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プリンのため息

「何だい、まだ居たのかい。」

ジロリとアキラを見るマダム。


「こ、これは何という

あ甘い香りだ。」


す~んと匂いを嗅ぐアキラ。


「プリンだよ?マダムの

デザートはどれも美味しいよ。」


凛はスプーンをくるくるして

アキラが嗅ぎ終わるのを待っている。


「何だい、結局お客なのかい?

注文するのかい?」


マダムは冷蔵庫に手を伸ばす。


「い、いやそのあの

持ち合わせが無くて。」


「とことん客が来ない店だよウチは」

マダムはぼやくとタバコに火を点けた。


小松ちゃんは横でぱくぱく

プリンを食べながら

は~旨い最高とか言っている。


「プリン食べたこと無いの?」


凛が尋ねるとアキラは

ちょっと躊躇しながら答える。


「何と言うかその

オレは子供の頃から修行漬けで

厳しく育てられていて

菓子だの俗な物は一切

与えられてこなかった。」


言い終わってもプリンから

目を離さないアキラ。


「今もまだ子供じゃん」


凛は同情しながらアキラを見る

見た目が老けてるのは苦労している

せいなのか。


マダムは興味無さそうに

タバコの煙を天井に向けて

フーッと吐く。


小松ちゃんは旨い旨いと

メロンの皮ギリギリを歯で

削っている。


「食べる?」


凛は穴が開く程プリンを見つめる

アキラに尋ねる。


「良いのかっ!?」


バッと顔を上げたアキラの目は

キラキラ輝き年相応に見える。


「マダムこのプリンあげても良い?」


「ふざけんじゃないよ!

凛の何だから好きにしな。」


ふんっとタバコを吸うマダム。


「ほらほらアキラくん

座って座って。」


急にお姉さんぶる凛は

アキラの背中を押して座らせる。


アキラは申し訳なさそうに一礼すると

いそいそと腰掛けた。


プリンを食べ終わった小松ちゃんは

まだ食べたそうに見ている。


「さ、食べて食べて。」


勧められてスプーンを手に取るアキラは

プリンをちょっとつついたり

メロンを撫でたり匂いを嗅いでみたり

ほーっとため息をついたりしている。


「頂きます。」


意を決して低い声で手を合わせると

プリンをスプーンでひとへずり。


初めましてのプリンを薄く

削り取ったが固めの仕上がりで倒れない。


顔の近く迄持ち上げると

寄り目で見つめる。


口からそっとプリンを

迎えにいくとぱくり。


「どう?どう?」


「何て美味しいんだ、

こんなに美味しいもの

食べたこと無い。」


頬を上気させて感動を伝えるアキラ。


「そうでしょう、そうでしょう?。」


良かったねぇとばかりに

アキラの背中を撫でる凛。


そっぽを向いてフーッとタバコの煙を吐く

マダム。


名残惜しそうに自分のプリンが

入っていた器を見る小松ちゃん。

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