まずは杉林
結界に囲まれた杉林の中で、俺はちょっぴりヤケを起こしていた。
どうせ戻れぬ異世界ならば、やってみたいことがある。
咥えた細葉巻をピコピコさせながら、愛用のライターをもてあそぶ。
「いやなに(スチャッ)精霊様とお会いできた(カシャン)ちょいと記念にね(カシュッ)」
ヒュッと息をのむ音が聞こえた気がする。
ポッと音が聞こえた刹那、瞬く間に視界が閃光で埋まる。
そして震える空気。耳をつんざく爆音!
これが世に聞く粉塵爆発!!
ははは、ざまぁみろ!!ふっとべ!!!!!
花粉なんざ、消し飛べー!!!!!
全部消えちまえばいいんだーーーーーー!!!!!!!!!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時は戻る。
「とりあえず、どこだ?ここ」
俺は細葉巻を咥えたまま呆然とあたりを見回し、そしてライターで火をつけた。
ベランダにいたはずが、今は田舎道。
舗装というにはおこがましいようなガタガタの道が前後に広がり、両脇は森。
時刻はそろそろ夕方。このままここで立ち往生、ってわけにはいくまい。
灰を袋型の携帯灰皿にトン。
さて、前に進むか、後ろに進むか。
まぁ、前だろうな。
ぷらぷらと歩くことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
村について色々あったが、とりあえず当座の資金は確保の上一泊。
にしても埃っぽい。
酒場で話を聞いてみれば、森の奥の一角に手つかずの杉林があって、この季節になると風に流されて花粉が舞うんだそうな。
みんな目や鼻が辛そうだ。
どこの世界も世知辛い。
「切ればいいと思ったろ?あんちゃん」
ええ、そりゃ思いますよ。
「切れねぇんだよ。」
硬い杉なんですか?
「切ろうとすると天罰が下るんだよ」
神様的な何かがおわす、と?
「あの一角だけ空気が違うんだよ。で斧を振るおうとするとビビビ!で、ばたっ、だよ」
あー、確実になんかいますね。
「あの杉林を何とか出来れば、一生食うに困らないくらいの報奨金が出るんだぜ!」
へー、それは魅力的ですね。
「あのビビビさえなんとかなりゃぁ、俺だって・・・・」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
安酒に痛む頭を抱えながら、何とか元のベランダに戻る方法を考えてみたけれど。
何か思いつくわけでもなく。
色々と面倒になって、とりあえず杉林とやらに行ってみることにした。
夜半過ぎの雨は朝には上がり、抜けるような青空が広がっていた。
森を歩くなら虫よけを兼ねて。
ちょっと太めの葉巻を吸いながら歩く。
小一時間も歩けば、件の杉林。
案の定というか、そよ風に揺られるだけで黄色い粉がわっさわっさと流れ出ている。
見てるだけで痒くなるようだ。
しばらく杉見としゃれこんで花粉の洪水を見ていたけれども。
携帯灰皿に灰を落として腰を上げ、腕を組んで考える。
「どうせ戻れないなら、あれやってみっか!」
吸いさしを携帯灰皿に捨て、新しい細葉巻を咥える。
そして俺はおもむろに真っ黄色に花粉まみれの杉林に入る。
薄い壁のようなものを通った後、空気が変わったのを感じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「誰?」
あ、おじゃまします。
「人間?」
あー、まぁそういうことになりますね。
「杉をいじめに来たの?」
いやあ、切ったりするつもりはないですけ
「なら何しに来たのさ?」
花粉で苦しんでる人がいるから何とか出来るならしてあげてほしいなぁと
「帰って」
えと、あなたはどなた?
「この杉林の精霊でここは私の聖地。好き勝手にはさせない」
花粉だけでも何とかできると、人間と共存出来ていいかなぁ、って思「共存するつもりなんてないさ。出て行って」
あーあー、さいですか。聞く耳ナッシンですか。めんどくせー
しゃーないか。
「?あなたが手に持ってるそれ、何さ?」
見たことないの?
「綺麗な装飾ね」
そうね。龍と鳳凰。俺の守り神が彫ってあってね。ライター、ってんだけど。
じゃぁ、話し合いも決裂したことだし。
「?何をする気さ?」
いやなに(スチャッ)精霊様とお会いできた(カシャン)ちょいと記念にね(カシュッ)
ヒュッと息をのむ音が聞こえた気がする。
ポッと音が聞こえた刹那、瞬く間に視界が閃光で埋まる。
そして震える空気。耳をつんざく爆音!
俺は己の死を確信しつつ、吹き飛ばされ、そして意識を失った。
>ユニークスキル『スキル獲得』を取得した
>スキル『耐性:光』を取得した
>スキル『耐性:火』を取得した
>スキル『耐性:電気』を取得した
>スキル『耐性:爆裂』を取得した
>スキル『耐性:毒』を取得した
>スキル『言語:公用語』を取得した
>スキル『言語:精霊』を取得した
>スキル『魔法:火』を取得した
>スキル『魔法:空間』を取得した
>スキル『魔法:結界』を取得した
>スキル『魔法:異界転移』を取得した
>スキル『自己治癒』を取得した
>スキル『精霊視』を取得した
>スキル『浄化の火』を取得した
>称号『精霊の仕置き人』を取得した
>称号『龍神の使い』を取得した
>称号『鳳凰の使い』を取得した
>称号『紫煙の魔術師』を取得した
>レベルが※☆&になった