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Face Bullet  作者: kazu
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シリアルキラー

広い駐車場に停められた無数の車。

 中から出てくるのは、小さな子供たちと母親の姿だ。

 昼間のデパートは、専業主婦からの開放感に満ちた奥様方が、子供を連れての至福の    

時間だ。

 中に入ると、子供の手を取って自分の洋服を見て廻る母親や、子供を遊び場で遊ばせながら自分の時間を満喫している母親たちが蠢いている。

 一日中子供と一緒の生活が、どれだけ大変なのか…… 。

 そんな閉心感を開放する場所が、昼間のデパートだろう。

 そして、この日も沢山の子供連れの母親たちの姿がショッピングモール内を埋め尽くす。


「ママ…… 

 ここで遊んでてもいい」

 ウサギのように二本に分けて束ねた髪を、ピンク色の可愛らしいシュシュで結んでいる三歳くらいの女の子が、デパートの玩具売り場でそう叫んでいた。

 少し離れた所では、その娘の洋服を選んでいるのか自分の趣味を満喫しているのか、数枚の子供服を片手に更に洋服を見て廻る母親が、

「そこの遊び場になっている所ならいいわよ。

 ママはここで洋服を見ているから、他の子の迷惑にならないように遊ぶのよ」

 全く子供の方に視線を向けないまま、夢中で洋服を選びながら母親がそう言った。

 それに、

「はーい」

 と元気な声で返事をする娘だった。

 大きなショッピングモールなどでよく見る光景だ。

 子供の洋服を買いに来た母親だが、そのような事には全くと言ってよいほど興味を示さない我が子。

 やはり、玩具の方が興味があるのも無理はない。


 考えてみると、殆どのデパートの商品配置は、玩具売り場の隣に子供服といった並びが多い。

 そして、その間に子供たちが遊べるように広いスペースが設けられている。

 他にも、簡単なゲームコーナーや流行のガチャポンなども置かれている。

 その周りには、井戸端会議を始める主婦もいれば、色んなイベントの為に子供服を買いに来る母親たちの姿も見える。

 その帰りには、決まって子供の手には買ってもらった玩具があるのだ。

 売る方も、しっかりと考えている。


 ここでも、そんな親子が買い物に来ていた。

 そして…… 。

 このような場所ならではの盲点を突くような事件が、子供の命を奪うこととなる。


 洋服を選び終えた母親は、数枚の選んだ洋服を手に子供を探し始めた。

 選んでいる時間は、大抵十五分から二十分ほどだ。

 しかし遊んでいる子供からすると、そんな時間が長く感じてしまうものだ。

 設置された遊び場には、娘の姿はなかった。

「さっちゃん。

 さっちゃん…… 」

 名前を呼んで娘を探す母親。

 しかし返事が返ってこない。

「どこに言ったの?

