#6 ふたりぐらし
第六話
第四話
カチャカチャ、もぐもぐ、
「うまーーーーーーじゃ」
もぐもぐ、
「うまーーー。おかわり!」
「えー私食べ物見つけるまでこれで食い繋ぐんですけど。まぁまだあるし、はいどうぞ!」
うぅん。
はーいい夢みたな。まだ夢の中のいい匂いの余韻が。
パチ
え?
「あっ起きました?カレーよそうので食べてくださいね。こっちに座ってください。
はいどうぞ。」
え?
まだ夢か?女神は神だけでなく瞳も黒曜石のようで美しいんだな。
美しい人に優しく話しかけられて微笑まれて、椅子まで引いてもらって、食事まで出してもらって。
もぐもぐ、???
「うまーーーーー。」
ガツガツガツガツ。
「ゆっくり食べないと寝起きだから詰まっちゃいますよ。
はい、お水です。」
「ありがとごじゃあまふ。」
ガツガツガツガツ
「はー。もうなくなった。」
「まだありますよ。おかわりしま」
「します!!!いただきます!ありがとうございます!」
「はいどうぞ。」
弟がいたらこんな感じなのかなー。
野球部の部活帰りにねーちゃん腹減ったなんか作ってとか言われるの憧れてたなー。
弟なんて生意気で臭いだけだよってあさちゃんは言ってたっけ。あー職場のみんなにも友達にも、もう会えないんだな。悲しくなってきた。
「あの?悲しいことでも?」
「いえいえいえ!なんでもないんです。目にまつ毛でも入ったかな?すみません。気を使わせて!」
「カレー気に入ってもらえました?
私の好物で、私の故郷では家庭の味なんです。」
「はい!めちゃめちゃおいしいです。こんな美味しいもの食べたことないです。もう死んでも悔いはないです。大好きです。」
「あははははは
よかったです。」
「あなたは女神ですか?私はもう死んだんでしょうか?」
「え?いや死んでないと思いますよ?
おじーちゃんこの方死なないよね?」
「おう。死なんな。」
「だそうです。」
え?現実?
女の人が?俺に話しかけて微笑んでいるのが?
現実?
周りにはヨボヨボの老人とご飯にがっついている精霊しかいないが?
「あのあなたの夫たちは?どこに?」
「え?夫たち?
私は独身なので、夫はいないです。」
「え?」
「え?」
独身と聞こえたが空耳だ。まだ魔植物の影響ががのこってるな。
「ご老人この方は、あなたの娘さんだろうか?」
「いんや。」
「この方の父上たちや夫たちが見当たらないが、この方を放っておいて何をされているのか?」
「この娘は、親もおらんし家族も、夫もおらん。天涯孤独じゃ。
かわいそうなんじゃ。
んじゃわしはこれでな。」
(色々知られたくないなら適当にごまかすんじゃな)
「また気が向いたからくるからそん時は供物の料理を忘れてるでないぞ。カレーでも良いぞ。
さらば」
「あっおじーちゃんまたねー。色々ありがとう。」
「えっと。(おじーちゃんからも言われたし、色々詮索されたら説明できないし)
私家族はもう死んでしまって1人なんです。
ここでホテルを開業しようと思って準備中で、とりあえず5日分のご飯を作ってたところにあなたが来られて。
元々遠い田舎の国から出てきたのでこの辺のことも、習慣とか?何も分からなくて、」
「ほんとに夫は1人もいらっしゃらないと?」
「はい、1人もって、バツイチに見えますか?あはは。今まで一度も結婚したことないです。」
「天涯孤独でかわいそうなんじゃ」
「あの!俺とけっ......」
「おれとけ?
すみません最後の方聞こえなくて」
「いえ!私をここで雇ってください!
なんでもします!
お願いします!」
「え?あなたも無職なんですか?」
「いえ私は冒険者をしていますが、しばらくここに滞在したいので、雇っていただけませんか?」
「あの、そうですね。色々手伝ってもらえるのはありがたいんですけど、この通りお客さんもいなくて、お給料が」
「いりません!」
「え?」
「あっ、住まいと、その食事をいただけるのであれば、報酬はいりませんので!」
「あーなるほど。住み込み!
わかりました。お客さんたくさん入るようになるまでは、お手伝いお願いします!はやくお給料出せるように頑張りますね。
この辺のことわからないのでほんとに助かります。」
「改めまして、私は高橋岬です。」
「たきゃはしみしじゃき様」
「いえ、たかはしみさき」
「たきゃあーしみぃじゃーきー様」
「いえ、えっーとじゃあみいで!
みぃです。」
「みぃ様....」
「はい、みぃです。」
「私はジェイドと申します。」
「じぇいろさん」
「かかかかかかわわわわわわ」
「え?かわ?」
震えてるのかなカレー食べ過ぎ?大丈夫かな。
バチン!
「え?急にほっぺた叩いて、
大丈夫ですか?」
「いえ!ジェイと呼んでください!」
「じぇいさん?」
「かかかかかかわわわわわわわ」
こうして奇妙な?2人暮らしが始まった。
つづく