表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/42

さぼり癖と解決策

「お前どうしたんだよ。ゲート今まで出ないなんてことなかっただろ?」


いや本当にもりかわにはごめんって思ってる。でもゆっきーアメリカ大丈夫かなとは気になるじゃん。


「まあレース後の検査でも何もなかったしよかったよ。ケガするよりよっぽどいいからな。少し待ってろよ」


馬房の前で包丁を使い始めたかと思うと切った人参とリンゴをもりかわが差し入れてくれた。…もしかしてまじめに走らなくても褒めてくれるのか?


次のレースも意図的にさぼろうかな。流石にゲートから出ないのは今回以降やるとわざとなのがばれるから次のレースでは息切れしたような感じで下がっていくのをやってみよう。


そうして中山競馬場から馬運車に乗り大井競馬場に帰ってきた。降ろされるとほかの厩舎の厩務員たちからの出迎えもあり地方馬の中央出走は地方競馬のチーム戦のような雰囲気を感じる。


1週間調教を休むと能力検査のためにゲート練習をする。しかしまじめにやればゲートなんて余裕で出られる。3日後にはすぐに再検査の日となり問題なく発走をこなした。


「うん、発走前回失敗したのは気がかりだけど普通にやれば問題ないな。これなら次走は在厩調整で大阪杯かな。阪神遠征しに行こう。森川君調教頼むよ」


「そうですねダメージはないけど無駄にこれ以上輸送させるのも嫌ですから、春まで調子崩さないように調整頑張ります」


よし次はGⅠか少し気まずいけどさぼるか。最下位はなんか癪だから10着くらいでギリギリ二桁狙うか。


そのまま2か月が経ち季節はすっかり春になり、桜の咲く阪神競馬場のパドックを今は歩いている。前回関西に遠征したときは菊花賞だから半年振りか。あの時はゆっきーを勝たせたい一心で走っていたけど、その理由はもうないからな。


隣を歩く無精ひげを剃った小綺麗なスーツを着た男かまだのこと俺はあんまり好きじゃないしな。こいつのために頑張ろうとはならない。


メンバーにはジャパンカップの時一緒に走ったユーログルーヴとネビュラゴースト、あとはカゼノバーリライくらいしか強い印象があるくらい。まともに走れば普通に勝てそうだ。


インペリアルロードなどの国内トップクラスの馬は昨日の夜ラジオで聞いたドバイに出ていた。ドバイシーマクラシックはアルカディアンドリームがインペリアルロードとのマッチレースを制して勝ったらしいし、喧嘩吹っ掛けてきたシャドウライダーはドバイターフ圧勝してるしかなり強いな日本馬。


そして俺の中のメインレースはアメリカで修業中のゆっきーが向こうで出会った馬とUAEダービーに出ていたことだ。まあいいところ無しのレースだったが久々に名前を聞いてうれしくなったな。


そんなことを考えてパドックを歩いていると大阪杯のゲート前に来ていた。あ、ぼーっとまたしていた。ゲートはしっかり出ようと考えてゲートだけはしっかりと出る。


ネビュラゴーストやユーログルーヴなどの人気馬は先団に、それを見る形でカゼノバーリライが追走して俺はぽつんと最後方だ。向こう正面からムチを入れられて追われ始めたが、先に上がりすぎると普通に勝っちゃいそうだから従わずに最後のほうスタミナ切れた馬を交わす作戦だ。


さてと直線に向いたしあと6頭抜いてゴールしようか。垂れている馬を抜くのは簡単で俺はスタミナにはまだまだ余裕があるので少し抜きすぎてしまい8着でゴールをした。勝ったのはカゼノバーリライみたいだ。やっぱりあの菊花賞レベル高かったよな。


引き上げるとかまだが待っていた。


「お疲れ、なかなか進んでいかなかったな」


「うーん調教の時は追えば伸びるんだけど、今日はエンジンかかんなかったな。でも最後はそこそこいいスピードで走れてるし、血統も父ディープボールドだから少しずぶくなったのかも」


「まあディープボールドのずぶさよりはまだ軽い気がするけど年齢重ねたらどうかなとは俺も思うよ」


なるほど俺の父親がずぶいから、向こう正面でまくらなくれなくても不思議に思われないのかなるほどな。いいこと聞いたぞ。


5月になり次走は天皇賞に決まった。久々の京都だなと思いながら天皇賞でも全く同じ走りをしたが前よりスタミナ切れている馬が多く俺は後方でずっと足をためていたし、菊花賞の時と違ってまくってもいないから最後抜きすぎてしまい僅差の7着と危うく掲示板に入るところだった。


レース後のコメントは前回と同じく「前よりずぶくなってる、これならダートのほうがいいかも」よしこれで完全にずぶい馬だと思わせることに成功したみたいだ。


天皇賞のレース後には放牧に出されて1か月ほど以前もいた千葉のエピックステーブルで調整をしたのち6月半ばに大井競馬場に戻った。


地方移籍してからは初めてのダートのレースである帝王賞に出走することなった。レースは砂を被るとレース後に目を洗われる。それが俺は嫌なので大外枠での発走で助かった。


流石に帝王賞はダートが主戦場の馬ばかりで知っている馬は1頭もいない。


帝王賞はいつも通り大井競馬場のコースを走るので輸送もなく楽だ。ギリギリまで寝れるしな。


パドックでは俺ともりかわを応援する横断幕が掲げられていた。返し馬でも俺の名前が呼ばれた途端に大歓声がスタンドから聞こえる。しかし俺は応援されても申し訳ないがさぼることに全力をかけている。


レースは砂を被らないように外を回しながら後方を進んでいく。地方は前に行く中央の力のあるダート馬と後方の少し力の足りない地方馬の差は大きく後方を進むと先頭までは40馬身ほどあるように感じる。


3コーナーで流石に負けすぎるのもなと思い少し前へと行くが、4、5頭は抜いたが先頭からは20馬身ほど離されてしまった。


怒られるかなと思いながら引き上げると調教師のあさい先生が困った顔で出てきた。


「森川くんどうだ?ダート合わないか?なにか不調を脱するきっかけはないか…」


「ダートが合わないわけじゃないですけど進まないのは気性かもしれないので次のレース次第で雰囲気を変えさせるという面や、筋肉量もあって使い続けると固くなる血統なので一休みさせた東京記念で結果が出なければ『去勢』も視野に入れたいです」


良かった怒ってはないみたいだ。…ん?今去勢って言ったか?流石に無いよな…?


「なるほどな、去勢は近走ずぶいことの改善になりそうだしありだな次走の結果次第で去勢させてもらえるか馬主さんに聞いてみるよ」


おい!どうしてこうなった…とりあえず次の東京記念は絶対に負けられない。俺の玉がかかっているんだからな。一気に緊張感が出てきた。

流石にやる気の問題で負ける大阪杯と天皇賞と帝王賞を今更読まされても読み手としてはつまらないかと思ったので書き直しました…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