 さっちゃん…… 」

 次第に顔が強張っていく母親だった。

 そして、その場にいる子供の母親たちに尋ねまわっていた。

 だが、これといって為になる回答は返ってこない。

 周りにいた親たちも、自分のことや話に夢中になっていたのか、周りのことに目を配ることはなかったのだ。

 おそらく、我が子が居なくなったとしても気付くことはなかったのだろうと思うほど、話に夢中になっていたのだろう。

 娘の母親はその場を離れることが出来ず、爪先立って遠くを見ながら娘の名前を叫ぶしかなかった。

 その光景を見ていた女性が、見兼ねて声をかけてきた。

「あの……

 どんな洋服を着たお子さんですか?」

 その言葉に、藁をも縋る思いで、

「ピ…… ピンクのワンピースに、確か…… ピンク色の、ピンク色のシュシュで二つに髪を束ねていました」

 声を震わせて答えていた。

 興奮しながらも、記憶をたどりながら必死に縋る母親に、

「解かりました。

 サービスステーションにいって放送で呼びかけてもらいます。

 お母さんは、ここでお子さんを待っていてください」

 そう言った女性は、我が子の手を引いて急ぎ足でサービスステーションの方に向かった。

 深くお辞儀をしながら祈る思いで見送る母親だった。

 暫くすると、ショッピングモール内にアナウンスの声が響いた。

《ピンクのワンピースに、ピンクのシュシュで髪を二つに束ねている、三歳くらいの幸子ちゃんという女の子が迷子になっています。

 見かけた方は、二階のサービスステーションまでご連絡下さい》

 丁寧で解かりやすくゆっくりとした口調で流れる放送を聞いて、再び我が子を探し始める母親だった。

 そこへ、さっきの女性が戻ってくると、

「お母さん。

 とにかく落ち着いて下さい。

 必ず見つかりますから、落ち着いて探されて下さい」

 と慰めるように言った。

 そして、暫くの間一緒に探していた。

 だが、幸子ちゃんを見つけ出すことが出来ないまま夕方になってしまった。

 母親の傍には、連絡を受けて駆けつけてきた父親の姿もあった。

 その日の夜に、警察に捜索願を出した。

 翌日も見つけることが出来ない警察は、その後も何の手がかりも見るけられなかった。

 そして、事件性も考えられるために捜査本部が設けられた。

 幸子ちゃんの自宅には、二十四時間体制で警察が監視するようになった。

 そして、誘拐ということも考えられるために、自宅内にも刑事たちが監視していた。

 それは、脅迫の電話が来ることを予測してのことだ。

 だが、そんな心配をよそに、幸子ちゃんが居なくなって一週間がたった。

 警察は完全に誘拐と断定し、行方不明になってからの足取りや、不審な人物の存在がなかったのかなどの捜査を開始していた。


 近日の誘拐は、昔とは違って身代金などを要求してくることは少なくなっている。

 何故なら、犯人の目的が金ではなくなってきているのだ。

 その目的は、自分の欲求を満たすことが優先されるものが多くなってきたからだ。

 例えば、幼児わいせつといった行為の為に誘拐・監禁することや、幼い弱いものに対してのうさ晴らしなどの虐待行為といった、メンタル的な要素が多く見られ始めているのだ。

 そう言った事件は、残忍さを増していっていることが多いのも事実だ。


 各メディアも、この事件を取り上げ始めた。

 そして…… 、あの出版社もこの事件の記事を書いた。

 その担当記者は相沢だった。

 前回の一家惨殺事件の記事を書いたことで、その内容は編集長から太鼓判を押されるほどの出来だった。

「前回の記事といい、さすがに内容も濃いものを書く様になってきたな。

 今回のも、間違いなく読者の心を掴む事は間違いないだろうな」

 編集長はそう言って喜んでいた。

 そして、いまだに解決の糸口すら掴んでいない幼女誘拐事件の記事は、全国の書店に並んだ。


 しかし、この事件は思いも依らない方向へと展開していくのである。


 幼女誘拐事件として捜査に乗り込んだ神奈川県警では、

「おい。

 あれから、進展はあるのか」

 所轄の刑事である『大島大輔』が、後輩の刑事にそう言った。

 すると、

「それが、別の場所でも幼児が行方不明になったという連絡が入りました」

 数時間前にそういった通報を受けた神奈川県警。

 それを知らされていた後輩の刑事が大島にそう言った。

 幸子ちゃんが行方不明になって十日が過ぎた頃、再び発生した幼児失踪事件だった。

 場所は、幸子ちゃんが居なくなったショッピングモールから十数キロ離れた大手のデパートだった。

 その時も、母親が買い物に夢中になっていたところに、子供が居なくなって慌てて通報したという状況だった。

 他の刑事たちは、その事件の方に向かっていたのだ。

 幸子ちゃんの居なくなったショッピングモール内を調べていた大島刑事は、

「どうなっているんだ。

 全く手がかりが掴めていないというのに、又しても同じような事件が続くとは」

 頭を掻き毟りながら、険しい表情を浮かべてそう言った。

「仕方がない。

 俺たちは、引き続きこの近辺を捜査するぞ」

 後輩の刑事に沿う指示すると、

「解かりました。

 ここの防犯カメラのデータを、もう一度見せてもらいます」

「おう!

