔法、しゃもじパワーで、元より快適にしてくれるわい」


しゃもが懐で光り、ぼそり。


「また尻拭いですか……」


「うるさいわい。グルメとリフォームは、わしの趣味じゃからな」


こうして──千年生きた大魔法使いにしてしゃもじいさんことアーク・エルディアは、

勇者に傷つけられたドラゴン“カノン”のために、住処リフォームという新たな尻拭いに挑むことになったのだった──。


今回もお付き合いありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