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遠慮しないで

森化した垣根を越えると

古ぼけた玄関ドア。


日も暮れて辺りは暗く

延びきった木々の葉が

月の光をも遮り尚暗い。


暗くて見え辛いな~

何て凛が思っていたら

カバーの汚れた玄関先の灯りが

ボウッと灯った。


オレンジの薄明かりが

周囲を不気味に照らし

ホラーな明るさだ。


そしてドアは音もなく開き

錆びた蝶番が風もないのに

キィキィと音を立てている。


「さあさあマダム、アキラくん

遠慮しないで入って。」


嬉しそうに2人を招く凛。


「冗談じゃないよ!

相変わらず気味が悪いね。」


マダムが顔をしかめて

アキラの方を振り向くと

アキラは習慣的に祓おうと

したのか御札を取り出している。


「・・やれそうかい。」


「うっ、いいえ

無理ですオレには。」


「だろうね。」


マダムは首を振るとふっと息を吐いた。


アキラはそっと御札を仕舞った。


「暗いでしょう?

電気点けるね。」


凛はそう言うとゴソゴソ壁の辺りを

探るとパチッとスイッチを押した。


暗くて長い廊下にボボボッと

オレンジの薄明かりが点き

幾つものドアをぼんやり照らす。


そして蛇口が並んだ

共用の流し台とその先に見える

壁の人形の黒い染み。


じーっと見ると僅かに

動いてるように見えるその染み。


「大丈夫かい。」


マダムが見るで無くアキラに問う。


「何しろ今しがた合見えた

ばかりなので思うところは

ありますが、大丈夫です。」


若干胸の辺りを押さえるアキラ。


「・・もうひとつ言うとね

ここは電気通って無いんだよ。」


マダムの言葉に更に胸を押さえるアキラ。


「えっマダムそうなの?

電気代の請求来ないから

ちょっとドキドキしてたんだ~。」


ホッとした様に凛が言う。


「水道代も来てやしないだろ。」


「えっどうして分かったの?」


テへッと舌をだす凛。


「凛あんたは此処に住める

だけの事はあるよ。」


頼もしそうに目を細めるマダム。


凛は流し台の下に落ちていた

チョコチップメロンパンの

ビニール袋を拾う。


次の瞬間、ドンドンドンッ!

っと玄関ドアが揺れた。

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