 そうしてくれ。

 俺はこの辺を聞き込みしてくる」

 後輩の刑事の言葉に、大島は二手に別れて捜査することにした。

 ショッピングモールの中に走っていく大島の後姿を見送ると、後輩の刑事はここの事務所の方へと向かった。

 そして、

「すいません。

 失礼ですが、数日前に来た刑事です。

 もう一度、防犯カメラのデータを拝見させていただけなうでしょうか」

 そう言いながら警察手帳を事務所の係員に見せる後輩の刑事だった。

 その言葉に、

「ああ、いいですよ。

 どうぞ中に入って下さい」

 そう言って、中に招き入れる係員だった。

 奥に進むと、数個のモニターが設置されていた。

 様々な角度からモール内を移すカメラの画像が、数秒おきに切り替わっていた。

 それをじっと見ているもう一人の係員に対して、刑事が指示を出した係員が何か小声で話をすると、引き出しの中から数枚のCDを渡していた。

 それを持って後ろのモニターがある席に移動した係員は、後輩の刑事を呼ぶと、

「このデータが、あの日のものです」

 と言って、パソコンの中に押し込んだ。

 暫くすると、幸子ちゃんらしき子供が映っていた。

 しかし、幸子ちゃんの姿が出てきたり隠れたりしている。

 カメラの設置場所は、商品が置かれている場所を中心に移している。

 どうも万引き防止のためのカメラの位置のようだ。

 だから子供の遊び場は少ししか映っていなかったのである。

 その為に、幸子ちゃんが居なくなった瞬間が映し出されたはいなかったのだ。

 そればかりか、付近で不審な人物が居なかったのかさえも確認押しようがなかった。

「これじゃ…… 」

 そう呟いた後輩の刑事は、暫く考えていたが、

「しばらく、ここで見ていてもいいですか」

 と係員に尋ねた。

「はい。

 私共は一向に構いませんよ」

 係員はそう言ってその場からいなくなった。

 暫くモニターの映像を見ていた後輩の刑事は、何度も映像を戻しては再生していた。

 そして、目の前のモニター係の係員に、

「お仕事中に申し訳ないですが、質問してもいいですか」

 と言った。

 すると、目の前の係員は複数のモニターを見ながら、

「モニターから目を離すわけにはいきませんので、この状態でよいのでしたらいいですよ」

 と答えてきた。

「はい、それでかまいません。

 あの日は、あなたがここの担当だったのですか」

「はい、そうですが」

「その時の状況を、詳しく教えていただけないでしょうか」

 後輩の刑事の問いかけに、暫く考えていた係員だったが、

「わかりました。

 何かのお役に立てるのでしたら」

 そう言って、話を始めた。

「あの日は、平日のこの時間が私のシフトの時間ですので、ここでモニターの確認をやっていました。

 玩具売り場の方もいつも通りに見ていました。

 ただ、別に変わった事はなかったですね。

 もし不審者などが居たら、直ぐに解かると思いますよ」

 と答えた。

 確かに、係員は素人ではない。

 毎回、ここでモニターを見る仕事をしているのだ。

 少しでも異常があれば警備員に連絡しないといけないのだ。

 後輩の刑事は、係員の言葉に、

「そ、それもそうですよね。

 わかりました。

 私はこれで失礼します。

 ご協力、どうも有り難う御座いました」

 そう言って席を立った。

 すると、

「そこはそのままでいいですよ。

 あとは私共がやっておきますので」

 モニター係の男がそう言った。

「はい。

それじゃ」

 後輩の刑事はそう言いながら、部屋を出て行った。

 だがその時、後輩の刑事が見ていたモニターの画面には、ほんの一蹴だったが、黒い服を着た不審人物の姿が映っていたのだ。

 後輩の刑事は、それを完全に見落としていた。

 事務所から後輩の刑事が出てくるのと同時に、大島刑事が走ってくると、

「おお、ちょうど終わったようだな。

 さっき課長から連絡があってな、幸子ちゃんの家に犯人から電話が来たそうだ」

 と息を切らしながら話した。

