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民の夢
兵士はフリディアの様子に
直ちに宝物庫へと走った
「フリディア姫様~?
どうなさったのです~?
いつもの腹黒猫なで声は~」
リザーノは襟足を指先で巻き巻き
呑気に軽口を叩く
フリディアがジロリと振り返る
「三日月城が堕ちて
悪魔軍の後ろ楯も無くなったわ
私のマドセアがいつ魔物に
飲まれてもおかしくないのよ」
ふわふわとした雰囲気を
かなぐり捨て歯噛みするフリディア
「民はスラム住まいで
私のマドセアとは~
清らかな湧水はとうに
枯れ果ててマドセアなど
捨ててしまったとばかり~」
自身の襟足の髪を数本
引き抜きフッと飛ばしながら
宣うリザーノを一瞥すると
フリディアは目を逸らした
「私には何の力も無いのよ
戦うことも出来ない
戦わない意思を示し続けて
機会を得たかったのよ」
「何とも浅はかですね~
私が民なら蜂起しています~
先程の母子といい
何故か民はフリディア姫を
慕っているようですが~」
「・・マドセアの清らかな
水の姫、父様と母様の
面影が民に夢を見せているのよ」
フリディアはそう呟いた




