起床
金色の髪をした男が女の人を
後ろ手に庇いどうやら応戦している
ようだ。
中々腕が立つ。
相手のレイピアを片手剣でいなすと
くるりと返して剣の柄で突いている。
脚払いを掛けて
剣の先でレイピアを引っ掛けて
クルクルと相手の手から巻き上げ
放り投げる。
「何かの映画で見たシーンかな
ドラマかな?」
凛はそんな事を思いながら
ホッホッと男の動きを真似てみる。
凛が呑気に眺めていると
男が庇っていた女が
レイピアを拾い上げて
男の背後から襲い掛かる。
「危ないっ!」
自分の声で目覚めると
布団の上だった。
「は~何か臨場感のある夢だった。
お~っと時間。仕事、仕事」
もぞもぞ起き上がると
身支度を整える。
凛は古い家を丸ごと借りて
1人で住んでいた。
バイト先のマダムのご厚意で
格安物件だ。
マダムをもってして
「まさか人が住み着けるとは
思わなかったね。」
と言わしめる程だ。
変わった作りで外から見ると
庭木の隙間から小さなサンルームが
見えるが辿り着いた事がない。
長い廊下の両端には
ドアが幾つもあり
何だか家の中で迷子になる。
ゴポゴポ水の音がするので
水漏れを心配したが
特に問題は無いようだ。
掃除も面倒なので部屋は
1つだけ使い他はドアを
開けた事も無い。
凛は上着を羽織ると家の前
通勤時間徒歩0秒の
『妖食 定食 マダムの店』
に出勤した。
「おはようございまーす」
「何言ってんだい!もう昼だよ!」