 そして二人は幸子ちゃんの家に向かった。


 その頃幸子ちゃんの家では、昼食も取ることが出来ずに幸子ちゃんの帰りを祈る思いで待っている母親の姿があった。

 目の下には隈ができ、頬もやせこけている。

 そんな表情を隠す化粧さへもできないほど、精神状態は病んでいた。

 そこへ、家の前に赤い自動車が止まると、

「ごめんください。

 小包をお届けに参りました」

 玄関口で郵便局の職員が叫んだ。

その声を聞きつけた刑事の一人が、

「郵便物のようです。

 ここまで届けられたということは、中身は振動などでは何も起こらない物なので、危険な物ではないと思われます。

 受け取りにいってください」

 と母親の耳元で呟いた。

 現状が厳しい中なので、何事も慎重に取り組まなければいけないと思っている刑事の言葉だった。

 用心に越したことはないのだ。

 その指示を受け足早に玄関に向かった母親は、配達員に応えるように会釈をすると、力ない足取りでよろめきながら歩み寄った。

「すいません。

 印鑑をここに…… 」

 心持ち急いでいるような配達員がそう言うと、準備していた印鑑を手渡した。

 そして小包を受け取った。

 箱の大きさにしては意外にずしりと重さを感じた母親だった。

「それでは、確かにお届けしました。

 失礼します」

 そう言って、配達員は玄関を出て行った。

 部屋の方では、刑事が別の刑事に合図を送っていた。

 一応、足止めして聴取するためだ。

 その後刑事は、母親の元に歩いていくと、

「その箱は、こちらで開封いたしますのでお渡し下さい」

 と、母親が持っていた段ボール箱を受け取った。

「重いな。

 中身が気になるが…… 」

 そう言いながらロビーに向かった刑事は、傍にいた鑑識員を呼んだ。

 家から少し離れた場所では、別の刑事たちが郵便配達の車を停めて配達員から話を聞いていた。

 配達員が何か知っているとは思えないのだが、一応、何かの証拠になることもあるかもしれないと、事件解決に必死になっている姿だったのだ。

 家の中では、届いた荷物を心配そうに見つめる母親に、

「気になるとは思いますが、もしかすると危険な物かもしれないので、少し離れていたください」

 と、刑事が言った。

 その言葉を聞いて、一緒に来ていた女性の警察官が母親の傍に寄り添った。

 鑑識官が金属探知機を荷物に沿わせていた。

 だが、反応はなかった。

 そして徐にカッターナイフを手にすると、中の物に傷をつけないように、ゆっくりとビニールテープの上を走らせた。

 そして慎重な面持ちで箱を開けると、そこにいた刑事たちが顔を見合わせていた。

 中身は、ビニール袋だったのだ。

 それも、中身が見えないほど何重にもなっていた。

「中身を、取り出してください」

 刑事の言葉に、鑑識官が箱に手を入れてビニール袋に包まれたものを持ち上げた。

 すると、ビニールの底に薄っすらと赤いものが見えていた。

「そこに置いて、中身を確認してみましょう」

 鑑識官がそう言いながら、青いビニールシーツの上に届いたものを置くと、ゆっくりとビニール袋を一枚一枚はがしていった。

 ある程度ビニール袋がはがされると、少しずつ中身が見えてきた。

 そして、鑑識官が声を震わせながら言った。

「こ、これって…… 。

 何かのぬいぐるみでしょうかね。

 ただ、所々に赤いものが付着しているようですが」

 その言葉を聞いた刑事は、一旦作業を止めるように手を差し出した。

そして女性の警察官の方に目を向けた。

 それを察知した女性警察官は、

「あ、ああ…… 

 お母さん、少しあちらでお体を休めましょうか」

 と言って、母親をその場から連れて行った。

 刑事は、再び作業を進めるように鑑識官に指示を出した。

 その後、全てのビニール袋を剥ぎ取ると、最後のビニール袋に入った物を刑事に見せていた。

 「これは、熊のぬいぐるみのようですね」

 至る所に真っ赤な血痕らしきものが付着している熊のぬいぐるみが入っていたのだ。

