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よく分からないからとりあえず寝ておく

馬になって早1週間。慣れなかった4足歩行慣れてきた。


とりあえずこの1週間でわかったことを整理すると


ちっちゃな牧場で馬になったってこと。俺以外に親馬3頭仔馬1頭しかいない。


俺のお母さんがリコリスって名前ってこと。ちなみに俺はこしあんって飼い主に呼ばれてる。何で餡子の名前なんだよ。


そして飼い主が…今にも倒れそうなおじいちゃんとおばあちゃんってこと。本当に心配になるくらいにヨボヨボなのだ。


今日の朝なんか放牧地に俺らを離す時ぎっくり腰になってたし転んでたり色々と心配になるのだ。


他の親馬と仔馬も気を遣ってんのかおじいちゃんの歩くスピードに合わせてる感じがある。


馬ってもっと立ち上がったり気性が激しそうなイメージだったが拍子抜けだ。


でもおじいちゃんはよく撫でてくれるし、おばあちゃんはこっそり親に人参をあげたりしていて馬愛に溢れているので俺は大好きだ。


今日もゆっくりひなたぼっこをして寝ていると、もう1頭の俺と同じ黒い仔馬が脚でちょっかいをかけてくる。こいつはつぶあんって言われている。


仕方ないから起きて構ってやる。つぶあんは適当に一緒に走ってやったら満足してすぐ親の乳を飲みに行くからそれまで走る。


風を切る音が気持ちいいなと思いながら放牧地の端から端まで半分くらいの力で軽く走る。


少し息切れしてきたのでスピードを落とすとつぶあんは走り足りない様子でどんどん遠くに走っていく。もう座ってもいいかなと思い少し歩いてから座る。


ニートをしていた時よりものどかで幸せな日々だ。強いて言うならネトゲをしたいところだが帰って厩舎で見るテレビで我慢しよう。


しばらく何も考えずに座っているとお腹が減ってきたのでリコリスの乳を飲むことにしよう。


近寄って口を伸ばし乳を吸う。味はヤク○トのような味だ。甘いしこれだけで生きていけるんだから最高だ。


お腹も1分ちょっと飲むといい感じになってきたので昼寝を再開する。


この幸せな生活ずっと続けたいな、そうして目を閉じた。


目を覚ますとすっかり日も落ちかけていておばあちゃんが迎えに来ていた。


もうつぶあん親子は帰っていて、ゲートの近くにリコリスとおじいちゃんが立って呼んでいる。


「いっぱい遊んで疲れちゃったのかいほんとにあんたはよく寝るねぇ」と微笑みながら話しかけてくる。


優しい、そう思いながら歩幅を合わせて馬房へと帰る。


小さい頃、おばあちゃんに幼稚園の迎えに来てもらっていたのを思い出すなぁ


今日もそんな寝まくった日々を繰り返して早5ヶ月。季節は夏になって虫が多くなってきた。


段々と親の食べている餌も食べられるようになってきたが、甘くないとどうにも美味しくないので、ポカリの粉を餌のペレットにかけてもらっている。


イメージとしてはシリアルに牛乳をかけるイメージだな。そのご飯を繰り返していると飽き飽きしてくる。


まあ残すとお腹減るし食べるしかないんだけどな。


そんなある日、目を覚ますとつぶあんが嘶きながら走り回っていた。放牧から帰る時間帯かなと思って辺りを見渡しても親はもう居ないのになかなかおばあちゃん達が迎えに来ない。


こんなことは初めてだ。おかしいと思いゲートの方へ行くとおじいちゃんが申し訳なさそうに「もうお別れなんだよ」と優しくつぶあんに声をかけた。


流石の俺もこれがなんなのかわかった。離乳だ。


「お前は本当にずっとぼーっとしてるな。60年牧場やってきたがお前程離乳で落ち着いてるやつは見た事が無いよ」


そう笑いながら話しかけてくる。


暫くは俺ら2人…いや2頭の生活になるんだろうな。

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