ジャパンカップのレース後
「Fooooo!!!」
アルカディアンドリームの騎手が馬上で立ち上がり叫び声を上げている。
「お疲れ、頑張ったけど悔しいな。正直坂を登ったあたりでは勝ったかなと思ったんだけどな」
ブルルンと返事をする。
「まあでも馬群割れたし収穫はあるレースだったから次に繋げような」
もちろんだ。少しは馬群もマシになったしいいレース出来たから悔いは無い。ただ、あの抜き去った時の眼中に無いような目は許せないからいつかリベンジ戦をしてやろう。
「櫻岡君またまた惜しかったね」
声をする方を見てみるとユーログルーヴに乗った滝騎手がいた。
「菊花賞に続いてもう少しなんですけどね」
「でもレースぶりは悪くないし、判断も間違ってないと思うから仕方ないよ」
ゆっきーは自信ない時よくあるからその言葉助かるだろうな。
「そういえばこのレース後アメリカ行くんだってね、俺もBC行くから向こうの厩舎挨拶一緒に来なよ」
「え、ほんとですか?ありがとうございます。1年くらいの遠征で考えているので、スタートダッシュが肝心だから助かります」
「でも成功するかは櫻岡君次第だけどね、じゃあこれで」
てかゆっきー1年近くも行くのかよ。その間誰が俺に乗るんだ。ゆっきー以外のために頑張るの嫌なんだけど。
地下馬道を通り、みなちゃんと村上先生の2人と合流するとみなちゃんは大泣きで待っていた。
「…あの…先生なんでこんなに泣いてるんですか?」
「馬群割ってきた時は感動で大泣きだし、負けて悔しくて大泣きだしで泣きっぱなしなんだよ」
村上先生が苦笑いでそう話す。
「だってリアンがあんなに頑張ってて泣かないわけないですよぉ!うぅぅぅほんとに頑張ったねぇ〜」
こんだけ大泣きしていると少し引いてしまう。でも普段からしっかり俺の事を世話して試行錯誤してくへてからそれも当たり前なのだろう、勝てなくてごめんな。
「そんなに泣くなよ、俺が上手く乗って勝ってから泣いてくれ」
「うん…でも裕貴アメリカ行っちゃうしリアンは大井行っちゃうからこのコンビ最後かもしれないから勝ちたかったよ〜」
「美奈ちゃん大丈夫だよ。リアン来年と再来年は少なくとも走らせるから。来年の南関東の成績見てだけどまた盛岡にリアン戻すし」
声の主を探すとはるきさんだった。
「ほんとですか?それならまだ頑張ります〜」
安堵でまた泣くみなちゃん。しばらくは泣き止まなそうだ。
「リアン、頑張ったな。また大井で頑張れよ。今年は多分これで状態次第だけどシーズン終わりだと思うし。また来年頑張ってくれ」
ゆっきーとみなちゃんが居ればだけどな。まあ今年休みならしっかり休ませてもらおう。
クールダウンで曳き馬をして、尿検査をしてから厩舎へと戻る。
ふかふかの寝藁に横になると疲れからか飼葉を食べる時間の数分で寝ていた。
「起きてよー!ご飯の時間だよ、あんなにすごいレースしたのにいつも通りだね〜」と泣き止んだみなちゃんが言う。
いつもより少し人参を入れて甘めの飼葉を食べ終わると死んだようにまた横になって寝た。




