恐竜×アイドル
「ねえ、私たちって何のためにいきてるんだろう?」
草を食べながら、トリケラトプスのトラが話しかける。
「そんなの考えてるからトラはいつまでたっても彼氏ができないんだよ。
そんなの考えなくていいの!ほら行くよ!」
アンキロサウルスのアキが答える。
「もう、待ってよ~」
ここは白亜紀 毎日生と死の競争が行われている。
トラとアキは、同じ群れの一員であり、生まれた時からの親友である。
トリケラトプスの頭の盾とアンキロサウルスのしっぽの矛は、相性がいいと考え、代々合同の群れとして家族のように生活している。
最近は肉食の恐竜から身を守るため、こういった種を超えた自衛が増えてきている。
「ほら、トラ、アキ 最近、近くでアグスティニアの群れが襲われたんだって」
トラの母が心配した顔で言う。
「え?本当?怖いな」
「大丈夫だよ! トラ、私たちまだ一度も肉食獣に会ってないもん!そうでしょ?トラ」
「そ、そうだけど、、、」
「そうだ!トラ!またいつもの歌ってよ!」
いつものとはトラがおかあさんに眠れないときに歌ってもらっていた曲である。
「で、でも、、、」
「大丈夫!周りに肉食なんているわけないじゃん!」
「おっ!トラ!なんだ歌うのか?」
「待ってたぜ!」
「ヒュー!ヒュー!」
群れのあちこちか温かいヤジが飛ぶ
「わかったよ 歌うよ」
「やった!」
トラの高音が美しく響き渡る。
群れがうっとり聞き酔いしれる。
トラの気持ちも声もどんどん大きくなった。
だが群れには、低音のドシリとした響きが近づいていた。