桜舞う季節にキミを想うということ。~時空を超えて甦る魂の記憶~ ③
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水川健と折目晃が南九州の特攻出撃基地に配属となり二人は特攻の戦果確認の役割を与えられ
自身が教授した生徒や他の特攻隊員の死を目の当たりにし続けていた。
特攻出撃基地司令官の藤原和宏は「自分も必ず後から行く」という決まり文句を特攻隊員に言い
送り出していたが、この藤原は終戦時に自決を迫られ卑怯にも拒否逃亡し〟
田舎町に隠れ〝何事もなかったかのように戦後も生き延びている〟
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
健と晃の役割は心が張り裂けそうなほどに過酷なモノだった
米軍のレーダーピケット艦による防衛とピケット艦からの情報で空母より迎撃に飛来した米戦闘機に次々と撃墜され
運良く敵艦隊にたどり着いたとしても、狂気のように撃ち出される対空砲火の集中攻撃を受け
突入する前に撃墜され海のもくずと化してしまい
さしたる戦果をあげることも叶わず
特攻機には25番(250キロ)爆弾のみで、他の武装は機体を軽くする為、撤去されている
その為、反撃手段を持たないまま
ただひとつの命を空で海で無惨にも散らして逝くだけだった。
健と晃の零戦には武装が施されているが、多勢に無勢
いかに二人が真珠湾以来のベテランパイロットでも特攻機に群がる全ての敵機を撃墜することは困難を極めた。
日々、ひとりふたりさんにんと教え子が死んで逝く
そんな日々に健は憔悴しきっていた。
そして、自分は健なのか?それとも健男なのか?すらわからなくなってきていた。
古山景子を救った日から健男の声も思念も、あまり感じなくなってきていた。
自身に愛機の翼の下でしゃがみ
健は思っていた、自分が生きていた令和の時代がいかに平和で生きやすい時代だったのかを
なのに自分は自身で死を選んだ....「なんてバカ野郎なんだ!」
この時代では、生きたくても生きれなかった数千、数万、数十万の命が失われて逝く
自身の愚かさと、自身が教授し送り出した教え子達
彼らが命を散らしてまで守ろうとするモノ
それは、国じゃない...〝自身の大切な誰か〟だと健は思った。
健男が景子を守ったように。
翼の下でうずくまる健に『俺たちなら25番を敵艦に命中させて帰って来れるのになあ。
こんなんじゃ、日本はおしまいさ。』そう言って健の横に座り
『硫黄島が敵に奪われたそうだぜ。』
1945年2月19日に硫黄島に米軍が上陸、翌月の3月26日に硫黄島は陥落
米軍は日本へのB29での空襲の為の護衛戦闘機の出撃基地、そして補給の中継基地として硫黄島を使用し
日本本土全域が敵機の標的と化すことになる。
『晃、お前は平気なのか?』
『何がだ?』
『寝食を共にし、自分たちが教えた子らが...あんな風に...』
うぐっ..健の頬を涙が伝う
『平気だと言ったら嘘になる、だけど仕方ないだろ?戦争中なんだからよ...』
そう言う晃の顔は悲しみに満ちていた。
ーーーーーー
同年4月1日に米軍は沖縄へ上陸し日米双方による激しい戦いがはじまる
4月7日、坊ノ岬沖海戦、1945年、同月7日に沖縄へ海上特攻隊として向かった戦艦大和とその護衛艦艇をアメリカ海軍の空母艦載機部隊が攻撃した戦闘日本海軍が発動した天一号作戦の一環として第一遊撃部隊、第二艦隊のうち、第一航空戦隊の戦艦大和と第二水雷戦隊の軽巡洋艦1隻・駆逐艦8隻からなる艦隊は沖縄方面に出撃、アメリカ海軍空母機動隊がそれを迎撃する。
沖縄へ殺到した敵艦隊を叩く為、健達の基地からも特攻機が出撃して逝く
その特攻隊に戦果確認機ではなく特攻隊員として健は飛び立った。
健は、この時代を生きる健男としてじゃなく
水川健自身の意思で特攻に志願した。
どうせ一度は死のうとした命
その命の使い道は自分で決めたかった
「健?本当にそれで良いのか?」
と健男の声がした
「それが、この時代の運命なんだろ?」
「健...すまない。」
「気がかりは景子さんのことだけど、景子さんのことは晃に任せることにした」
「晃に言ったのか?俺は何も感じなかったが...」
「手紙に遺した。」
「そうか。」
「あと、景子さんへの手紙は基地の近くの子供に渡すように頼んでおいたよ。」
「何から何まで、本当にすまない。」
「この次に俺に生まれ変わったら、真面目にしっかり生きるさ。」
「健...」
ーーーーーー
大和への敵の攻撃は午後12時40分頃から約二時間におよぶ戦闘の結果大和以下6隻が沈没日本海軍の大型水上艦による最後の攻撃となり
連合艦隊は本当の意味で、その機能を喪失した。
大和轟沈の爆煙が健の視界に見える
健は大和の最後の命の炎と煙の周りを敬礼しながら旋回し
戦果確認兼護衛直援機を努める晃も同じように旋回し大和の最後を看取り
翼を上下に振り
沖縄の敵艦隊へと向かって飛んで行く。
ーつづくー
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