3曲目 現場はピリピリしてますが俺は負けません
読んでいただきありがとうございます!
本作の芸能界は作者の妄想で構成されているので、ご了承ください。
また、「 過去、私を嫌ったキミは今、私を溺愛する」にちょっとだけリンクしてます。
両方読んでいただけるとより楽しんでいただけると思います!
毎週土曜日のAM8:00ごろ更新です。(遅れることもあると思います)
家族からの同意を得られた俺はオーデション会場に向かう。
控室でADさんの説明を聞く。
今回は順番に課題のワンフレーズを歌うだけ。
それだけで今回の参加者の半分は減るらしい。
募集で約2,000通、書類選考で200人。ふるいの落とし方がえげつない。
課題曲は今回所属になる事務所の今一番売れてる男性アーティストの曲。
結構難しい。
それもあるからか、控室ですらピリピリモード。
「はぁー…」
隣でため息が聞こえて見ると整った顔のイケメンくん。
「緊張するよね」
声をかけると驚かれた。え、なんで?
「…よく声かけられますね。みんなライバルですよ?」
「あー、確かに。でも仲間になるかもしれないし」
ニッと笑う。
「緊張して全力出せないよりも、こうして話してリラックスして全力出せた方がいいかなって」
「…変わってますね」
苦笑した相手に俺はんー、と呟く。
「後悔をしたくないだけ」
「それは…そうだね」
少しだけ打ち解けた感があった。
「俺、上田陽太。お互い残って一緒に仕事しようぜ」
「…西田夏。よろしく」
その名前に内心驚く。
「よろしく、ナツ。俺のことは陽太でいいよ」
「うん、陽太くん」
お互いにニッと笑う。
ナツの番号が呼ばれて行く。
次は俺だ。
===
「さっきの彼、よかったですね。西田夏くん」
事務所のオーディションを担当している藤井さんに言う。
今回の企画のオーディションは番組のプロデューサー、藤井さん、事務所の各レッスン講師(該当課題の時に呼ばれる)、マネージャーになる俺。最終オーディションには事務所社長もくると聞いてる。
「そうだね。見た目もいいし」
「オーディションの審査員って初めてですけど、神経使いますね」
そう言うと藤井さんは苦笑する。
審査員はもちろん、番組スタッフもピリピリしていて俺が逃げ出したいぐらいだ。
「ま、しょうがないよ。彼らの人生を握っているようなもんだし」
「…俺、マネージャーの方がまだいいっす」
事務所に所属しているタレント・アーティストをマネージメント、営業していく方が性に合っている。
そう言うと藤井さんはふふっと笑った。
「?」
「岡本がこの企画で生まれたスターのマネージャーになるんだから、自分がマネージメント出来ると思う子達を進めたらいいじゃない?」
俺の不安を察した藤井さん。さすが仕事できる男。
「はい」
「それで良し。じゃあ、次お願いします」
スタッフさんが次の子を入れる。
「34番、上田陽太です!高校1年生15歳です!よろしくお願いします!」
深々とおじきをする。
やっぱり高校生はちょっと違うなと感じる。
歌い出した彼の声は上手いけど、特別凄くいい訳ではない。けれど、引き寄せられる。
彼がメインボーカルと楽しそうに背中合わせで歌ってるのが想像できた。
課題曲が終わると彼は「ありがとうございました!」とまた深々と頭を下げて出ていった。
「…岡本、今の子どうだった?」
藤井さんに聞かれる。
「特別上手いとは思いませんでしたが…どこか惹かれる感じがあったのと、メインの声と合わせたらやばそうだなって声してました」
「…OK」
藤井さんがメモをしていた。
俺は決定権は無いけど、彼とは次も会う気がしていた。
===
【俺、次進んだよ。陽太くんは?】
オーディションから2週間後。ナツから連絡が来た。
オーディンションの日、先に終わったナツが待っていてくれて連絡先を交換した。
俺は嬉しくなって笑う。
【俺も!やったな!次も会場で会えるな!】
目の前には二次オーディションのお知らせの通知。
200人から100人に残れた。
「…次に進めた」
呟くと現実味を感じる。やるからには最後まで残ってやるんだ。
一次オーディションの時点でピリピリしている空気が半端なかった。
進めば進むほどピリピリ感は強くなるだろう。
でも、掴んだチャンスを手放す気はない。
1回目の人生でペンライトの海の1つだった自分。
今度はそれを作れる存在になって見る側になりたい。
「…絶対になってやる」
そう決めて二次に進んだことを家族に伝えに部屋を出た。
現場がピリピリしてても俺は負けない!!
ナツくんとの初めてまして。
そして岡本さん(ボス)とも初めてまして。
どんだけピリピリでも負けないのが陽太くんなのです。
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