前触れなどない
何が起きたのか僕は見えないから分からなかった。
だが、ものの数秒で敵の声がしなくなったことだけは確かだった。なんと強いのだろうか。これが…バトルロボ
バトルロボはそのまんまの意味で、戦闘用に開発された自律式機械である。護身用だったり家族として養ったりと用途は様々だ。
すると、バトルロボが僕に話しかけてきた
「テストプログラム終了。評価を求める」
「評価と言われても、凄かったのだろうけど僕は目が見えないから」
「盲目の方でしたか。貴方にお尋ねします、人間が沢山倒れ、町が火に包まれています。これはどう言った状況でしょうか」
「君に分からないなら僕にもわかんない。何せその惨状が目に見えないから…」
「かしこまりました。では、推測プログラムを実行します」
推測プログラム…そんなの迄あるのか。
最近のバトルロボはとても進化している、声も機械とは思えない程透き通っていて実に女性らしい声付きをしている。
そして、バトルロボはこう推測した
「数十分前に生体反応が切れた人間が多数います。そして、微かながら広範囲に及ぶ睡眠魔法を感知。魔族もいました。よって魔族によるこの街の人間の殲滅と推測します。私の開発者も巻き込まれたようです」
「でも動いていた…つまりテストプレイしている時に」
「ええ恐らく。ですので私は貴方以外にマスターとなれる人間がいません。」
「僕が君のマスターに!?」
「ええ。このままですとあと数分で自動的に機能が停止します。ですがこの状況だと協力すべきであると推測します」
確かに、こんな状況だ。戦える者、そして僕の目の代わりとなってくれる者が欲しい。
それに、バトルロボにもメリットがある。バトルロボは基本的にそのロボを買ったマスターの指示などに従うようにできてる。
つまり、マスターのいないバトルロボは何も出来ないと同然。その強さも、知能も宝の持ち腐れとなってしまうのだ。
だとすれば…
「バトルロボ、僕は君のマスターになろう。」
「かしこまりました。マスターは盲目なので本来マスターが行うことを代わりに行います。」
バトルロボの登録は本来バトルロボに付属されてるタブレットで行うのだが、如何せん僕は目が見えないため使えない。そういった人のための機能か…便利だな
「ではマスター、貴方のお名前を」
「ヴェスペだ」
「了解。マスター ヴェスペ、私の呼び名をつけてください」
「名前か…」
くっ、まずいこんなことしてたら街の火が広がってしまう!急いで決めろ!えっと…女性らしい名前女性らしい名前…
「サラだ!君の名前はサラ・アラークだ!!」
「サラ・アラーク…かしこまりました。マスターヴェスペ、まずはこの場から離脱しましょう」
「ああ、わかった!」
僕らは急いで町から脱出した。道案内はサラがやってくれたから目が見えずとも進むことが出来た。
…普通ならばこのような高地から町を見下ろすのだろうが目の見えない僕はその事すら叶わない。
だから代わりにサラに聞くことにした
「サラ…町の様子を教えてくれ」
「了解。解析します。…解析完了、町全域が炎に包まれました。あと5分遅ければマスターと私もあの炎の中でした。恐らくは何も残らないと思います」
「…僕はどうすればいい?僕は勇者なんかではない、ただの人間だ。僕は…」
「記憶プログラム、想起フェイズ執行。かつて地球を助けた5人の勇者は一般人。推測プログラム…故に大事なのは血筋ではなく行動だと推測。なのでマスターの行動が大事だと推測、更に先程魔族に攻撃した行動は勇気あるものにしかできません。故にあなたも勇者の素質はあると推測します」
…大事なのは行動か。それに僕が勇者としての行動をしてたって?…馬鹿馬鹿しいけどなんでだろうな、信じてみたくなった。だったら僕のすべき行動は…
「…僕みたいな人を増やさないことだ。サラ、近くの町に案内して」
「了解。検索します」




