第1話「カーティス」
カーティスは長年この国屈指の冒険者として十六から戦いに明け暮れる日々を送っていた。
もうこんな生活を初めて二十四年になる。
今日は、年に一回定期的に活性化するダンジョンの鎮静化のためロスハーゲンの街での大規模討伐に訪れていた。
若い頃は一人で魔物の群れに突撃していたカーティスだったが年を追うごとに周りとどうやって関わっていけば良いかを学んでいった。
諸突猛進に進むのではなく、他者と協力してきたからこそ、この年齢になっても現役の冒険者として続けられていると思っている。
ロスハーゲンの冒険者たちと協力してダンジョンに現れた凶悪な魔物の群れを壊滅させる。
多くの一般時はダンジョンに入ると血生臭く、戦闘狂のような冒険者たちが活躍することをイメージするが、実際にはそうではない。
Sランクと言われる冒険者であっても周りと協力しながらダンジョンを攻略していく方が結局は効率的なのだ。
そして、戦闘で上手く連携を取るには戦闘以外でのコミュニケーションが欠かせない。
ただ、カーティスは話すのがあまり得意ではないので基本は聞き役だ。
ロスハーゲンは年に一回しか訪れないが、二十年も毎年顔を合わせていれば十分見知った仲と言えた。
ダンジョンに一緒に潜ったメンバーの会話にカーティスは耳を澄ませた。
「そう言えば、最近エレナ綺麗になったよな」
ロスハーゲンの冒険者の中でも年長のデイヴィッドのセリフに周りの男たちが沸き立つ。
「ありゃ、男だろ」
そう誰かが言った。
ダンジョンのメンバーの中でニ、三人の男が黙りこくる。
エレナは、仕事は丁寧かつ性格も穏やかでいかにも家庭的な雰囲気を持っていた。
最近では、どちらかと言えば地味な女性は詰まらないという奴らもいるが、あのふにゃりとした笑顔にはいつの時代の男も弱いらしい。
「いやぁ、ありゃいい嫁さんになるぞー」
そう話しながらデイヴィッドは背後から殺気を感じ振り返る。
そこにはカーティスしかいなかった。
彼が剣を抜いたりもしていないのでモンスターは身近にいないということだ。
<なんだ、俺も勘が鈍ってきたか…?>
先ほどの殺気は気のせいだったのだろうと一人ごちると皆との会話に戻っていった。