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悪意の姫

大きく口を開いた鍾乳洞の中に

城の様な内壁の建物がある。


滴り落ちる水滴が

じっとりじめじめした

雰囲気を醸し出す。


足元の泥濘からは

形に成りきれていない

悪意の影がユラユラと立ち上る。


この場には似つかわしくない

出で立ちでふわふわとした

淡いブロンドの髪を揺らして

儚げな佇まいの某国の姫が居る。


身体に纏わりつく

悪意の影をくしゃりと

宝飾を施したヒールで踏み潰す。


既に悪意で満ち満ちている

姫の性根に恐れをなして

悪意の影が地中へと消える。


「・・あら、ゾイアスではなくて?

その傷は何?どうして今日は

狼に乗っていないの?」


愛らしい瞳を細めて

鈴を転がした様な声で尋ねる姫。


「フリディア姫かっ

ガ、ガラリア様が乱心されたのだ。

急ぎフェキリオ様に御伝えしなくては。」


顔の引っ掻き傷を押さえながら

ゾイアスが答える。


「そうなの、あのドラ猫・・

いいえ、ガラリア様が。」


フリディアはその愛らしさには

似つかわしく無い醜悪な笑みで

ニヤリと笑う。


「姫こそ城へ何用だ。」


押さえた指の隙間から

ゾイアスがジロリと見る。


「宝石が足りなくて

フェキリオ様にお力添えを

お願いに来たの。

捧げ物として狼族を何人か

捕まえて来たのだけれど

足りるかしら?」


フリディアの視線の先には

格子に覆われた馬車の中で

狼族が唸り声をあげている。


「・・また足りないのか。

まぁ屈強な狼族なら

使い道は多いだろう。

来い、フェキリオ様なら

謁見の間に居るハズだ。」


ゾイアスが片手を振り上げて招くと

フリディアが可愛らしくドレスの

裾を摘み上げる。


灰色の煙を残して二人の姿が消えた。


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