成敗
マダムはふーっとタバコの煙を吐いた。
良く言えば昭和モダンな店内に人影は無く
ガランとしている。
日も暮れて店先の灯りにはパタパタと
蛾が舞っている。
「あれきり戻って来なかったね。
ふざけんじゃないよ!」
タバコを灰皿にギュッと押し付ける。
「・・カオニャオマムワン
餅米とマンゴーのデザートだって?
凛が好きそうだね
今度作ってやるかね。」
手には『食べさせたい!世界のデザート』
という本があり
パラパラとページを捲っている。
ギャリン、ギャリン
外で耳慣れない金属音が鳴り響く。
アスファルトを削るようなその音。
金属音は徐々に大きくなり
店の前で止まった。
本を閉じるマダム。
店のドアが静かに開き
男が1人立っている。
男は異様な風体で詰め襟に学帽
肩にはコートを引っ掛けており
足には鉄ゲタ、
コートの下からチラリと見えるのは刀か。
「・・客なら入りな
客じゃなけりゃ帰りな。」
マダムの言葉に男はアゴをあげて
学帽の鍔から鋭い目付きで
マダムを見る。
マダムの髪が逆立つ。
そこへ小松ちゃんが駆け込んで来た。
「先生!先に着いてたんですね。
マダム此方悪魔祓いの先生でね、
いや~ウチもばあちゃんが
居るから心配でツテを使って
頼み込んだんだよ。」
血塗られを祓う為に呼んだと
得意気に語る小松ちゃん。
「余計な事をしてくれたね」
ビリビリと場の空気に緊張が走る。
「フン、妖狐か」
「じゃ先生さっそく隣の家に・・
あれ?先生?」
「逃げな小松っ」
マダムが九十九針を飛ばすと
男は刀を振るって防ぎ
懐から札を数枚空中へ放ると
小さな筆で瞬時に何かを
書き連ねた。
マダムが再び九十九針を放つと
札は裂けて空中で爆ぜた。
風圧で倒れ込むマダムと
小松ちゃん。
刀を手にマダムへと近づく男。
「成敗」




