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午後は学校がないため子供たちは各々好きな場所で好きなことをするようになっていた。四人は一度家に帰りいつもの場所に集合し、村の雑貨店でいくつかものを購入してからそのまま村のはずれにある丘の木へと向かった。
村の掟で自分の身を守るために武器を持つことは許されているのである。丘の木は村の中心部から少し離れていて、とてつもない大きさであった。木の大きさは上が見えないほどで、根一本の太さは巨大な柱に匹敵する太さであった。これだけ大きいのにもかかわらずその丘の周りは森で囲まれているせいか村を含めたほかの場所からは見えないのである。そのためここまで遊びに来る子供はほかにおらず、彼らのちょっとした秘密の場所になっていた。ちなみに先日行った森はその丘から見て村と反対側の森であった。
丘の木に着くと輪になって根の近くに座った。
「今日は何するの?」エレナが切り出した。
「今日はまず昨日のドラゴンを見に行って、その後ルイスの兄貴への贈り物を探しに行く…フィー、昨日ちゃんと調べてきたか?」 アルの世話をするとき食事が問題となっていたため翌日に持ち越していた。
「もちろん、ドラゴンの子は基本何でも食べるらしいけど環境に条件があるみたい」
「環境だぁ?」フレアをはじめ三人は首をかしげていた。
「具体的にはマナが濃いといいらしい、そこで食事をすることでマナもいっぱい取り入れるって」 「でも地脈はこの辺にないよ?どうするの?」エレナの言う通り、マナが濃いところは自然界では地脈が存在するところがほとんどであり、ストラ村の周辺には地脈はなかった。
「だから、これ」 フィリアは自分の手のひらポーチから同じサイズの白い球体を大量に取り出して四人の輪の中心に置いた。
「お前のポーチ相変わらずおかしいよなー、容量どうなってるんだよ…」 フレアはフィリアの規格外さに呆れていた。フィリアのポーチには空間魔法がかけられていて見た目よりも容量が何十倍にも大きいものであった。
「ん、秘密。いまみんなの分も作っているから待って、話を戻す、これは空気中のマナを集めて噴き出す装置。これがあれば解決」
「またとんでもないもの作りやがって…で、どう使うんだ?」フレアは頭を痛くしていた。その一方ライガは興味心から装置を持ちいろんな角度から眺めることに夢中になっていた。
「範囲はだいたい2,3mくらい、それに装置から離れるにつれて濃度も下がっちゃうから条件を満たすのはもっと狭いと思う、だから閉じた場所で使う」
「その広さならあの木の穴の中に置けば大丈夫だと思うわ」 エレナは昨日の場所を思い出してそう言った。
「そうね、あそこなら密閉空間だしマナの濃度もある程度保たれるはず」
「なら決まりだな」
「でも定期的に装置に動かすためのマナを補充しないといけない、そこは注意」 フィリアがライガから装置を取り上げるとライガは少し残念そうにしていた。
「魔石作って入れるのはだめなのか?」 魔石はマナの塊であるため、小さいものであれば空気中のマナを集めて作ることが可能であった。
「それでもいいけど直接触れてマナを装置の心臓部に誘導する方が楽…」
「おう、そういうことなら任しとけ!」フレアは自信があるのか意気込んでいた。
「というかライ、今まで餌やりどうしてたんだ?」
「ん?普通に家にあるものあげてたよ!」
「ハァ!?お前マナはどうしてたんだ!」
「そんなの知らない、体がおかしくなったこともないし、マナが必要なのも今知ったよ」 フィリアとフレアは、ライガに呆れかえっていた。
「まぁ、ライのおバカは今に始まったことじゃないから、さっさといきましょ」 「だな」 フィリアとフレアは先に行ってしまった。
「ちょ、バカって何さバカって!」 「いいじゃないの、さっ、いきましょ」 「ちょ、ちょっと~」 エレナに引っ張られてライガも森の奥へと進んでいった。
そしてアルがいる木へ行き、魔道具を設置し、雑貨店で買った肉や野菜を置きアルと戯れていた。しばらくして四人は出発して次の目的地へ行こうとしていた。
「しっかし、条件を知らなかったのによく死なずに一年も育ったな」
「そこは私も理由がわからない。考えられるとしたらこの近くにまだ見つかっていない地脈があるか、この個体が特別かのどっちかだと思う」
「なるほどねー、それもそれで気になるが…チビドラゴンの問題が解決したからルイ兄への贈り物を作る方が先決だ」
「そうね、出発が三日後だからそれまでには完成させないとね」
「足りない材料はなんだ?」
「ええっと、大体は村の雑貨店で手に入れたけど足りないのは…百花草とシルクライト鉱石ね」
「げっ、シルクライトかよ…ってことは…あそこ行くんだよな…」 フレアは苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
「作るのは私たちがやるから集めるのはレアとライにやってもらうわよ」 エレナがそう言うとフレアはさらにいやそうな顔をしていた。
「う…分かったよ。あんま気は乗らねーが…ライ!お前絶対余計なことするなよ」 ライガはアルの背中を撫でながら聞いていた。
「同じミスはしないよ。今度こそちゃんとやってみせる!」 「どうだか…」フレアは小声でそう言い気後れしていた。四人はアルと別れてさらに森の奥へと進んでいった。その時エレナがアルと別れるのを駄々こねていたのは別の話…