闇色の泥
闇色の泥に染まった馬車が道なき道を
ガラガラ走る。
リザーノが闇沼を泳いでいた
ドラゴンナメクジに服従の宝石を
引っ掛けたのだ。
ドラゴンナメクジの波打つ腹は
意外に速くキャタピラーの如く
進んで行く。
「いや~それにしましてもっ
フリディア姫様の輝くお髪が泥で
台無しっでございますね。
ま~でも姫様の腹黒さに比べれば
闇色の泥何ぞ・・あ痛っ!」
フリディアはドレスの乱れも気にせず
脚を振り上げてローキックを放った。
脛を押さえてヒーヒー痛がるリザーノ。
闇色に染まった髪を掻き分けて
ジロッとリザーノを見るフリディア。
「・・三日月城が沈む何て
計画が水の泡よ。
あの情けない勇者ゼムは
本当に勇者だったのかしら。」
だとしたら靡く相手を間違えたかしらと
ギリギリと唇を噛むフリディア。
「ま~まっさか~ですねぇ~
勇者ゼムの姿は全く見掛けません
でしたし?驚嘆すべきはあの恐ろしい
怪異の使い手では~?
フェキリオ様を圧倒してましたし。
あのガラリア様やチェラッド様を
味方に付けるとは信じられない。
ま~フリディア姫様が幾ら求めても
得られない力をお持ちですね~
ぎゃふっ!」
フリディアは泥だらけの髪を振り上げて
ふんっ!とリザーノ目掛けて叩きつけた。
「そうよ、あの怪異よ。
あれを浄化してしまえば良いのよ。
・・聖水、白き祈りの神殿。」
フリディアがぶつぶつ考えていると
リザーノが目に入った泥を拭いながら
顔を上げる。
「白き祈りの神殿など創造の月が
堕ちた時に無くなりました~。
祈りの神子や聖水など言わずもがなです~。
そもそも清らかな心の持ち主でない
フリディア姫様に扱えないのでは~?」
あっ!と身を捩るリザーノに
フリディアは手をあげるでもなく
自嘲気味に微笑む。
「フッそんな事分かっているのよ。
確かあの宝物庫に・・」
闇色の泥に染まった馬車は時にバウンドし
泥を滴らせながら走り去って往く。