 その時、裏の勝手口の扉が開いた。

「遅くなってすいません。

 現場で調べていたもので、今到着しました」

 そこには、幸子ちゃんが居なくなったデパートから駆けつけた大島刑事と後輩の刑事がいた。

「おお、大島。

 ちょうど良かった。

 今荷物が届いてな、中身を確認していたんだが…… 」

 そう言いながら、大島を呼ぶ刑事だった。

「荷物…… ですか」

 手に白い綿手袋をしながら大島が歩み寄ると、そこに居た刑事が荷物を見せていた。

「熊のぬいぐるみですか」

 そう言いながら、その場で荷物を持ち上げた。

 その時だった。

「これ、ぬいぐるみにしては重いですね」

 大島がそう言った。

 すると、そこに居た刑事と鑑識官が見あわせて頷いた。

 そして、大島に言った。

「ぬいぐるみだが、お腹の当たりを見てみろ。

 縫い目の糸を解いたのか、再度縫い合わせた跡が見える。

 それに、その部分が異様に赤くなっている」

 刑事の言葉に、大島はマジマジと袋の中身を見ていた。

 そして、

「これって…… まさか」

 目を見開いてそう叫んだ。

 その状況に、静かにするように口に指を当てる刑事だった。

 ここで大きな声を出すと、隣の部屋に居る母親に異変を知られてしまう。

 唯でさえ精神的にまいっている母親に、これ以上の衝撃を与えてしまうと、母親の精神が壊れてしまう恐れがあると思ったのだ。

 だが、その心配が的中した。

 大島の声に隣の部屋から母親が走ってきた。

そして、血のりの付いたぬいぐるみを見たとき、

「これって…… あの日さっちゃんが持っていた熊のぬいぐるみ…… 。

 どうしてここに…… 」

 そう呟いた。

「ああ、お母さん。

 ここは我々にお任せ下さい。

 お母さんは、とにかくお体を休めて下さい。

 おい君、お母さんをあちらの部屋に…… 」

 咄嗟に状況を把握した大島が、立ち上がって母親の前に立ちふさがった。

 そして女性刑事が母親の肩に手をやると、

「そうですよ。

 あちらで休息しないと…… 」

 と言いながら母親の手を取った。

 だが、母親の表情は目が血走っていた。

「さっちゃん…… さっちゃんのぬいぐるみがここに…… 。

 ああ、この赤いものは何ですかっ!

 ねえ刑事さん、この赤いものは血じゃないのですか」

 母親が叫びながら大島の肩を掴んでいた。

 それを必死に宥めようとする大島だった。

 そして、その場で気を失った母親だった。

 その母親の身体を女性刑事と後輩の刑事が支えながら、再び隣の部屋に向かった。

 その時だった。

 別の鑑識官が箱の中から一枚の紙を取り出した。

「なんだ。

 何かかいてあるな」

 鑑識員の傍にいた刑事が、紙に書いてあった内容を読んだ。

 そして、表情を一変した。

「こ、このぬいぐるみの中に…… 」

 そう言いながら、目には涙があふれていた。

「課長、何が書いていたんですか」

 目の前の刑事の異変に、咄嗟に紙を手にした大島は、その紙に書いていた文章を読んだ。

「どういう神経をしているんだ。

 こんな事をして…… な、何が目的なんだよ」

 そう呟いて、自分の太ももに何度も拳を振り下ろした。

 紙に書いていた内容は、

『お宅のお子さん。

 熊が好きだって言っていたから、熊にしました。

 残りは、近くの雑木林の所に置いています』

 だった。

 その後の鑑識官の取調べの結果、熊のぬいぐるみに付着していたのは、幸子ちゃんの血痕だった。

 そして熊のぬいぐるみの中から、幸子ちゃんの体の一部が出てきたのである。

 そして数時間後、幸子ちゃんの自宅から数キロ離れた公園の雑木林で、一つの段ボール箱が発見された。

 その中からも、バラバラに切断された人体がでてきた。

 そして鑑識の結果から、その全てのものが幸子ちゃんのものだと判明されたのである。


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