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**第4話:女神との邂逅(ジェイド視点)**



地方での討伐依頼を完了し、帝都ストラシュへ戻る途中、家族への土産に魔の森のフルーツを持ち帰ろうと考えた。

討伐隊の仲間は「魔の森には近寄るな」と止めたが、魔の森のフルーツは栄養価が高く、弟たちにも喜ばれるはず。


そう思い、隊から離れて魔の森へ入った。


その時——**地面が激しく揺れた。**


湖の方で魔物が暴れているのか?

いや、違う……。


**女性の声が聞こえた気がした。**


しかし、そんなはずはない。

この辺りは聖域で、人間が入り込むことはありえない。


——それでも、なぜか気になり、湖の方へ向かう。


**漂う香り——食事の匂い?**


こんな森の奥で料理の匂いがするなど、ありえない。


湖のほとりに近づくと、そこで目にしたのは——**立派な宿屋**だった。


「……こんな場所に宿屋なんかあったか?」


今まで何度かこの森へ足を踏み入れたが、こんな建物は見たことがない。

しかも、煙突から立ち上る湯気……昼食の準備中なのか?


俺は宿泊するつもりはないが、食事だけもらえないか、主人に聞いてみよう。


**カラン、カラーン——**


扉を開けると、広々とした食堂が広がっていた。


木造の温もりと清潔感のある内装——こんな場所にある宿とは思えないほどの快適な空間。


しかし、人の気配はあるものの、主人らしき者の姿は見えない。


匂いのする方向へ足を進め、厨房へ向かった——。


**そこにいたのは、黒髪の女神。**


美しい黒髪を後ろで束ね、鼻歌を口ずさみながら料理をしている女性。


その姿を見た瞬間、俺は息を呑んだ。


彼女が振り向き——**微笑みながら話しかけた。**


その瞬間、緊張と興奮で意識が遠のく。


**バタン!**


……


**目を覚ました時、彼女は笑っていた。**


「びっくりしましたよー!いきなり寝ちゃうなんて!」


「……すみません。」


なんという失態。女神を前にして失神するなど、一生の恥だ。


彼女は現実世界に降臨した女神——それ以外に考えられない。


しかし、話を聞くと……彼女はこの世界の常識に疎く、まるで別の国から来たかのようだった。

まだ若く、成人もしていないだろうに「家族をなくした」と言っていた。


貴族の権力争いに巻き込まれ、親兄弟を殺され、一人命からがら逃げてきたのか……?


彼女の服装も、貴族の娘とは思えない。


生地は良いものだが、男物のズボンに袖なしのシャツ、上着を羽織っている。

女性が一人で生きるため、男装をしたのか……。


**……街に行って、彼女に似合う服を買わなければ!**


決して俺好みの服を着せたいわけではない。

決して!!!


それにしても、この世界にこんなに謙虚で礼儀正しい女性がいるとは。


まるで神話の女神そのもの——。


老人と精霊に助けられ、この宿屋を開業したらしい。


**もし、俺が彼女の最初の夫になれたなら——。**


そんな邪な考えが頭をよぎったが、未成年の無垢な女神を騙すなど、俺の矜持が許さない。


**ならば、使用人として雇ってもらおう!**


貴族なら未成年でも婚約は可能だが、親も庇護者もいない彼女に結婚を迫れば、断れない状況になるだろう。


それでは俺が憧れる「愛し愛される夫婦」にはなれない——。


……


夫婦……。


**ブッ!!!**


鼻血が出そうだ。


それに、この宿屋は安全とは言えない。


この辺りはほとんど人通りがないが、若い女性が一人で宿を営んでいると知れれば、貴族の手が伸びるのは時間の問題。


彼女は俺がお守りする!(決意)


つづく

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