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朝日杯セントライト記念レース後

「リアンー!ほんとにおめでとう!そしてふたりともありがとう〜!」


泣きながらみなちゃんが迎えに来た。


「おう!今日までの管理のおかげだよ、美奈ちゃんありがとう。でも下克上はやっぱ気持ちがいいわ」


「…裕貴、ありがとう…!」


「先生、まだ本番は先ですから!次も頑張ります」


村上のじいちゃんも大泣きだ。


なんかもらい泣きをしてしまいそうな環境だな。


そうして優勝レイが掛けられて、みなちゃんに曳かれながらクールダウンをする。


「もう一生分の声を出した気分だよ〜」


少し落ち着いてきたみたいで顔を腫らしながらもニコニコと話しかけてくる。


「ほんとにありがとうね。私ね、リアン来る前まで厩務員ずっと辛かったし、今シーズンで辞めようと思ってたけど辞められないや。この日のためにやってきたんだなって思ったよ」


また泣いちゃったよ…でも勝ててよかった。また勝って嬉し泣きさせてやろう。


「あ、裕貴のインタビューだ」


ターフビジョンを見るとゆっきーが映っていた。




「裕貴、こっちでインタビューだから行ってこい」


「あ、はい。分かりました」


レースを勝ったあとの俺は大忙しで人生初の中央でのインタビューだ。


「えーそれでは、セントライト記念を勝ちました櫻岡裕貴ジョッキーです。おめでとうございます」


「ありがとうございます」


ぺこりと頭を下げる。


「今のお気持ちは?」


「そうですね、なんとか権利取って菊花賞走りたいって言う目標を達成出来て嬉しく思います」


「地方の盛岡からの参戦でしたが走りはどうでしたか?」


「自在性ある馬なのでやっぱり盛岡より中央の馬はテンが速かったので、逃げなかったですけど、結果的にカゼノバーリライ見れる位置で競馬できて良かったです。」


「4コーナーでは外に弾き出される感じの競馬になりました。最後も接戦だったと思います。乗ってる感覚としてはいかがでしたか?」


「まあそこからすぐに加速してくれたし、最後もうひと頑張りしてくれて差しきれたのでリアンに感謝ですね」


「今度は菊花賞ですね。抱負をお願いします」


「今回で盛岡に強い馬がいるんだぞって所は見せることが出来たので、なんとかいい競馬ができるように、勝つかどうかは競馬なので分からないですけど、リアンの力を引き出せるパターンで競馬させてあげたいです」


「ありがとうございました。櫻岡騎手でした」


「ありがとうございました」


自分でも結構いい受け応えができたのではないかと思う。


「正直去年お前がうちの厩舎に来た時は下手くそだしダメだなって思ってたけど、今年からは騎乗技術も上がってすっかり1人前だよ」


「先生、まだまだです。仕上げてくれてありがとうございます。先生に恩を返すために、来月京都行きましょう」


「そうだな、関係者の方々に挨拶して写真撮るぞ」


ポロポロと泣きながらおばあさんを車椅子に乗せている老夫婦がやってきた。リアンの生産者の秋元さんだ。


「こしあんを勝たせてくれてありがとうございます。最後の最後でこんないい子が出てくるなんて私たちは幸せ者です」


「リアンをあんなにいい馬にしてくださってありがとうございます。あの馬がいなかったら自分は今より未熟なままだった思います。まだまだ未熟ですが頑張ります」


「楽しみにしてます。それまで私たちも元気でいないとですね」


「はい、もう京都でGIタイトルプレゼントできるように、また頑張ります!」


その後は遥輝さんと話したり、1口の出資者の方々と軽くお話したあと写真撮影になった。




ゆっきーのやつ一丁前にかっこいいこと言ってたな。まあ褒めてくれたし次も頑張ろう。


写真撮影はもう最近たくさんしているのでポーズも慣れてきたな。


「よう、リアン。今回中央の競馬だから出資者の人も来てくれてるんだ。いつも通りお利口さんでいてくれよ」


お、はるきさんじゃん。久々に撫でられるけどやっぱりいいな。


出資者の人たちも興奮冷めやらぬ顔でこっちにやってきた。ツアーで見た事ある人たちも沢山いる。


「一時期はどうなることかと思ったけどありがとう」

「リアンくん、ありがとうね」

「初めて重賞勝った…一口馬主始めてよかった」


みんな喜んでくれて何よりだ。いいことをしたから気分がいいな。


「よかったね、皆さんに最高の結果で応えることが出来て〜」


ほんとだよみなちゃん。


ゆっきーも合流したが写真を撮らずに誰かを待つみたいだ。


遠くに車椅子に乗った牧場のおじいちゃんとおばあちゃんが見えた。


何年ぶりなんだろう2年振り近くの再会でテンションが上がってきた。


みなちゃんを引き摺りながらおじいちゃん達の方へ向かう。


「もう、リアン。そっちじゃないよ〜!」


ごめんて、でも先に報告したいんだ。


みなちゃんもそっちに行く気しかないと思うと諦めて連れてってくれた。


「こしあん。頑張ったねありがとう」


おばあちゃんが車椅子の上から優しそうに声をかけてくれる。


ほんとに色々あったんだよ。話したいことが沢山だ。


「お前のおかげで20年振りの重賞勝ちだよ。ほんとに大きくなって…よく頑張った」


そんなに久々なのか。


車椅子の上にいるおばあちゃんが触れる位置に首を持ってきて撫でてもらう。


懐かしいなぁ。こうやって撫でられて厩舎に帰ってたあの日々が大好きだった。


「こしあん、皆さんをお待たせしちゃってるから写真撮ろうね」


そうだな。行こうか。


車椅子の進む速度に合わせて歩く。


待っている関係者の人たちも顔がニコニコしている。幸せな空間が広がっていた。


そうして関係者が俺の横に並び、カメラマンの人に写真を撮ってもらう。


出来た写真が是非とも欲しいものだ。


「また次のレースも秋元さん来てくれるから。今日はバイバイしようね」


まあ仕方ない。みなちゃんの仕事増やしても良くないからな。


「「頑張ってねこしあん」」


後ろから二人の声が聞こえて見えなくなるまで目で追っていた。


今日は今までで一番幸せな日だった。モチベも上がったし菊花賞は絶対に勝つ。

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