只者
「それでね、そのカバみたいな竜に
こうやってぶん投げたんだよ。」
凛は身振り手振りを交えて
見た夢の話をする。
「相変わらず妙な夢を見るね。
ちゃんと眠れてるかい?」
マダムはタバコの灰を灰皿に
落としながら凛を見る。
「大丈夫だよ、マダムがくれた
布団敷いて寝てるよ。」
正確には布団と壁の隙間で寝ている。
小松ちゃんは門限過ぎたら
ばあちゃんに大根で殴られると
帰って行った。
その際アキラがお詫びにと
御札にサラサラと携帯墨壷とミニ筆で
何か書いて渡した。
「これは何ですか?」
小松ちゃんが小首を傾げると
アキラが説明する。
「これが家内安全でこっちが
商売繁盛で後は悪霊退散です。」
かえって申し訳ないと
小松ちゃんは嬉しそうに持って行った。
「あぁ美味しかった。
ご馳走さまです。」
アキラがパンッと手を合わせる。
「あんたまだ食べてたのかい。」
マダムが呆れ顔で見る。
「アキラくんもあんまり
遅くなると家の人に怒られるん
じゃない?」
凛が尋ねるとアキラは
しょんぼり俯いた。
「いやオレは家に居場所も無いし
今回は認めて貰おうと
勝手な真似をしたから。
刀もボロボロにしたので・・」
「お金も無いんでしょう?
どうするの?」
凛が心配して尋ねると
マダムがキュッとタバコを灰皿に
押し付けて消した。
「放っておきな凛。
どのみち只者じゃないんだ
どうとでもなるさ。」
「スヤコさんの仰る通りです。
自分1人どうにか出来ます。」
マダムに目礼するアキラ。
「マダムと呼びな!
・・何だい凛、そんな顔したって
ダメだよ。腕にスリスリ
するんじゃないよ。」
「じゃあオレは此で
色々すみませんでした。」
立ち去ろうとするアキラ。
「マダム~まだ16歳だよ?
見た目はバッチリ大人だけど
まだ子供で学生服だよ?
行くとこ無いんだよ?」
マダムの腕に頭をグリグリする凛。
ゆっくりドアへ歩くアキラ。
「あ~もう煩いね!
冗談じゃないよ!
・・いわく付きの物件だけど
部屋なら空いてるよ。」
マダムがボソッと呟くと
アキラが素早く戻って来た。
「良いのでしょうかっ!?
本当にありがとうございますっ!」
深々と同時礼で45度の最敬礼を
するアキラ。
「アキラくん良かったね~!
マダム優しい!」
マダムの腕に高速で
頭をグリグリする凛。
「ふざけんじゃないよ!全く。」
凛の好きにさせるマダム。




