立ち尽くす
「あんたはこの部屋を使いな。」
薄暗がりに照らされた廊下の一室に
アキラを案内するマダム。
「すみません
俺迷惑掛けたのに部屋の世話迄
して頂いて。」
マダムに頭を下げて礼を言うアキラ。
「今は非常事態さ、
いつ帰れるのかも分からないからね。
それと此れを使いな。」
マダムはアキラに刀を渡した。
「此れは・・?」
驚いてマダムを見るアキラ。
「アレを祓いに来た道士だか祓い屋だかが
置いていった刀さ、好きに使いな。」
トントンと自分の肩を叩きながら
ぐるりと首を回すマダム。
アキラは鞘から刀を出して瞠目する。
「・・此れは良いものだ。
ありがとうございますマダム。」
刀を鞘に納めてギュッと握りしめるアキラ。
「油断するんじゃないよ
ここは中々一筋縄ではいかない
世界のようだからね。」
マダムの言葉にコクリと頷くアキラ。
ゼムは離れた廊下から
その様子を眺めていた。
「何故だ・・
勇者は私のハズなのに
どうして私の元へと集わないのだ。」
困惑し苦悩するゼム。
「呆れて果ててものが言えないわね。」
気配無く現れたガラリアの足元を
薄明かりが照らす。
「ッ!ガラリア!」
身構えるゼム。
「大きな声を出すんじゃ無いわよっ
煩いわね。」
シャッと威嚇するガラリア。
「大体ねぇアンタは
勇者だの何だの宣ってるけど
そんなの今まで何人も来たわけ。
アンタだけじゃないのよ?
どいつもこいつも
そりゃ見事に散っていったわよ。」
腰に手を当てて蔑む様に見るガラリア。
「な、何っ・・」
動揺して目が泳ぐゼム。
「ところがアンタと来たら
引き際も分からずにフェキリオの手先に
なるなんてねぇ
勇者が聞いて呆れるわっ。」
ハッと両手を上げるガラリア。
「そ、それはその
お前こそ何故ここに居る!?
フェキリオと思い合って
いたんじゃないのか?」
ぐっと睨み返すゼム。
「思い合う?フェキリオと?
ハッ冗談止めてよ馬鹿馬鹿しい。」
顔をしかめるガラリア。
「しかし奴はお前の事を・・」
今までのガラリアの振る舞いを考えて
戸惑うゼム。
「勘違いする方が悪いのよ?
アンタが守ろうとしてる
人間達の支配者も腐敗してるじゃないの
どっちに付いたって同じなのよ。」
うっと言葉を飲み込むゼム。
「勇者だの何だの
誰でも良かったんじゃないの?
兎に角余計事をするんじゃないわよっ。」
シャーッと威嚇した後
音もなくガラリアは姿を消した。
「誰でも良かった・・?」
その言葉に立ち尽くすゼム。




