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祝勝会と次走

何とか今年10勝目を初の重賞勝利で終えた俺は関係者の皆さんと祝勝会に来ていた。


乾杯の音頭をとるのは村上先生だ。機嫌がずっといい。


「えー村上厩舎として今年初めて重賞を取れたこと、そしてサファイア賞勝利した盛岡のニュースターのリアンエテルネル号の勝利を祝って乾杯!!!」


「「「乾杯!」」」


「大人になってビール飲んだら楽しいのかな〜」


そう話す美奈ちゃんは俺と同じ19歳でお酒は飲めないので、オレンジジュースだ。


「知らんわ、でもこういう日は酔った方がいいんだろうな」


そんな話を続けていると後ろからいきなり肩を組まれる。根津さんだ。


「おいおい裕貴、美奈ちゃんといい感じなのか?おん?」


「根津さん酔うの早すぎでしょ…俺らオレンジジュース同盟なだけですよ」


「まあお前がうちの厩舎のアイドルと付き合えるわけないしな」


「てかそんなことより勝ったんで時計買ってくださいね」


実は根津さんとリアンで勝ったら時計プレゼントしてくれる約束をしていたのだ。


「まあお前も上手くなってきてるし、次の休み空けとけよ」


「よっしゃ!それでこそ漢ですよ!」


盛岡の厩務員は基本的に親父くらい歳離れてるから、みんな面倒見が良くてお世話になってる。


「裕貴くん、今日はいい騎乗ありがとう。こしあんもとい、リアンをこれからも頼むよ」


「あ、遥輝さん。リアンとこれから勝ちまくって色んなところ連れて行けるように頑張ります」


関係者の人と話して親睦を深められるから、騎乗数が増えるのも祝勝会のいい所だ。あとシンプルに話してて楽しい。


「うん、応援してるよ。こしあんとうちの出身の5歳も大きいところで走ると思うから、その時楽しみにしてるよ」


うち出身というとユニバーサルファーム出身馬かな、こしあん以外にもいるのか?


「盛岡にこしあんと同郷いるんですか?」


「あれ、知らないのか。村上さんの厩舎にアップリフトって栗毛いるでしょ?あれうちの生産だよ。まあこしあんと同期も加賀さんのとこにいるよ」


「え、アップリフト!?いつも思うんですけど馬の世界狭いですね。それに他にもいたんですね。」


「ほんとだよ。…あ、村上さんと次走発表するから一緒に前来てよ」


「あ、はい行きます」


前には俺と遥輝さん、村上先生の3人だ。


「えー皆さん。祝勝会も終盤になりましたがここで次走の発表したいと思います」


俺の隣にいる村上先生が口を開く。


「おっ!」

「待ってました!!」


一気に盛り上がりを見せる祝勝会。


「次走はOROカップと迷いましたが、騎手は裕貴でオパールカップにすることに決めました!それじゃあ騎手として裕貴から一言あります」


えぇ…!?今聞いたばっかなのに無茶ぶりきついですよ先生…


「はい、とりあえず難しいことは言わないです。勝ちます。そしてこれは僕の野望なんですけど、オパールカップでセントライト記念か神戸新聞杯のトライアル優先出走権取れるので、秋になったら中央殴り込みに行きたいです!」


「おおっ!よく言ったー!」

「タイム刻めるようにしてから挑戦しろよ!」

「とりあえず30勝早くしろー!」


優しい野次が飛ぶが顔は全員期待に満ちた少年のような顔をしている。


オパールカップは1ヶ月後だ。それまでに騎乗技術とリアンの調子を保つことを重点的にやっていこう。


しばらくして祝勝会はお開きとなった。明日も当番の美奈ちゃんは帰り、2次会に村上先生や遥輝さん、当番ない人は向かった。


厩舎に俺は泊まっているので帰り道は美奈ちゃんと一緒に帰る。


「にしても大きく出たね、中央挑戦できるかなぁ〜」


「任せてよ、オパールカップまで俺の騎乗技術もっと上げないとだけどね」


「じゃあ、中央競馬のパドックも歩かせてくれるみたいだし、今のうちにスーツ買っておこうかな〜?」


「任せてよ。次のオパールカップの賞金で俺が買ってやる」


「よし、じゃあ指切りね〜!」


とりあえず俺のすることは1つ勝ち続けるだけ。そのために色んな馬にもっと乗せてもらおう。


途中で用事があるからと、美奈ちゃんとは別れてこっそりリアンに会いにいく。


案の定リアンは横になって寝ていた。


「野生だとお前食われてるよ…リアン、お前と俺で菊花賞行こうな」


そう呑気な顔して寝ているリアンに話しかけるのだった。


ついでにもう1頭見に行くことにしよう。


加賀厩舎に入るとひょこっと顔を出して、こっちを見てくる芦毛。こいつが俺のお目当ての馬だ。


3歳の18戦未勝利馬スフォルツァート。今日は3着だった。ほとんどデビューから掲示板を外してない馬主孝行な馬だ。俺はスーって呼んでる。


最近沢山乗せてもらってるし、こいつはどうにかして勝たせたいと思っている1頭だ。


「スー、お前も次で勝とうな」


うんうんと頷くように首を振るスーを見て癒されながら帰路に就いた。

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